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バイカルアザラシのnicoチャンネル

 サイコロジストの日常と非日常を季節の移ろいを交えて描いています。バイカルアザラシのnicoちゃんの独り言です。聞き流してください。

 サラブレッドの独自の基準によると、三重県北中部にツバメ異常発生注意報が発令された。この基準によると電線1mあたり10羽以上のツバメがいると発令される。

 

 何だ、こりゃあ!!! 発生しすぎ! だれが生んだんや。

 

 よく観察してみると態度が悪いのもいる。こんなんで台湾やニューギニアまで飛んでいったら、日本でどんなしつけをしてもらったのか品格が問われる。

 伊勢湾に神島という島があります。地図で見ると愛知県の方が近いのですが、三重県鳥羽市です。鳥羽の定期船で佐田浜を7時半ほどに出ると45分ほどで神島港に着きました。新造された双胴船は揺れも少なく快適です。当日の波はGPSで測定したら45cm程でした。1mを超えると運行停止になります。

 

 地図で歩いた行程をたどると2時間28分で約3kmでした。神島は三島由紀夫の小説「潮騒」の舞台です。吉永小百合さんや山口百恵さんが主演した映画がありました。今回はいわば潮騒の聖地巡礼です。

 

 急な石段を登っていくと八代神社に到着です。綿津見命が祭られています。綿津見とは海の神様。海の恵みは時に海の災いとなることもあります。そんな中で海の恵みに感謝し、災いが起こらないように安全を祈るのはごく自然なことでした。

 

 神島灯台は交通量が多い紀伊水道を守ってきました。潮騒では主人公の新治が灯台守に魚を届けるシーンがあります。今日は灯台の空に月が浮かんでいます。

 

 ここからは監的哨までの遊歩道は広葉樹林のトンネルを抜けていきます。途中、クロアゲハが飛んでいます。蝉がけたたましく鳴いています。ミンミンゼミの鳴き声は激しさを増しました。遊歩道にいきなり海鳥がやってきました。こちらを観察しています。何と人慣れした海鳥なのか。逃げません。どうやら餌をねだっています。

 

 ほどなく監的哨に着きました。ここからは伊勢湾を隔てて渥美半島が見渡せます。砲弾の着地点を観察した太平洋戦争中の軍事施設です。潮騒では、嵐の中、主人公の新治が裸で火をたいて体を温めています。薪は激しく燃え、初恵は炎の向こうに。初恵は新治に言います。

 

 「その火を飛び越して来い。その火を飛び越してきたら」

 

 新治は激しく燃えさかる炎を飛び超えて初恵の元に。嵐の中、二人はそこで結ばれるという映画のクライマックスシーンが撮影されました。

 

 夏の神島は花が乏しい季節です。それでも浜ナデシコが咲いています。

 

 神島にはカルスト地形があり、鍾乳洞も見られます。岩を登ると先端が鋭く尖っていて針の山のように見えます。綺麗に結晶した石灰岩は風化にも耐え珊瑚の緻密さは最高水準です。神島の南東岸はせまりくる太平洋からの荒波や津波から神島を守ってきました。自然にできた防波堤です。しかも、鋭く尖った岬は高波から島をなやしてきました。

 

 夏の花ハマユウ。ここかしこに咲いています。神島の夏はやはり純白のハマユウがよく似合います。神島はどこにいても潮騒が聞こえます。小説が生まれたのも自然。

 

 北側の急な斜面には所狭しと家が建ち並んでいます。屋根の向こうには渥美半島が見え、タンカーや輸送船が屋根の上を航行しています。実際に現地で見るとそのように見えるのは不思議な光景です。

 

 三島由紀夫が一ヶ月もこの島に逗留して「潮騒」を書き上げました。潮騒は海が荒れると海鳴りになります。その中で互いに思いを寄せた二人が身分の違いを超えて嵐の中で結ばれる姿は、人を引きつけます。それはここに住む人たちの風土のようなものが醸し出されているからなのでしょう。新治が嵐の中、難破しかけた船を荒れ狂う波をかき分けて救う姿はホメロスが描いたユリシーズのようなタッチです。

 

 途中、石段の座って水を飲んでいるお爺さんがいました。子供らが都会に来いと呼んでくれるけど、ここが一番や。行きはせん。ここで海を見ながら畑をおこすのが一番。あんたら道は右に行ったら街が綺麗やから、そっちがええで。

 

 それは美しい言葉でした。こんな美しい日本語を聞いたのは久しぶりのことでした。それは美しい言葉と言うよりも、老爺から滲み出た人柄のような物なのでしょう。

 

 島を一周しているとTシャツが汗でしっとり濡れてしまいました。シャツを脱いで上半身裸になり、水道水で洗っていると、「店で神島と書いたシャツが売っとるよ」とお婆さんが話してきました。横にいたお姉さんがお店に行って見てくれました。残念ながらシャツは売り切れていました。この島は温かさと親切で満ちています。

 

 神島がなぜ人を引きつけるのか。それは厳しい海での生活から生まれた風土と、そこから磨かれた人柄のようなものに接することができるからなのかもしれません。今もそれは受け継がれているように自分には感じました。

 

 定期船「きらめき」から神島港を離れていくと神島が西は急で東はなだらかな不等辺三角形に見えます。その傾きの美しさ、その姿が何とも尊く見えてきました。やはりここは海神がおわします島。神島でした。三重は神話の時代から「うましくに 美し国」と呼ばれていました。伊勢エビやアワビなどの海の幸は言うまでもなく、その風土・自然や人は美しい国なのでしょう。

 

 

 画像をクリックすると動画になります。今回の旅を8分にまとめました。

 

 

 

 

 朝からうるさい!

 

 鳥の鳴き声で夜明け前から起こされた。

 

 ツバメが電線に止まっていたけど、スズメが追っ払った。この地方ではスズメの方が強いらしい。

 

 どうでもいいけど、朝から激しく鳴くのはやめて欲しい。縄張り争いは他でやって欲しい。