前回、エッグボールについてお話しましたので、そのついでに「ドライブ」についても。
 
  この「ドライブ」という用語、長年使い続けている人もいれば、全く知らない人もいます。
 
 うちのチームの生徒たちの初心者たちは知らないです。
 
 顧問である僕が使ってませんから。
 
 ネットの辞書検索で調べると次のように出てくるからタチが悪い。
 ドライブ【drive】
 
[名](スル)
 
1 自動車を運転すること。また、自動車で遠出すること。「半島を―する」
 
2 テニス・卓球などで、順回転するようにボールを打つこと。また、その打球。「サーブに―をかける。
 つまりいわゆる「トップスピン」と同義語なんですが、  ただこれも気をつけないといけないのは「国語辞書(大辞泉)」であるという点です。
 
 英語が得意な方はよくご存知だと思いますが、本来、英語の「drive」という言葉には「(クギやボールなどを)強く打ち込む」という意味があります。
 
 ゴルフの「ドライバー」はその意味からですね。
 
 ですから、全く「順回転」というニュアンスはありません。
 
 よく「ネジ回し(スクリュードライバー)のように回転させるから」などと説明しているものを見ますが、それはもうこじつけでしかありません。
 
 もともと釘などの打ち込み機(木槌など)のことをドライバーと呼び、ネジ釘を入れるものだから「スクリュードライバー」なのであって、回転の意味はむしろ「スクリュー」のほうですから。
 
 実はこの「ドライブ」っていう用語、特に卓球経験者とソフトテニス経験者の方、使ってませんか?
 
 福原愛ちゃんとか石川佳純ちゃんも使ってましたから。
 
 私も中学校のときソフトテニスで使っていましたし、今でも、ソフトテニス出身の生徒から、よく「ドライブ」と「トップスピン」の違いを質問もされます。
 
 おそらく、スポーツ黎明期の英語の苦手な卓球選手かソフトテニス選手かはたまたコーチが、英語圏の人が言った、
 
「drive(強く打て)!」
 
 という言葉を、どこをどう間違ったのか「順回転」と思ってしまったんでしょうね。
 
 物理学上は、ラケットでボールを強く打つほど、回転数が増しますから…。
 
 でもすぐにトップスピンという言葉が浸透すると矛盾が出てきてしまうわけです。
 
「ドライブ」と「トップスピン」とどう違うのか、と。
 
 で、後付けで意味を考えちゃったわけです。
 
「回転がないものを『フラット』、弱い順回転のものを『ドライブ』、強い順回転のものを『トップスピン』と呼ぶに違いない」
 
 ていう感じで。
 
 単純に自分の中だけで使い分けているだけならいいのですが、あたかも全世界共通の用語のように使われていると、さすがに辟易してきます
 
 中にはさらに、「フラット」と「ドライブ」の中間の「フラットドライブ」たら「ナチュラルドライブ」までが現れるわけで。。。
 
 最近では、テニス雑誌などで使われることはさすがになくなりましたが、40代以上で学生時代からテニスをしている人には、未だに使っている人が多い。
 
 学生時代から20年以上も、なぜ英語の意味に疑問を持たない人が多いのか不思議でならないんですが、この年代に少なからず「人に教える立場」の人がいるからさらにやっかいです。
 
 卓球のように、みんながみんな、すべての順回転のことを「ドライブ」と言っているのであれば混乱はありませんが、テニスでは一般的な「トップスピン」という用語と、自分たちが若い頃に習った「ドライブ」という言葉を無理やり共存させようとするから困る困る。
 
 しかも言っている本人たちが「ドライブ」のことを本気で「少し弱い順回転」と信じ切っているからたちが悪い。
 
 われわれおっさんどうしで、昔を懐かしんで言っているうちはいいんです。
 
 でも、今からテニスを始めようとする若い初心者に、
 
「こんなふうに呼ぶんですよ。覚えておいてくださいね」
 
 みたいに教える人はちょっと。。。。
 
 ネット上でもそういうサイトはまだまだ多いですし、エッグボールと同様、Yahoo!知恵袋では当たり前のように氾濫しています。
 
 私は生徒の前では絶対に使いませんから、初心者の生徒たちはたぶんドライブという用語は知らないです。
 
 用語の使い方が正しいか間違っているかそのものは、正直、どうでもいいんです。それだけなら害はありませんから。
 
 でも、これもエッグボールと同様、ショットの呼び方の違い=打ち方の違い、みたいな論理になってしまうので注意が必要です。
 
 いやぁ、言葉って難しいですよねぇ。