あやしい宗教学 怪談 「幽霊滝」と「置いてけ掘」の恐怖 ー タブー侵犯の恐怖 | 日々の妄言、ざれ言、たわ言、世迷言

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思いつくことを適当に書き込んで行きます。まことしやかに書かれておりますが、何の根拠もありません。適当に読み流してください。

小泉八雲の『骨董』という怪談話の中に「幽霊滝」というのがあります。

 

 

鳥取地方にあった伝説を八雲が脚色したものだとされます。

 

まずはそのあらすじを。

 

 

明治の頃、その一帯に麻を取る場所があったといいます。ある冬の夜、囲炉裏端に集まった女たちが怪談話に興じておりました。そのうちに、肝試しをやろうということになり、そこから少し離れたところにある滝、これをその地の人々は幽霊滝と呼んでいたようでして、そこにある賽銭箱を取ってこようということになります。

 

 

思うに紀伊は那智の滝のように、この滝も神聖な場所としてしめ縄による結界がなされ、小さな神社となっていたのでしょう。

 

滝に限らず、岩や洞窟などを神聖な場所として神社とするケースはよく見られます。

 

 

さて、その賽銭箱を取ってくることができた者には、今日取れた麻を全部やろうという話になりますが、誰もしり込みしている中、お勝という、気の強い女性が名乗り出ます。

 

 

お勝は赤ちゃんを半纏(はんてん)にくるみ、これをおぶり、冬の凍てつく夜、幽霊滝に向かいます。そして、そこにあった賽銭箱に手を伸ばすと「おい、お勝さん」と滝つぼのかなから、咎めるような声が響いたのだとか。

 

 

お勝つは恐怖にうちふるえながらも、賽銭箱をつかむと、さらにもっと強い調子で「おい、お勝さん」と声が響いたといいます。

 

 

お勝は後ろを振り向くこともなく、暗い夜道を駆け抜け、他の女たちがいるところまで戻ると得意げに、その賽銭箱を見せ、幽霊滝であった体験を皆に話します。称賛してくれる他の女たち。

 

 

ほっとしたお勝が、赤児に乳をやろうと、半纏をほどくと・・・、そこには首をもがれ血だらけになった赤児が転がり出てきたのだとか。

 

 

 

 

 

 

ひえーーーーーー!

 

 

 

 

ですよねえ。

 

 

 

 

鳥取 竜王滝

 

 

 

なお、この幽霊滝は実在し、正式には竜王滝、黒滝と呼ばれ、近くには滝山神社もあるのだとか。また、ここには「2歳にならない赤児をここへ連れて来てはいけない」という禁忌(タブー)があったようです。

 

 

 

この話は、そのタブー侵犯に対する罰とも言えますが、そもそも、神社などに置かれた賽銭箱を持って行くことこその罰が下ったとも考えられます。

 

賽銭は、すなわち神への供物の代わりでありまして、それを取るなどと言うことは言語道断なことと言えます。

 

今日でも、時々賽銭ドロボウなんてのがいるようですが、警察に捕まる以前に天罰を食らいそうな気がします。

 

 

 

続きまして、「置いてけ堀」であります。

 

 

元々は、江戸本所七不思議という、今なら都市伝説として知られていたものの一つだそうです。

 

当時の本所には水路が多く、そこで魚がたくさん釣れたとされます。

 

 

 

して、あっしの知っているのはその変形バージョンであります。

 

 

こちらは、水路ではなく神社の池でして、そこには「釣りや泳ぐことを禁ず」なんて看板があったのだとか。

言うまでもなく、そこも神社の境内となりますから、神聖な池ということになるのでしょう。

 

 

とある、浪人がそんなことなど構わず、そこで釣りをすると大きな鯉がつれます。

 

そのままその釣った鯉を持って帰ろうとすると、背後の池の中から「置いてけー」という低い、しわがれ声がする。

 

浪人は、気のせいかなと思い、そのまま行こうとすると、再び「置いけー」と声がします。

 

 

 

腕に自信でもあるのか、さらには、いっそ、狐狸のしわざだろうと勝手に解釈し、そのまま行ってしまいます。

 

 

帰宅して、その奥さんに釣って来た鯉を渡し、調理するように言います。

 

しばらくして、その奥さんが言うには、

 

 

 

手を洗っても、洗っても、どうしても鯉の血が落ちなくて・・・

 

 

 

この辺りで、あっしは背筋がゾクゾクとしてきたのを覚えております。

 

 

 

んで・・・、

 

 

『何を、おかしなことを』と思った、この浪人が奥さんの方を振り返ると・・・・・・・・、

 

 

 

 

 

 

はて、うちの家内は、このように首が長かったか?

 

 

 

・・・・・・・じゃねーよ

 

 

 

ろくろ首だろーが!💀

 

 

 

して、ここにも神社という神聖な場所において、禁じられていた釣りをして魚を釣ったということこそが、タブー侵犯として、神の罰が下ったという話なのであります。

 

 

なお、本来の話は、タヌキやキツネ、さらには河童のしわざ、というものであったうようです。

 

 

しかし、やはり、いずれの怪談も神聖なるものを犯してはいけないという教訓がそこにはあるように思います。

 

 

なお、このような怪談というか、怪異な話を集めたものに、平安時代の僧であった景戒による『日本霊異記』がありますが、こちらは因果応報を説いた仏教説話集であります。

 

 

 

 

 

 

 

 

かつて、人々はこういった怪談や説話によって、身を慎み、宗教的な禁忌(タブー)を犯さないような生き方を学んでいたのでしょう。

 

祟りがある、なんていうのも、つまり、それは、本来であれば犯してはいけないことをやってしまったが故の自業自得的な災いのように思います。

 

 

 

映画 『八つ墓村』

 

 

 

 

ついでながら・・・、あっしはガキの頃に見た、横溝正史原作の映画『八つ墓村』に登場した、小川真由美演じる殺人犯、というよりも、いっそ狂女にトラウマになっておりました。

 

 

 

 

必殺!小川真由美の怪演技!!

 

 

 

 

 

暗い洞窟の中で、淡い恋心すらいだいていたのかもしれない女性の髪がふわりと妖しく浮き上がり、おしとやかだった女性が、聖飢魔Ⅱのデーモン閣下も真っ青というような、ど派手な歌舞伎メイク顔になり追いかけてくるという・・・。

 

 

フロイト先生であったか、男には、女に対する潜在的な恐怖心理がある、なんてことを聞いたことがありますが、これを呼び覚まされたというべきか。(※ 「ヴァギナ・デンタタ(歯の生えた女性性器)」。男に去勢不安を生じさせるのだとか)

 

 

 

やっぱり、女性は怖いです。

 

 

 

うちの祖母の言葉に「幽霊や妖怪なんかよりも、生きている人間の方がよっぽど怖い」というものがありまして、今更ながらに、納得しております。