三重県鳥羽市相差、今日は雨で海が荒れています。黒潮躍る熊野灘と言いたいのですが、熊野灘とは大王崎灯台から潮岬灯台までを指すようなので、かすかに熊野灘ではありません。ここには相差港(おうさつ)があり、漁港内は波が凪いで絶好の港なのでしょう。その中心はやはり海女さんたちの活躍です。
海女さん達の信仰は石神さんに集められています。誰が祭られているかというと、玉依姫(たまよりひめ)です。玉依姫とは、海の神様綿津見命が父です。そして、玉依姫は初代天皇の神武のお母様に当たります。
綿津見命が父なので、海女さん達の信仰を集めるのは自然の成り行きなのでしょう。全国の女性がこの石神さんにお詣りに来ます。なぜならこの石神さん、女性の願いを一度だけひとつ叶えてくれるからです。女性にとっては全国有数のパワースポットとなっています。それは絵馬に現れています。ここは絵馬に願いを書くのではなく、紙に書いて奉納します。そして願いがかなえられると絵馬を奉納して感謝を表します。一生に1つだけの願い、あなたなら何をお願いしますか? どこの神社でも願い事は絵馬に書くのですが、願い事は紙に書いて、願い事が叶えば感謝の絵馬を奉納するって、よほど霊験あらたかでないとできないことですよね。
境内にはさざれ石が祭られています。国歌君が代に出できます。
君が代は 千代に八千代に さざれ石の 巌となりて 苔のむすまで
天皇の代は、どこまでも長い間、さざれ石が岩になるまで、その岩が苔をむすまで栄えますように。こんな意味なのでしょうか。ところで、さざれ石、どう見ても礫岩というか水成岩です。水の働きでできた石。それが巌となる。岩とは火成岩です。水成岩が火成岩に変わることは非科学的です。そんな非科学的な歌詞が国歌となりうるのか疑問です。しかし、この歌詞は、不可能なことが可能になる。様々な考えの国民が1つに統合されている。その象徴として天皇がいらつしゃる。そして、苔が覆うまで栄え続ける。日本の国がいつまでも栄えることを詠った内容です。ここにさざれ石があるのは、意味のあることなのだと思いました。
境内に植えられた橘の木。今は実を結んでいます。橘の実はオレンジでした。漢字も柑橘類なのでそれは当たり前のことなのですが、本物の実を見て、初めて気づきました。
それにしても激しい波。南海上には台風がいるので、土用波が打ち寄せています。ここから海女さん達が出航していくのでしょう。今日は波が荒くてお休みのようです。
お昼にいただいたのは、海鮮丼です。これで2300円でおつりが来ます。生きたエビがどんぶりの中で騒いでいます。うに、いくら、めかぶ、シラス、車エビ、サーモン、まぐろ、かつお、イか、鯛、お刺身は厚切りのが三枚ずつ載っています。なんだこれは!と思いました。4000円もすれば、伊勢エビ丼が食べられます。海女さんの漁港でなければできないお値段でしょう。食堂はほどなく満杯となりました。早めに入ったので待つこともなく海鮮を楽しむことができました。お詣りの後は、やはりグルメが一番。
三重は神代の時代から「美し国 うましくに」と呼ばれていました。自然が美しいのはもとより、山の幸、海の幸に恵まれ食材は多彩で美味です。それは熊野灘の恵みであり、そこで暮らす海女さん達に裏打ちされたものです。
一見、何もない寒村の漁港に見えるのですが、大勢の参拝客が石神さんを訪れ、海の幸を楽しんでいました。ここは今も美し国みえなのです。
海女さんの文化は日本遺産に指定されています。海女さんは世界的にも各地にあり、普遍的な存在なのでしょう。素潜り漁は資源を枯渇させない優しい漁法です。しかも、主役は女性で、船の上で男性がそれをアシストする。両性が互いに助け合わないとできません。今でも鳥羽市が全国で海女さんの半数を占めています。それは、神代の時代から志摩半島に受け継がれた人類の遺産です。
相差にはホテルや民宿が多数あり、海女さん直売のお店があります。急いでお詣りして海鮮を楽しむだけでなく、鯨崎や千鳥ヶ浜を散策してのんびりするのもいいと思いました。千鳥ヶ浜には本当に千鳥が海浜に遊んでいるのを見てびっくり!!!