結論からいうと、戦術的(作戦的)には成功したが、戦略的(長い目で見ると)大失敗であった・・・と考えます。
大井篤氏の「海上護衛戦」から引用します。
引用 P.72~73
真珠湾奇襲に驚き、そして憤慨したアメリカ海軍首脳部は、その当日、ただちに、次のような重大命令を発した。
「日本に対し無制限の潜水艦戦および航空戦を実施すべし」
(中略)
無制限潜水艦戦とは、船客や乗員の生命の安全などには一切おかまいなく、商船を手当たり次第に撃沈するという戦法である。元来、商船の船客や乗員は非戦闘員なのである。(中略)商船を撃沈する前に、その船客、乗員を安全な場所(ボートや陸地)に移さねばならぬというのが、国際法上の規定であった。
(中略)
不幸にして、あの真珠湾の奇襲は、アメリカをして、日本の卑怯きわまる行為と直感させ、日本の開戦のしかたは、国際法規を無視したものだと憤慨させた。ルーズベルト大統領の巧みな宣伝「真珠湾を忘れるな」が全米国人の復讐心をあおった。
もともと、アメリカは第二次大戦に参戦したくなかった。国民世論の総意は、戦争反対でした。ルーズベルトも戦争反対で当選しています。それなのに、真珠湾攻撃によってアメリカは「断固、戦うべし。ジャップ許すまじ」と世論が変わったのです。アメリカ世論を憎しみが支配しました。
クラウゼヴィッツの「戦争論」によれば、戦争には絶対戦争(相手を完膚無きまでに潰すまで戦う)と、限定(制限)戦争(ある目的さえ達すれば終わる戦争)の二つがあります。
限定戦争は、日清戦争や日露戦争、絶対戦争は、ナポレオン戦争や第一次・第二次大戦などが含まれると思います。
本来、日本は、アメリカとの戦争をできるだけ回避して、相手の世論も考えて、「限定戦争」ですますべきでした。しかし、アメリカ世論を激昂させて絶対戦争にさせてしまった。
こうなると、相手の国力を考えれば、勝ち目はありません。
日本は島国なので、石油などを海上輸送しなければなりませんが、本気で手段も問わなくなったアメリカの潜水艦に、次々と輸送船を沈められて、資源不足で敗北していきました。
ベトナム戦争で、アメリカが負けたのは、反戦世論があり、限定戦争だったからです。絶対戦争をして、アメリカに勝てる国など存在しません。
参考文献
・真珠湾の真実 ― ルーズベルト欺瞞の日々
・海上護衛戦