いよいよ、このドラマの主題、日露戦争へと突入するのですが、冒頭のモノクロの画面でいまだに正岡子規(香川照之)が紹介されているのがやや残念です。子規は鬼籍に入ったので、別の画面に差し替えてほしい。
今回は秋山真之(本木雅弘)と稲生季子(石原さとみ)の結婚がハイライトですが、筆者はそれ以外のシーンにこころを奪われてあまり慶事をたのしんで見る気分ではなかった。
冒頭、秋山好古(阿部 寛)がロシアから軍事演習をみるよう誘われる。それも帝国主義に凝り固まって日本を見下すロシアの示威行動だったのですが、もはや対戦国になる日本の軍人を招くとはロシアも横柄というか悠長にみえる。現代で、メドベージェフ大統領やプーチン首相が菅総理を招待するとはとても考えられない。好古も平気で乗り込んでいくのがたくましく見えるが、日本の外交官や政治家はだれもロシアに行こうとしない。
相手国にのりこんだ好古は、ロシア士官とたわむれ、腕相撲をして交流を深める。そして
敵として相まみえたら、そのときは存分に戦おう。
と高らかに声を上げる。相手の懐にはいって胸襟をひらいてまじわり、心おきなく交流する。血で血を洗いあうことはお互いわかっているのに、肌のふれあいはとことんおこなう。騎士道、武士道は相手をたたえあうことで成り立っていることが見える。核ミサイルやステルス戦闘機がはびこる現代では生まれえない精神なのでしょうか、戦争という非人道的なことが待っているのにうらやましくおもうところもある。
真之がいよいよ出征をむかえ、習志野の自宅で家族に見守られているとき、好古は弟のために一筆したため。
しゃかいの役 一家全滅すとも 怨みなし
好古は自分が戦死して日本が焦土に焼かれることを覚悟しながらも、平静として覚悟の一筆を手渡す。ロシア士官との交流は忘れさったかのように目の前の大事に全力をつくすことを考えてゆるぎない。
万事、戦略研究に没頭する真之とちがい、好古は酒をたしなみ、ひととの交流をたのしみ、折々のできごとを受け入れる懐の深さがある。こんな上司がいたらだれでもついていくにちがいない。阿部寛さんはもともと好きな方ですが、このドラマ(小説でも)で最も好きな好古を演じているだけにもっと見たいとおもってしまう。
やがて、連合艦隊も戦闘態勢に入り、避けえないロシア戦にはいる。軍事記述が中心となって、人物ひとりひとりに惚れこむいとまがない点描画のような景色になってゆく。もはや日本そのものが主人公になり、人間のおもいが省みられない非常事態が来る、そこにただ呆然としてしまうのです。