皆さん、早速ですが、テニスのサーブにおける「レッグ・ドライブ」って知ってますか?
知っている方は「レッグ・ドライブ」と聞いて、どのような動きを思い浮かべるか、また、これまで「レッグ・ドライブ」を、どのような動きとして説明されてきたか、または他の人に説明してきたか思い出し、言葉にしてみてください。
「こういう動き」という曖昧な表現ではなく、具体的な「説明文」にしてみましょう。
どうですか?
できましたか?
実は、僕自身はこれまで、ブログの中で「レッグ・ドライブ」という言葉を使ったことがありません。
生徒に教えるときも、口にしたことはありません。
それには理由があって、英語の「Leg Drive」に相当する動きは、日本語で十分に言い換えることができる上、日本人に取っては、トップ・スピンほどには、言葉と動きが連動するような英語ではなかったからです。
つまり、わざわざ(笑)「レッグ・ドライブ」なんていう、おしゃれで、そのくせ分かりにくいカタカナ英語にする必要のない動き、だと思っていたからです。
それどころか!
最近、YouTubeを見ていると、本来の「レッグ・ドライブ」とは違う動きを「レッグ・ドライブ」として紹介しているものが目につくようになった、というか、鼻につくようになった、というか(笑)。
そこで、みなさんの「答え」を確認しましょう。
ダメな答え、から。
右利きでのサーブを想定してですが、
「打ち終わりに、(右利きの場合)右足を大きく後ろに跳ね上げるようにすること」
と、思っていた人、いませんか?
言っておきます。
それは大きな間違いです!
現に、同じくYouTubeなどで「leg drive tennis」と英語で検索してみてください。
もちろん、英語圏の方が作成した動画が多く出てきますので、内容を確認するのは難しいかもしれませんが、じっくり見てもらうと、右足を大きく跳ね上げることそのものを説明しているのではない、ということが分かると思います。
これは、「ドライブ」の回でもお話ししましたが、そもそも英語の「drive」には、「打ち込む」「推進する」などの意味があり、「leg drive」とは、足でグッと地面を蹴ることそのものをいうのであって、その後に生じる、後ろに跳ね上げるような動きは、あくまでもその「結果」でしかありません。
実際、「レッグ ドライブ」という検索でも、ベンチ・プレスの動画が多く出てきたと思います。
つまり「レッグ ドライブ」とは、足を大きく跳ね上げる動作などではなく、足を地面に打ち込むように踏ん張ること、また地面を蹴ること、をいうのです。
中途半端に英語を知っている人だと「推進する」という意味から、右足を大きく蹴り上げることで、体を前方にジャンプさせる、というようなニュアンスまで、勝手に含んだものにしてしまっているものもあります。
これまでも「エッグボール」、「ドライブ(トップスピン)」、「ラットショット」など、本来の英語の意味からはかけ離れた「和製英語」や、どこのどいつが名付けたか分からない「独特なローカル用語」を、いかにも一般的なテニス用語として用いることに反対してきましたが、これもその一つになると思います。
どこの誰か──おそらく、英語が中途半端に分かるけれど、技術的な理解が乏しい誰か──が、足で地面を「蹴る」ことと、その「結果」でしかない、足の「跳ね上げ」を同一視し、足の「跳ね上げ方」そのものが、サーブの善し悪しに関わると思うようになってしまった、また足を「跳ね上げる」ことそのものを「目的」にしてしまった結果、そのような間違いが横行しているのだと思います。
そういうことをいう人の足の「跳ね上げ」は、不自然な場合が多い。
フェデラーやジョコビッチなどのサーブを見ても、膝を伸ばしている間の「跳ね上げ」はそれほど大きくありませんし、膝が曲った後も、お尻より足首が高くなることはありません。
それぐらいあげるトッププロは、現役ではシャポバロフぐらいじゃないでしょうか?(笑)
ただ、その場合、上から打ち込むようなフォームなっているため、打ち終わりの上半身がかなり倒れ込み、水平になぐらいに前のめりになった「結果」だと思います。
それが、一般のアマチュアに必要なフォームだとは到底思えません。
バランスを取るために「結果」として足が上がっているだけで、足を上げることそのものが「目的」ではないからです。
しかし「レッグ・ドライブ」を間違って用いている人に限って、高く上げることだけを意識してしまってバランスが悪くなっていたり、逆に、全く跳ね上げが無いために、上半身の動きがおかしくなったりしてしまいます。
こういう用語は「意味」が非常に重要ですから、みなさんも気をつけて使うようにしましょう。
そこで、本来は「レッグ・ドライブ」という意味ではない、後ろ足の「跳ね上げ」は、どのように行われるのが自然なのか、次回から考察していきたいと思います。
【次回へ続く】