こんにちは、だるまです。
こちらは、Wake Up, Girls!の楽曲"Beyond the Bottom"考察の、ユニット Wake Up, Girls!視点編となります。
曲の背景
「ユニット Wake Up, Girls!」から見た『Beyond the Bottom』
また見えないダイナモが 激しく人を揺さぶる
こうして誰も彼もが 心と歌を忘れる
ダイナモとは、一般的に発電機のことですが、ここでは激しく人の感情を揺さぶる、ジェネレーターみたいなものだと考えられます。その結果、民衆は誰も彼もが、心と歌を忘れてしまいます。
幼い日々の記憶が 打ち砕かれ今僕は
どん底の淵を辿り 君を探す
1stシングルが売れ調子に乗っていたがすぐに転落した僕=WUGは、どん底に叩き落されながらも「君」を探します。この君は、まあ応援してくれるオタクのことでしょう。
黒い目の魚たちが 流れの中沈んでく
この黒い目とは、この山本監督の記事にあるように、死んだ目のことですね。黒い目というとハイライトが無いような印象を受けることからも、死んだ目というのは了解できます。
「黒い目の魚たち」が誰かというのは、2通りの考えを思いつきました。
1つ目は、WUGを含めた、「上京したものの売れずに消えていった有象無象のアイドルたち」です。本編で社長が「あなたたち(=WUG)みたいなアイドルが出てきては、夢破れて消えていくのが東京なのよ。」などと言っていました。
2つ目は、先ほど出てきた、「心と歌を忘れた君」です。
まあ、そのどちらか、あるいは両方が、流れに逆らうことなく沈んでいきます。マイナスなイメージですね。
東の空睨みつけ 太陽を待ち続けてる
東の空は、もちろん太陽が昇ってくる方角です。太陽を待ち続けている様子からして、『どん底の淵を辿』ってはいるものの、まだ諦めていないようです。
どこへ消えてしまったの あんなにも熱いパトス
最後に微笑んだのはいつだったのか
そうは言っても、やはり上げて落とされたのはキツそう。たぎっていたパトス(=情熱)はどこかに消え、笑う余裕すら無くなってしまいました。
教えてよ 君のほんとうを
叫んでも姿は見えない
心と歌をなくした君はどこにいるのか、どう思っているのか。それを教えてよと呼び掛けても、返事はなく姿も見えない。先も周りも見えない真っ暗闇を進んでいきます。
嘘の檻に閉じ込められたのは
君のせいじゃない だから今届け! 届け!
『嘘の檻』とは、嘘か本物か分からないようなネットの風評ですかね。作中にもありましたし。それを信じてしまうのは君のせいじゃない。しかし、だからこそ、実際に僕(=WUG)を見て、嘘の檻が嘘か本物かを見極めてほしい。
もしも神がいるのなら 聞いて欲しい僕の想いを
世界中の憎しみを 全部僕が受けとめるから
絶望を力に変え もう何もかも怖くないさ
世界中の憎しみを僕が全部受け止めるとは、なかなか大胆不敵な歌詞です。どん底から這い上がると決めたWUGには、それくらいの覚悟があるということでしょう。一度は東京で絶望しましたが、それさえ力に変えられるというのはWUGの強みであります。
さあ、混沌(カオス)となったこの自由から逃げ出そう
これまた難解な歌詞です。自由とは、無限大の選択肢がひしめき合っている状態です。今のWUGで言えば、失墜はしたがまだ東京で頑張ってみるか、仙台に帰り再スタートを切るか、はたまたそれ以外か。
ですが、その自由から逃げ出すということで、無限大にある選択肢から一つ選び取り、それを果たすんだぞという覚悟の表れと取れます。
また、エーリッヒ・フロムの著書に『自由からの逃走』という、この歌詞から匂わせるようなものがあります。個人的には余り結びつかないかなと考えましたが、何かを結びつけて考えてみるのも面白いでしょう。
またラスコーリニコフが 刃(やいば)を立て薄ら笑う
剥がれ落ちた友情が 脆い心を突き刺す
ラスコーリニコフとは、ドストエフスキー作『罪と罰』の主人公です。詳しいことは導入編の下の方に書いたのでそちらを読んでほしいのですが、簡単に言うと、自分の信念を疑わず、それに則り斧で殺人をする青年です。
ここは殺人するために刃を立て薄ら笑っているラスコーリニコフの心情を表しているのでしょうか。自分の行動を正しいと思う彼のように、仙台に戻り再スタートすることを決めたのは正しいんだと。
剥がれ落ちた~は、正直よく分かりません。光塚とWUGを天秤に掛けた結果、光塚を選んだ菜々美のことかな、などと考えましたが、このパートを歌っているのがよっぴーなので違いそう。
信じるのかしないのか 黒い目の魚たちよ
そんなにも失うのに怯えるのか
また出てきました、黒い目の魚たち。ここはWUG説が濃厚です。再スタートという行動、そしてその覚悟を自分自身が信じるのか、それとも信じられないか。東京で活動して、これ以上何か、WUGらしさを失うのに怯えるのか。
伝えてよ 優しかった君に
僕はまだ今を信じてる
今では心と歌を忘れた君は、昔は優しかったそうです。東京に出る前の、仙台のファンたちは温かく優しかったけど、東京はかなり冷たかったのも絡んでいるのでしょう。ですが、仙台と東京を経験し、仙台に戻ってきたWUGは、まだ今の可能性を信じてるようです。
それが戦いの合図としても
立ち止まらない だからひた走れ! 走れ!
この曲を歌い、優しかった君に伝えるということは、事実上アイドル日本一を決めるアイドルの祭典決勝に立つということ。それはまさしく『戦いの合図』ですが、それでもWUGは立ち止まらずにひた走る。
傷だらけになってでも 必ず僕は君を護る。
それが僕には最後の 生命(いのち)の燃やし方だから
東京での活動がうまくいかず、傷だらけになったWUG。それでも、嘘や憎しみのようなものから、必ず君を護る。ここだけ歌詞に句点が打ってあるのも、堅い決意の表れぽいですね。
そして、それが「最後の」生命の燃やし方、という意味深なことを言っています。
世界はまだ闇の中 でも新しい朝は来るさ
そう、絶望の先にほんとうを見つけたいんだ
「君」はまだ闇の中、嘘の檻に閉じ込められています。でも、必ず太陽は東の空から昇ります。
どん底に落ち絶望さえしたものの、その先にある「ほんとう」を見つけたい。この「ほんとう」とは、辛矢凡視点編で書きますが、このヤマカンのブログにある「真実の器」ってことなんじゃないかなと思います。
未来の永遠さに僕達は苦しむ
幸せに裏切られた君を 抱きしめる
このパートをななみんが歌ってるのいいですよね。「光塚を受けなかったらいつか絶対後悔するから」と永遠の未来に苦しんだ菜々美が、噛みしめるように歌う。
東京でのWUGがそうだったように、幸せなんてそう長く続かないものです。幸せから一転不幸になってしまうなんて珍しいことじゃない。そうなってしまった「君」を、同じ境遇に立ったWUGが抱きしめる。天使か?
もしも神がいるのなら 聞いて欲しい僕の想いを
世界中の憎しみを 全部僕が受けとめるから
1番サビと同じ歌詞。ライブでのここのまゆしぃ、いいですよね。
絶望は希望の種 前を向き祈り捧げるよ
さあ、混沌(カオス)となったこの自由から逃げ出そう
ラスコーリニコフが絶望の中でソーニャという希望を見い出したように、人はよく絶望の中で希望を見つけます。前を向き祈りを捧げ、決意を堅めて曲が終わります。