山下達郎を聴くためだけ山中湖に行った。他のアーティストは聞かなかった。
今までコンサートに16回、今年は3公演通ったが、そんな達郎慣れしてすれっからした私の中で、達郎さんを聴き続けることの新鮮さを保つために、安曇野から約5時間かけて富士山の麓を目指した。
本当に素晴らしいコンサートでした。一見さんには極上の達郎体験を味わえたでしょうし、耳慣れた私は毎回聞きなれた曲を、また新鮮な気分でこれからも聞けると再認識した。贅沢なひと時を曇り空の下で堪能できて本当に幸せでした。
松本から大月まで高速道路を自家用車を走らせ約2時間、富士急行から富士山駅を目指し(女性の車掌が観光案内しながらきびきび働いていたのが好印象)て着いたのがお昼過ぎだった。約1時間待たされてようやく山中湖方面のバスに乗る。渋滞というほどではないものの、のろのろ運転しながらやがて山中湖村に入る。途端に周囲は松林、これも富士の樹海というやつだろうか。目的地近くに土砂降りの雨が降る。雨具を持っていなかったのでライブ鑑賞がどうなるのか気をもんだが、交流プラザきららにつくとぱたりと雨が止んだ。だが空は曇り空のまま、いつまた雨が降ってもおかしくない。
運動場を横目に見ながらやがてチケット改札口につくと、並んで待つことなく入場、ピンク色のゴム製リストバンドをつけてもらってあっさり入場した。14時を少し過ぎたころ、とっくに達郎さんが歌うはずのステージでは若手のバンドが爆音を響かせ、それに観客が呼応して人差し指をステージにさしながらみんなでリズムをとってノリノリの空気が充満していた。意外なことにこの場にいるのが心地よかった。エレキギターのギンギンするサウンドは聞かないのだが、この会場に満たされた音楽のノリに乗ってやろうといったはじけた気分がこちらを高揚させた。
14時30分、演奏終了。
ステージの近くに行こうと、雨でぬれて草も踏まれ放題の土の上をスニーカーで踏みしめ観客をかき分けた。ステージ中央から10列目ほど、マイクスタンドの正面に落ち着いた。隣の人と肩が触れ合うことがないので窮屈さを感じることがなく、残り1時間を待つのが苦にならなかった。仕事柄、立ち姿のままでいるのは苦にしませんので。ステージ上ではスタッフが楽器を運び込み準備に余念がなかった。達郎さんのコンサートで脇を固める柴田俊文さんがキーボードをチェックしに現れ、その近くで楽器テクニシャンの宮村貴史さんが黒色の夏フェス用スタッフTシャツを着てギターを何度も鳴らしながら音色を確かめていた。周りの人はじっと見ているから知らなかったのかな?30分前にはドラムの小笠原拓海さんが登場して、こちらは入念にスティックを振っていた。演奏開始5分前になってもまだステージにいた。
「ちょっと叩いてみてくれますか」
聞き取れないほどの小さな声がスタッフからかかった。
ドン、ドン、ドン、ジャン、ジャン、ジャン、……
軽くインプロビゼーションして見せると、観客が一斉に拍手した。小笠原さんは満面の笑顔を見せた。のんびりと待っていた観客がステージに気を送るかのように少し張りつめた凛とした空気が一体に広がった。小笠原さんが袖に下がり、ほどなくステージ左横の画面に文字が浮かび上がった。そして、男性アナウンスの声。
「NEXT! 山下達郎!!」
拍手、録音されたアカペラ、もちろん達郎さんの多重録音。現れるバックミュージシャン、そして登場する本日の主役。今日はパープル一色のシャツを着ている。今年のツアーは黒色のシャツを着ていたが今日のシャツの方が柔かい感じが出ていていいのではないか。
15時30分。演奏開始。
ギターのカッティング、宮里陽太さんのサックス、3人のコーラスの重なり。やがて達郎さんが聞き覚えのあるフレーズをテレキャスターのギターで弾きだす。だが恥ずかしいことに曲名が思い出せない。
ランランラ、ランランラ、ランランララン、アイラヴュー~
この曲が思い出せないなんて恥ずかしくなった。何年ファンクラブに入っているのだろうか、ったくもう。
01、LOVELAND,ISLAND
オーゥオ、アイラァーンド!!
「こんにちわ、やました たつろう、です」
海をイメージした曲をコーラスだけ軽く歌っただけだがこの曲は湖にも合う。短い挨拶もそこそこに、一気に山下達郎サウンドが山中湖畔に炸裂した。
(次回に続く)