今回は「せん断力」について。


イメージとしては、材をスパッと切るような力。

つまり、ズレを生じさせるような力。


曲げモーメントの違いが理解しづらいかもしれませんが、

この2つは関係がないわけではなく、

曲げモーメント(M図)の関数を微分すると、

せん断力(Q図)の関数になります。(わからなくても問題ありません)


多くの参考書では下のような図を用いて説明しています。



せん断力1


コレは、材を部分的に見た図で、

軸力と同様に「+」と「-」があります。

ちなみに上図は「+」です。


ここで、例を用いて説明していきます。


例1


せん断力2


上図のような線材の中央に下方向へ10[kN]の外力を加えたとします。

軸力の時と同様に静止するため、図のように反力が発生します。


まず、せん断力を考える上で注目すべき点は


材に対して垂直方向に作用する2つの力


すなわち、下図のようにして、部分的に考えて見ることになります。

このとき、材の端から見なくてはなりません。



せん断力3



基本的に2つの事について見れば、せん断力はわかります。


1.矢印の向きを見ることにより、「+」か「-」かがわかります。

  基本的に2つの矢印が右回りか、左回りかを見て、

  「右回り」→「+」

  「左回り」→「-」

  となります。

  ちなみに、上の図では右回りなので、この2つの力がかかっている間では

  部分的に拡大すると、最初に出てきた図のような変形をします。


2.2つある外力(あるいは反力)のうち、端の値を見ることにより、せん断力の大きさがわかります。

  すなわち、上の図では5[kN]の大きさのせん断力がかかっていることがわかります。



つまり、例1におけるせん断力は、

中央より左側では、「+5kN」

中央より右側では、「-5kN」

のせん断力がかかっていることになります。



ただし、下図(例2)のような場合における中央部については、

両端にかかっている力の合計(合力)で考えます。


例2

せん断力4



まず、先ほどの手順でa区間とc区間のせん断力を求めると、

a区間は、「+4kN」、c区間は「-5kN」

と言うことになります。


そして、次に中央部(b区間)について考えていきます。



せん断力5  


上図に示すとおり、

ここで考える2つの力は、端からの合力として考えます。


すなわち、b区間におけるせん断力は「+1kN]となります。


実は、静止している物体のせん断力の合計は「0」になるはずですから、

a区間とc区間のせん断力が判明した時点で、


(+4kN) + (b区間) + (-5kN) = 0


ということで、b区間のせん断力を求めることもできます。


例2の答えをまとめると、


a区間   4kN

b区間   1kN

c区間  -5kN


のせん断力がかかっていたことになります。


構造力学の計算問題は、


反力を求める応力を求める(応力図を描く)


という作業を行うことになります。

この応力を求める際に必要なのが、応力とは何か?ということです。
私達が扱う応力は3種類です。

軸力」「せん断力」「曲げモーメント

この3つの力を理解しなくてはなりません。



今回は「軸力」について。


まず、線材(細長い線状の材)をイメージしていただきたい。

その部材の断面の重心(図心)をつないだ線のことを「材軸」というのですが、

その軸の方向にかかる力を「軸力」又は「軸方向力」といいます。


さらに、この軸力には「+」と「-」があり、一般に、


「+」が引張

「-」が圧縮


を表します。


ここで、例を用いて説明していきます。



軸力1


ある材を図のように右方向に10[kN]で引っ張ったとします。

ただし、力のつり合い でも説明したとおり、

2級建築士の試験では基本的に、

力が釣り合っている状態(静止している状態)の問題を扱います。


上図の状態では、右方向に移動してしまいます。


静止しているためには、物体の反力と外力の合計が0とならなくてはなりません。

この場合、∑X=0をから、



軸力2



とならなくてはなりません。

(左側の力は、引っ張られる事による外力、または固定されている際の反力などのイメージです)


この状態を10[kN]で引っ張られていると考え、


10[kN]の引張力がはたらいている

+10[kN]の軸力がはたらいている


などといいます。


圧縮の場合は逆で、



軸力3



この状態を


10[kN]の圧縮力がはたらいている

-10[kN]の軸力がはたらいている


といいます。


トラス問題の解説時にもまた詳しく説明しますが、

プラスとマイナスが混乱してしまう人が多いです。



かなり、まわりくどい説明になってしまいましたが、

大学1年生やゼロからのスタートの方にも、

理解していただくことを目標としております。


基本的な部分さえマスターすれば応用問題も簡単ですので、

ゆっくり説明していきたいと思います。


静定構造力学は、つり合い条件式ですべて解けると言っても過言ではありません。

その式を示します。


 ∑X=0 …X軸方向にはたらくすべての力(外力+反力)の合計が0

 ∑Y=0 …Y軸方向にはたらくすべての力(外力+反力)の合計が0

 ∑M=0 …物体を回転させようとする力(モーメント)の合計が0


要は、静止している物体は、力が釣り合っているということを表した式です。

この式を具体的に立てることができれば、

2級建築士の構造力学はOKです。


では、具体的な問題を解いて、思い出してみましょう。


問題 点A,Bにおける反力を求めよ。



問題1


まず、求める反力を、わかりやすい記号で表してみます。

ここでは、

点Aにおける反力をVa、Ha、

点Bにおける反力をVb

として、下の図のように仮定します。



問題1仮定反力



この反力の仮定の仕方については難しくありませんが、

後ほど説明いたします。


ここで、つり合い条件式をつかいます。


まず∑X=0。これを具体的に表すと、X軸方向にはたらく力は

点Aにはたらく反力Ha[kN]のみ。

つまり、Ha=0[kN]になります。


次に∑Y=0について。Y軸方向にはたらいている力は

3[kN]の外力と、Va[kN]とVb[kN]の反力。

これを全部足したものが0[kN]となればいいのです。

ただし、ここでは、上方向をプラスとして考えて式を立てます。

すると、-3+Va+Vb=0[kN]。


最後に∑M=0について。

ここでは、点Aまわりのモーメントについて考えてみます。

つまり、点Aを中心にしてこの物体を回転させようとする力の合計が

0[kN・m]となればよいわけです。

モーメントは、その点からの距離と力をかけたものですから、

3×2+(ー6×Vb)=0

ただし、この式は右回りをプラスとしています。


以上の式を連立方程式として解くと、

Va=2[kN]、Vb=4[kN]、Ha=0[kN]

という答えが出てきます。


初めての方は、コレだけだと説明不足だと思いますので、

後に細かいことは説明していきます。