日本人がグローバル資本主義を生き抜くための経済学入門 感想 | デブリマンXの行方

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いつか見えない社会問題になると信じている自分のような存在について、自分自身の人生経験や考えたこと、調べたことをまとめ、その存在を具体的にまとめることを目的とする。

 

ホリエモンこと堀江貴文氏の著書「お金や人脈、学歴はいらない! 情報だけ武器にしろ。 (ポプラ新書)」で紹介されていたオススメの本シリーズ第2弾。

 

約1ヶ月前に読んだ「経済ってそういうことだったのか会議」よりもやや難しい内容を取り扱っているが、途中に出てくる数学的な表現を除けばわたしにも概ね理解できるレベルだった……気がする。

 

本著の特徴は、机上の空論としての経済ではなくて、現実的な経済を取り扱っていること。世の中には「資本主義」、「自由競争」、「市場原理」、「ケインズ」など、経済の動きを表す言葉があるが、理論上正しいはずのことでもなぜ上手くいっていないのかということが本著には具体例を合わせて載せられている。

 

例えば、素人が経済を学ぶと「インフレ・デフレ」、「株主」、「利息・債権」などの理屈から入ることが多いと思うが、これらは得てして閉じた世界の中で行われることが多い。ある物事が発生すると、天秤が傾いてバランスが取れるといった具合である。しかし、現実にはそうはならない。なぜなら、市場というのは世界規模のもので、閉じた世界の理論だけでは説明がつかないからである。より具体的には、とある企業が大幅な赤字を出してしまった場合、理論的には株価は下がるはずであるが、その逆に異常に跳ね上がることだって起こりうる。この事象を説明する内容は、教科書には載っていない。本著にその理屈に対する説明があるわけではないが、グローバルという視点から経済の一見異常な動きが、実は当然の成り行きであったことをいくつか証明してくれており、多角的な視点が得られるところが素晴らしいと感じた。

 

本著の中には大きな政策提言が書かれているが、2011年に出版されたこの本の提言は、現在では「消費税10%」、「インボイス制度」の2点が現実に適用された。昨今問題となっている子どもの教育についても「教育バウチャー」という制度を提言しており、時代の1歩先を行った考え(というか、経済を理解している人からすれば、海外と比較した上での当然の判断)が展開されている。

 

この本が伝えたいことというのは案外単純な話で、「資本主義」と「自由市場経済」の推進である。これらを推進する点については、もはや議論の余地がないと断言しており、「資本主義」と「社会主義」のどちらを進めるかと言わんばかりの議論は世界ではとっくに終わっているのに、いつまでもそんなことを論じている日本の遅れを指摘している。

その障害となっているのが主に既得権益。今のままで十分に利益を得られる人々が、出る杭を打っているとのこと。これは何も政治家や大企業に限った話ではなく、公務員や正社員も会社が簡単にクビにできない存在として既得権益者として上げられている。

 

この本を読んだ後だと、小泉政権が推進した「郵政民営化」は小さな政府への移行。竹中平蔵氏の「正社員をなくしましょう」は雇用流動性の確保という意味で話の筋が通る気がする。問題は、それらに付随するべき政策が同時には進行しないし、加えて民間に変化が浸透するまでには非常に長い時間が掛かるということ。その歪みの中で犠牲になる人々が少なからずいるということである。誰だって犠牲になりたくないし、既得権益を手放して損はしたくない。じゃあ、庶民にできることは何かと問われれば、健全な手段での自分の利益の最大化。これしかなく、これが王道である。

 

「しかし市場経済においては、個人が国家から逃れられる可能性が多少なりとも存在するのだ。」
– ピーター・バーガー シヴィロペディアより抜粋