前作『ハックニー・ダイアモンズ』から3年ぶりの新譜‘Foreign Tongues’。
ざっと聴いてみた。
先行してYoutube公式に上がっていたIn The Starsなど数曲を聴いた時には、妙に丸まってキレがなくなり、あたかも末期の『マカロニほうれん荘』状態。過去の栄光、その惰性。ストーンズも流石に老いた、こう感じたものだが、アルバム全体通して聴くと印象は一変。
オープニングはRough and Twisted.
神か悪魔かそれとも女か。誰かに車を運転させて、「なあ、連れて行ってくれよ。ミシシッピのナチェズでもプエルトリコでも、なんならシチリア、ローマだってイイぜ」「水が光り、詩とニジンスキーのダンスが輝く場所へ」。
どブルースである。かつてのKey to The Highwayや、クラシックなところでは『ルート66』、永ちゃん的には『トラベリン・バス』を彷彿させるロードムービー。もとい、ロード・ソング(?)。
しかし願っていたのに反し、着いた処は腐った米と汚水だらけの街。
「お前が連れてきたのは腐ったような街だった」「空気は刺すように有毒で、息もできない」「1軒だけあるクラブは〈陰謀〉って名前で、俺は歓迎されなかった」「サックスの響きみたいに俺は孤独だった」。
それでも彼は、〈此処より他の場所〉を希求し
Yes,why don't you teach me,teach me all those Foreign Tongues?
なあ、教えてくれよ。知らない言葉と世界を。
Desperateな歌詞はある意味ブルースの伝統に忠実。ロバート・ジョンソンよろしく彼は、冥界魔界を巡るのだ。
ダンテの『神曲』、ゲーテの『ファウスト』。レイナルド・アレナス『めくるめく世界』でもいいのだが、地べたに立脚しながらも、天空冥府をぐるぐると。冥府魔道は拝一刀@子連れ狼。
つまり、中村時代の活きのいい錦之助は寄る年並でもう無理だが、これ萬屋の、熟練の技。
音はミックのハーモニカ、そして右チャンネルのロニーと左チャンネルのキース、ギターの絡みが際立つ。この特長はアルバム全体を通して言えることだが、一方、スティーヴ・ジョーダンの太鼓は正確無比も、余白を殺し密着し過ぎて隙がない。
音数多く、音の密度が高く感じるのは彼のプレイゆえか。死んじまった者を恋い慕うのは詮無いが、‘お猿のタイコ’チャーリー・ワッツのあの「抜け」と、スネアの骨っぽさこそストーンズ・サウンドだったと今更ながら。
アルバム通して聴いて、印象が一変したのは曲の並び。Rough andの次にこれを持ってきたのはナイスプレー。
◆In The Stars
2曲続けて聴いてみてほしい。重めのブルースから軽快・ポップなサウンド。冒頭のリフもThis is Stonesで、ギターの絡みは一貫している。
〈流れ〉が特に秀でているのは、5曲目と6曲目。
◆Devine Intervention
◆Ringing Hollow
Devine Interventionは、往年のRespectable→(サビ部分の)She Was Hotへと展開。ギターソロはロニーだろうか、これはカントリー。
このソロが、次のまさしくカントリー曲Ringing Hollowにつながる。かつRingingはSweetで、それでいて情に流されてもいない。
この5曲目から6曲目の流れこそ、自分的には本盤のハイライト。
特徴の3つ目は、ルーツミュージックが前作ハックニー・ダイアモンズより前に出ていること。上記挙げた点に加え、アルバム最後をチャック・ベリーのブルースで締めているのもその表れ。
さて、みのミュージックのみの氏が最近、本盤を評していた。彼が疑義を呈していたのはミックのボーカルをピッチ補正した点や、In The StarsのPVで、なぜ若い肉体に若い頃の顔を貼り付けてやったのか ー といった点。
要は「老いを老いとして、なぜそのまま出さなかったのか。リアルを提出してこそストーンズではないのか」。
Youtubeのコメント欄は「いや、ピッチ補正くらいいいじゃん。だって80歳オーバーだぜ?」といった書き込みが多かった。うむ、同意。
聴くと分かるが、金を払うに値する作品・商品に仕上がっている。ピッチを幾分直したからって何だ、良い商品ならそれで良い ー というのが俺の考え。
これは「結果が全て」ということであり、逆に言うなら80だろうが90だろうが関係ない。良い物は良いし、悪い物は悪い。俺はいかなストーンズだって、下駄は履かせない。
これってみの氏より厳しくね?
ピッチがどうこう細かいことじゃなく「本質的に」だから。
厳しいのは、それこそ「だってストーンズだぜ?」だからである。敬意を払っているからこそ。
ただしみの氏が言ってることに、分かる点もある。「ミックは常に市場に気を配り、キースはいつもリアルの人。このバランスがストーンズを成してきた」「ところが本作では、ミックの‘フェイク’にキースが負けている」・・・
その答はキース曲、Some of Us にあり。つまりあんまりよろしくないのだ。The Nearness of You とかあの辺の焼き直し。才能が枯渇したのか、キース?
たった1曲に全部背負わせるのは無理くりだが、あの添え物的なキースの1曲は、みの氏が言う「負け」を象徴しているようにも思えた。
※尤も、キースはギターでキースしており十二分に貢献。相変わらず素晴らしいのは言うまでもない。
老いを老いそのままに提出せよ。みの氏の意見はそして突き刺さる。ストーンズのアルバムに関わらず、未だ80歳ではないにせよ、同じく老いた我々年寄りには。
俺自身、アンチ・アンチエイジングだし。
でもなぁ。時々眉毛の白いのをカットしたりもするんだよなあ。だってジジむさいじゃん。
「老いを老いのままに」に心は同意、体は反応。
以上、ストーンズ‘Foreign Tongues’の感想文でした。体は反応。
◆ラストもブルース、Beautiful Delilah.














