日曜の朝。。。 | Roll of The Dice ー スパイスのブログ ー

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稀に・・・となるかも、ですが、音楽や演劇、書籍について書きたく思ひます。

昨夜は〝The Words〝と〝My Darling Clementine〝、映画を2本、ネットで観ました。

The Wordsは初見。My Darling Clementineは、たぶん5回目。

 

まず前者。作家志望の若者が、新婚旅行先のパリでふと手に入れた古カバン。そこには日に焼けた原稿の束が。

一読して〝これぞ真の言葉だ、人生だ〝と感動した彼は、ついうっかりこれを盗作。一躍売れっ子作家・マスコミの寵児となった。

斯界と世間の賛辞に少しく疲れたある日、セントラル・パークでひとりまったりしていたら、見知らぬ老人が隣のベンチに座る。ヨレヨレのロングコートに草臥れたジャケットとタイ。背は高く痩せぎすも、宇野重吉みたく柔和である。そして宇野重吉のように、微笑む目の奥の光はしかし、鋭い。

老人は問わず語りに昔話を始める。。。

 

そう、彼こそその物語の、本当の作者だったのだ。

だが老人は、事実を暴露するでもなく強請るでもなく、自分が単にそれを書いたという事実、ー 第二次大戦前後のパリにおける、哀しい体験 ー そして

 

「選択も過ちも、決して取り消す事はできない」

 

などと、まるでコーマック・マッカーシーのような事を言い残し、黙って去ってゆく。

「君は人の人生を盗んだんだ。盗んだからには苦しみを背負い続けなければならない」

「選択はとうに為された。あとは否が応でも、その人生を生き続けるしかないのだ」

 

◆予告編

 

 

 

ーーー

 

次に後者。「愛しのクレメンタイン」とは言い条、これじゃないです。

◆Neil Youg - Clementine 

 

 

こっちです。

◆ジョン・フォード監督 ー 荒野の決闘(My Darling Clementine, 1946)

 

 

 

 

元保安官のワイアット・アープ(ヘンリー・フォンダ=ジェーン・フォンダ、ピーター・フォンダらの父ちゃん)。彼を筆頭とする4兄弟は今や牛追いである。

道中荒野で野営していると、行き合わせたオールドマン・クラントン(ウォルター・ブレナン)らクラントン一家が「その牛たち、痩せてるな。俺たちに売らねぇかい」。ワイアットは断り、若い末弟のジェームズ(ドン・ガーナー)だけを残してトゥームストーンの街へ遊びに行く。

街で先住民の酔っ払いを退治するなど活躍したワイアットは町長から保安官になって欲しいと頼まれる。こちらも断り夜営地に戻ってみると、牛たちは盗まれジェームズは殺されている。享年18。

トゥームストーンでワイアットは、一旦断った保安官に就任する。残った2人の弟モーガン(ワード・ボンド)とヴァージル(ティム・ホルト)は保安官補に。動機はほぼほぼ、弟を殺した犯人探しのため。しかし同時に、街を一掃せむと志す。

 

ワイアット・アープ保安官は酒場で、ドク・ホリデイ(ヴィクター・マチュア)なるガンマンにして1人親方 ー つまりヤクザ ー と知り合う。最初は牽制していたドクも、ワイアットの度胸と漢気に接し、友人となる。

ドクには街に愛人がある。酒場の歌手で売笑婦のチワワ(リンダ・ダーネル)。そこへある日、東部から元婚約者のクレメンタイン・カーター(キャシー・ダウンズ)が来日す。メキシコの血が入り、野生的なチワワに対し、クレメンタイン女史は知的で清楚。チワワは直ちにクレメンタインに敵意を抱く。

ドクは東部で医師をしていたが、結核になったり(結核は昔は死病であった)何たりで世を儚み世を倦んで、婚約者を捨て忽然と姿を消したのだった。クレメンタインは探しに探して遂にトゥームストーンへ来日と、そんな顛末。

 

やっと元彼を探しあてた彼女にドクは、直ちに帰れと厳命す。自分はもう世を捨てたのだと。二度と東部の都会へは戻らないと。

やむなく翌朝、東へと向かう馬車を待つのはクレメンタイン。美しい日曜の朝、ワイアットが彼女をサーヴする。

◆かの有名な、日曜日朝のシーン

 

 

建設中の教会、野天で集会。牧師はまだいない。

司式者は言う。

 

「聖書を何度も読んだけど、どこにも『踊るな』とは書いてない。ダンス!」

 

街の衆は一斉にペアダンスをし始め、ふだん踊ることなどないワイアットも彼女を誘う。

 

 

そう、彼はクレメンタインに、ほのかな思いを抱いていたのだった。。。

 

ーーー

 

ジョン・フォード監督、『駅馬車』と並ぶ最高傑作がコレ。前者が動ならMy Darling Clementineは静。〝荒野の決闘〝なる邦題だが、ガン・ファイトは全104分中ラストの10分程度で、通底するのはむしろ「詩情」。

This is ハリウッドな撃ち合いやアクションシーンに欠けるから、若い向きには物足りなかろう。しかし歳を重ねたワタクシどものような者にとっては、しみじみと。

ジョン・フォードを敬愛してやまぬ黒澤明は「これぞ完璧な映画」。また小林信彦も、生涯ベストワンに挙げる。例の日曜の朝、そしてヘンリー・フォンダとキャシー・ダウンズ別れのシーン。。。

 

 

撮影当時、ヘンリー・フォンダは41でキャシー・ダウンズは何と22歳。大人だよなぁ。

阿呆は「昔の俳優は老けてる」などと言うが、バーカ。今の連中が幼稚過ぎるんだよ低脳。

分別を知らないだけじゃない。そもそも凛としてないでしょ、人として。

 

時代劇好き=西部劇好きと断じて差し支え無かろう。『銭形平次』のYoutubeに「キャー、橋蔵さま❤️」などと毎回書き込むオバサマを除いては。

先日紹介した阪妻『雄呂血』をはじめ、たまには昔の映画を観ると良いです。人の心が、そのありようが分かるから。

 

では音楽。

◆ヴェルヴェッツ(Velvet Underground )で、Sunday Morning.

 

 

続きましてはイギー・ポップ。

◆Beside You

 

 

最後はまたぞろ、ジョニ・ミッチェル。

◆Come in from The Cold

 

 

 *

 

「相も変わらぬ日曜日もやっと終わった。ママンはもう埋められてしまった。

また私は勤めに帰るだろう。結局、何も変わったことはなかったのだと私は考えた」

 

ー アルベール・カミュ『異邦人』

 

そして本日説教は、先行者(洗礼者)ヨハネの件。

 

「荒野で叫ぶ声がする。『主の道を真っ直ぐにせよ!』

わたしは何ほどの者では無い。あとから真の光がやって来る」

 

ー ヨハネによる福音書、1-19〜28。

 

先行者ヨハネも凛としていて。

要はもう直ぐ、クリスマス🤶