私の勤務校はスポーツ推薦がある強豪校でもなければ、地元にテニスクラブがたくさんあるような都会の学校でもないので、春先、新入部員の多くは初心者。
ですので、テニスを一(いち)から教えることがほとんどです。
ソフトテニスをやってきている生徒などもいますが、それでもやはり硬式テニスにマッチさせるには、少し時間がかかります。
そんなときに困るのが専門用語。
自分が普段何気なく使ってしまっているだけに、初心者の生徒の前で、当たり前のように使ってしまって、生徒の頭の上に「??」と浮かぶこともしばしばあります。
「フォアハンド」「バックハンド」ぐらいならまだ大丈夫ですが、一番最初につまづくのが、グリップの「厚い」「薄い」です。
これを初心者に「ちゃんと」理解させるだけでも、けっこう時間がかかります。
さらに、テニス雑誌なんかに「厚い(薄い)当たり」なんてのもあるから、ややこしい。
もちろん「グリップの握り」と「ボールとラケットの当たり方」はリンクしていますが、けっしてイコールではないので、僕はできるだけ使わないようにしています。
しかも一般的に広まっているものならなんとかなりますが、テニス雑誌などではその執筆者の「造語」などもあって、非常にややこしい。。。
今回は、そんな専門用語の中でも有名な「エッグボール」について。
「エッグボール」とは、強いトップスピンによってベースライン上に急激に落ちるショットのことで、その軌道が卵の曲面のように見えるので、そう呼ばれます。
まず最初に言っておくと「エッグボール」は、松岡修造さんのコーチも務めたことのあるボブ・ブレット氏がテニス雑誌などで紹介した用語ですが、あくまでも彼の「造語」です。
少なくとも世界的に通用する専門用語では決してありません。
ナダル選手がこのエッグボールの第一人者のように紹介されていますが、彼自身はたぶん使ったこともなければ、聞いたこともないと思います。
日本のジュニアのクリニックなどもおこなったボブ・ブレット氏は、丁寧なショットだけを打つ日本のジュニアに対して、もっと強いショットが打てるようになることを推奨しています。
強いトップスピンをかけることで、アウトを怖がることなく攻撃的なショットを打てるはずだ、と。
それを、テニス雑誌などでもわかりやすいキャッチーな用語として「エッグボール」を使っただけです。
ただ、あのボブ・ブレット氏が使っている言葉だけに、テニス雑誌からプロのコーチまでが使うようになり、一般的プレイヤーに浸透するまでにそれほど時間を要しませんでした。
現に、この用語が広まったのはつい最近。
ボブ・ブレット氏が第一線を退いて、松岡修造さんの招待で日本によく来るようになってからです。
ですが、ここからこれが独り歩きを始めてしまう。
と、ちょっと長くなりましたので、続きは次回。