「オリジナル録音」です。

 

1980年11月から12月にかけて録音されたこのアルバムは、声が「不調」の時期で、現在ではあまり目立つ存在ではありませんが、「1980年代のバルバラ」を語る上では、とても「重要」なアルバムだとも言えます。

 

「公式発表」の「スタジオ録音盤」は、この後、1996年11月発売(亡くなるちょうど1年前)の「ラスト・アルバム」までなく(近年発見された、「Lily Passion」の「未発表録音」を除く)、日本で発売された「スタジオ盤」は、これが「最後」でした。

 

同じサムネイルですが、こちらは、1981年10月28日から11月21日まで、「イポドローム・ド・パンタン」という「大テント劇場」(ジャン・リシャール・サーカスの「常設劇場」。「再開発」された現在では、この地に「ゼニット・パリ」があります)で行なわれた公演からの「ライヴ録音」です。

 

このライヴは、「DVD」も発売されていますが、この曲は、「CD」(2枚組)のみの収録となっています。

https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10097047678.html(これまでの記事)

 

「11月24日」は、偉大な女性歌手バルバラ(1930-97, 本名モニック・セール)の「命日」です。

 

来年は、「生誕90周年」(「6月9日」が誕生日)ともなるバルバラ。

 

今回は、「これからの季節」にもピッタリな、この曲を紹介いたしましょう。

 

1980年暮れに録音され、翌年2月に発売となった、「スタジオ録音」のアルバム、「seule "孤独と夜の中で"」に収録された、当時の「最新曲」の1つ、「mille chevaux d'ecume "月に向かう馬"」(原題は「1000匹の泡の馬」という意味)です。

 

「幻想的」な作品であり、「1980年代のバルバラ」を印象付けるような、「現代的」なリズムとアレンジが「特徴」となっています。

 

 

1970年代後半には、「睡眠薬の過剰摂取」や、自宅の「火災」、「盟友」であり、「憧れの人」でもあった、ジャック・ブレル(1929-78)の死もあり、「運気の乱高下」が、かなり「激しかった」とも言えるバルバラですが、それらを「乗り越えて」、このアルバム「seule "孤独と夜の中で"」は完成し、発売されました。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12480243268.html?frm=theme(参考:「眠れぬままに朝が来て」の記事)

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12439855828.html?frm=theme(参考:「希望への旋律」&「魔法の恋」の記事)

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12417404307.html?frm=theme(参考:「秋になります」の記事)

 

 

当時、「すべてが無の中に凍結している」とまで言われた、「戦慄的」な作品。

アルバムの「タイトル曲」ともなっている、「seule "夜のように"」(原題は「孤独」)がこちらです。

1981年、パンタンでのライヴ映像からどうぞ。

 

最後の来日時(1990年9月)のインタビューで、「音楽家でなければ、私は"ルポ作家"になってたでしょう」とも話し、あくまでも、「自分の身に起こったことしか歌わない」と「明言」しているバルバラですが、1980年代以降は、同時に、「幻想作家」としての一面も、色濃く表出するようになっていました。

 

その1990年のモガドール劇場公演にて発表された新曲、「vol de nuit "夜間飛行"」も、そうした1曲だと思います。

 

 

 

1987年9月のシャトレ劇場公演で、見事によみがえったこの曲も、大変「幻想的」な内容を持つ1曲です。

 

「du sommeil a mon sommeil(le sommeil) "眠りから眠りへ(ねむけ)"」(1968)。

 

Chatelet 87 V1 Chatelet 87 V1
787円
Amazon

 

Chatelet 87 [DVD] [Import] Chatelet 87 [DVD] [Import]
2,337円
Amazon

 

それでは、以下に、「mille chevaux d'ecume "月に向かう馬"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

詞・曲ともにバルバラ自身の手によりますが、「オリジナル録音(スタジオ)」で、編曲・指揮を務めたのはミシェル・コロンビエ(1939-2004)です。その「深遠」な、シンセサイザーの響きが実に「幻想的」で、まるで「夢の世界」にいるようでもありますが、「中間部」の詞は、やはり「現実のバルバラ」を思い出させたりもします。

 

また、このアルバムで「ベース」を担当しているのは、ミシェル・ベルジェ(1947-92)、フランス・ギャル(1947-2018)夫妻の「良きパートナー」でもあった、名手、ジャニック・トップ(1947-)です。

 

今回の訳詞は、若干の「アレンジ」はありますが、1981年発売の「国内盤」アルバム、「seule "孤独と夜の中で"」に掲載された鳥取絹子さんのものをお借りしました(名訳です!!)。

 

それではまた...。

 

..........................................................................................................................................................................................

 

mille chevaux d'ecume  月に向かう馬

 

mille chevaux d'ecume

galopent

galopent a la lune

galopent

au-dessus des dunes

des chevaux lumieres

claquent leurs crinieres

quand tu joues

quand tu joues

 

泡の汗をかいた馬が1000匹

ギャロップ!

月に向かって、ギャロップ!

ギャロップ!

砂丘の上を

光の馬が

たてがみを鳴らす

あなたが(ピアノを)弾くとき

あなたが(ピアノを)弾くとき

 

joue

au bout de tes doigts

ton piano geant

est un ocean

qui roule

joue

ton piano nacelle

balance leger

sur un arc-en-ciel

j'oublie tout

quand tu joues

j'oublie tout

 

弾いて

あなたの指で

あなたの大きなピアノは

波が砕ける大洋

弾いて

あなたのピアノは小舟

虹の上で

軽やかに揺れている

わたしはすべてを忘れてしまう

あなたが弾くとき

わたしはすべてを忘れてしまう

 

un cargo s'est perdu avec son equipage

un tout petit garcon est garde en otage

pour etre comme un oiseau, leger sur un nuage

un homme s'est jete de son septieme etage

ils etaient des enfants au coeur de l'innocence

on les a fusilles pour crime d'insolence

les terres sont brulees

les hommes sont malades

de folie en furie

on a honte de vivre

honte de vivre

 

貨物船が沈没し、乗組員は行方不明

小さな男の子が人質に取られ

1人の男が、鳥になりたいと

7階(「快楽」の意もあり)から身を投げた

みんな無邪気な心の子どもたち

こじつけの罪で、人は彼らを射殺した

大地は焼き尽くされ

人々は病気

狂気から凶暴へ

人は生きるのを恥ずかしく思う

生きるのを、恥ずかしく

 

joue

sur mon vague a l'ame

ton piano geant

deroule ses gammes

joue

quand tu joues blues

c'est la vie revee

je suis emportee

joue

fantasmagorique

ton piano magique

s'envole leger, leger

quand tu joues velours

c'est la vie amour

je suis emportee

c'est la vie revee

 

弾いて

わたしの心の波に向かって

あなたの大きなピアノが

音階を奏でる

弾いて

あなたがブルースを弾くと

人生は夢のよう

わたしはうっとりしてしまう

弾いて

幻想的な

魔法のようなあなたのピアノが

軽やかに、軽やかに飛んでいく

あなたがビロードを弾くと

人生は愛のよう

わたしはうっとりしてしまう

人生は夢のよう

 

joue

des chevaux d'ecume

galopent, galopent

galopent a la lune

ton piano nacelle

balance leger, leger

c'est la vie revee

je suis emportee

 

弾いて

泡の馬たちが

ギャロップ、ギャロップ!

月に向かって、ギャロップ!

あなたのピアノは小舟

軽やかに、軽やかに揺れている

人生は夢のよう

わたしはうっとりしてしまう

 

joue

les oiseaux de lune

s'accrochent a la brume

quand tu joues

quand tu joues velours

c'est la vie amour

je suis emportee

et je vais leger, leger

joue

sur ton piano blues

quand tu joues

oh j'oublie tout

joue

j'oublie tout...

 

弾いて

月の鳥たちが

濃い霧につかまって

あなたが弾くと

あなたがビロードを弾くと

人生は夢のよう

わたしはうっとりしてしまう

そして軽やかに、軽やかに、わたしは行く

弾いて

あなたのブルースのピアノの上へ

あなたが弾くと

ああ、わたしはすべてを忘れてしまう

弾いて

わたしはすべてを忘れてしまう...

 

Integrale Integrale
10,196円
Amazon

 

Integrale Des Albums Studio Integrale Des Albums Studio
7,128円
Amazon

 

 

 

(注:「DVD」には、この曲は収録されていません)

Pantin 81 [DVD] [Import] Pantin 81 [DVD] [Import]
10,602円
Amazon

 

(参考)

 

(参考)

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12490116179.html?frm=theme(この映画についての記事)

 

(daniel-b=フランス専門)