「現存」する「レコード」の中で、「最も古いもの」となるのが、こちらの、「オランピア1978」のライヴ録音です(1978年2月)。

 

バルバラは、歌い始める前に、こう言っています。

 

「cette chanson qui s'appelle "les insomnies"...

pour cause...

(この歌の名前は、「不眠症」と言います...

その理由は...)」

 

現在、「検索」出来る中で「最も古い音源」はこちらとなります。

 

1975年の初めに「ボビノ劇場」で発表されたこの曲は、実際に「レコード化」されるまでに「かなりの時間」を要しました(上掲の「オランピアライヴ」まで3年、「スタジオ録音」まで「約6年」です)。

 

こちらの映像は、「発表当時」である、1975年8月2日のテレビ番組からのものです。

こちらは、詳しい日時は「不明」ですが、おそらく、「1980年前後」の映像だと思われます。

 

最後に、1981年2月に発売された、「スタジオ録音」のアルバム、「seule "孤独と夜の中で"」収録のバージョンです。

 

1978年のオランピア劇場公演の後、一度は録音されましたが、「出来が気に入らず」に、「お蔵入り」となっていました。

 

1980年11月から12月にかけて録音されたこのアルバムは、声が「不調」の時期で、現在ではあまり目立つ存在ではありませんが、「1980年代のバルバラ」を語る上では、とても「重要」なアルバムだとも言えます。

 

「公式発表」の「スタジオ録音盤」は、この後、1996年11月発売(亡くなるちょうど1年前)の「ラスト・アルバム」までなく(近年発見された、「Lily Passion」の「未発表録音」を除く)、日本で発売された「スタジオ盤」は、これが「最後」でした。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12476607278.html(前回の記事)

https://ameblo.jp/daniel-b/theme-10097047678.html(これまでの記事)

 

「6月9日」は、フランスを代表する「偉大な女性歌手」、バルバラ(1930-97, 本名モニック・セール)の「誕生日」でした。

 

バルバラをテーマにしたこちらの映画も、間もなく、「DVD」が「発売」となります(7月2日予定)。

 

 

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12450146772.html?frm=theme(参考:この映画についての記事)

 

さて、今回紹介する曲は、1981年2月に発売され、その年のうちに、「日本」でも発売されたアルバム、「seule "孤独と夜の中で"」の「ラスト」を飾る名曲、「les insomnies "眠れぬままに朝が来て(不眠症)"」(1975-80)です。

 

このアルバムからは、この2月にも、「la musique "希望への旋律"」(1978-80)、「l'amour magicien "魔法の恋(恋の魔術師)"」(1975-80)の2曲を紹介しました。

https://ameblo.jp/daniel-b/entry-12439855828.html?frm=theme(記事はこちらです)

 

その際、今回の曲についても触れていますが、上述のように、「来月」(7月)には、バルバラについての映画(マチュー・アマルリック監督)の「DVD」も発売されます。この曲に関連する場面も出て来ますので(「曲自体」は登場していません...)、ここでもう一度、振り返ってみたいと思います。

 

「ウィキペディア」と、私が主に参照している「ファンサイト」とでは、「日時」などに若干の「ズレ」はありますが、後者の方が、記述が「詳しい」ということもありますので、今回は、それをもとに書いてみます。

http://passion-barbara.net/(ファンサイト「passion-barbara」)

 

1974年6月3日から4日にかけての夜、「睡眠薬」を「大量に服用」したバルバラは、朝6時に、プレシー=スュル=マルヌの自宅から、約10km東のモーにある病院に、「意識不明」のまま搬送されました(「ウィキペディア」では、これが「6月5日のこと」となっています)。

 

その後、5日には、パリ近郊、ヌイイ=スュル=セーヌの「アメリカン・ホスピタル」に運ばれたということで、これらの出来事により、フランス社会は、一時「騒然」となりました。

 

後のアヴィニョンでのライヴの際、「私は死にたかったのではなく、眠りたかったのだ」と釈明したということですが、このこともあって、バルバラは、その後の(年内の)活動を「制限」したようです。

 

この曲は、その「経験」をもとに作られたものです。日本での発売当時(1978年から81年にかけて)は、後の、「火災に遭った経験(自宅が全焼?)」からこの曲が作られたとされていましたが、現在では、「訂正」する必要があると思います。

 

その「火災」も、「1977年3月」のことであるとされ、これも、従来日本で伝えられていた内容(「1976年2月」)とは「1年」もの誤差があることになりますが、いずれにせよ、そのことが「きっかけ」となり、当時、「目立った活動」をほとんどしていなかったバルバラも、「再びステージに立つ決心をした」ということです。ファンも当然、そんなバルバラを、「温かく」迎え入れました。

 

今回の曲は、原題が「不眠症」ということで、最初に挙げた、1978年2月のオランピア劇場公演の録音でも、「タイトルの意味を説明する」形で歌が始まっています。

 

「私にとっての天国は、夜、眠ること」

「死ぬことと眠ること、まるで違っても、まぶたを閉じるのは同じ

私は2つを取り違え、もう少しで目が覚めないところだった...」

「ベッドの上にはパリの消防士、下には憲兵隊の偉い人」

「天国(死)で眠るよりも、地獄(不眠症)で生きていたい」

 

これらの歌詞には、バルバラの「軽妙なエスプリ」が存分に感じられますが、「従来の解説」で聴いて来られた方でも、あらためて「納得」されることだと思います(日本では、従来、「正しい情報」が充分に伝わって来たとは「言い難い」面があります)。

 

さて、「眠り」という点ではこちらの曲も「名作」です。

 

1968年、アルバム「le soleil noir "黒い太陽"」の1曲として発表されたものの、それほど「目立つ」というわけでもなかった「du sommeil a mon sommeil(le sommeil) "眠りから眠りへ(ねむけ)"」。

 

1987年9月のシャトレ劇場公演で見事によみがえりました。

大変「幻想的」な内容を持つ1曲です。

 

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最後に「番外編」です。

 

今回、バルバラの「les insomnies」を動画サイトで検索していたところ、こちらの動画も見つけました。

 

「バルバラ・オプソメ」とお読みすればよろしいのでしょうか。

1990年5月16日生まれ、ベルギーの出身だということです。

 

昨年のちょうど今ごろ発売された曲で、「ta plus belle insomnie "あなたのとても素敵な不眠症"」といいます。

 

このMVの再生回数は、「500万回」を越えており、とても「ノリの良い」曲だと言えますが、詞の内容は、「イマドキ」の「セクシー系」ですので、「興味のある方」だけご覧ください。

 

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以下に、バルバラ(モニック・セール)の、「les insomnies "眠れぬままに朝が来て(不眠症)"」の歌詞を載せておくことにいたしましょう。

 

今回の訳詞は、当時の「日本盤」(アナログ)に掲載の、鳥取絹子さんのものをお借りいたしました(名訳です!!)。

 

それではまた...。

 

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les insomnies  眠れぬままに朝が来て(不眠症)

 

a voir tant de gens qui dorment et s'endorment a la nuit

je finirai, c'est fatal, par pouvoir m'endormir aussi

a voir tant d'yeux qui se ferment, couches dans leur lit

je finirai par comprendre qu'il faut que je m'endorme aussi

 

夜、たくさんの人が眠りについているのを見ると

私もついに眠りにつける、それが「運命」

ベッドに寝て、たくさんの目が閉じているのを見ると

私もついに眠らなければ、と思う

 

j'en ai connu des grands, des beaux, des bien batis, des gentils

qui venaient pour me bercer et combattre mes insomnies

mais au matin, je les retrouvais, endormis dans mon lit

pendant que je veillais seule en combattant mes insomnies

 

大きい人(偉い人)、ハンサム、金持ち、優しい人

いろんな人が私の不眠症を追い払いに来てくれた

でも、朝になると、みんな私のベッドで眠りこけ

私はひとり、不眠症と戦って夜を明かした

 

a force de compter les moutons qui sautent dans mon lit

j'ai un immense troupeau qui se promene dans mes nuits

qu'ils aillent brouter ailleurs, par exemple, dans vos prairies

labourage et paturage ne sont pas mes travaux de nuit

 

眠ろうと、羊を数えているうちに

羊は巨大な群れとなって、夜を散歩

草は他へ行って食べて。例えばあなたの牧場など

羊の面倒を見るのは、私の夜の仕事じゃない

 

sans compter les absents qui me reviennent dans mes nuits

j'ai quelquefois des vivants qui me donnent des insomnies

et je gravis mon calvaire sur les escaliers de la nuit

j'ai deja connu l'enfer, connaitrai-je le paradis?

 

いない人(亡くなった人)がやって来るのは別として

時々、生きた人まで私を不眠症にする

そして私は、夜の階段を苦しみながらよじ登る

もう地獄は見たけれど、天国は見れるのかしら?

 

le paradis, ce serait, pour moi, de m'endormir la nuit

mais je reve que je reve qu'on a tue mes insomnies

et que pales, en robe blanche, on les a couchees dans un lit

a tant rever que j'en reve, les revoila mes insomnies

 

私にとっての天国は、夜、眠ること

ああ、誰かに私の不眠症を殺してほしい

そして白い服を着せ、ベッドに横たえる

それが、私の不眠症に対する夢

 

je rode comme les chats, je glisse comme les souris

et Dieu lui-meme ne sait pas ce que je peux faire de mes nuits

 

猫のようにうろつき回り、ネズミのように滑りこむ

神様さえ、私の夜はどうしたらいいかわからない

 

mourir ou s'endormir, ce n'est pas du tout la meme chose

pourtant, c'est pareillement se coucher les paupieres closes

une longue nuit, ou je les avais tous deux confondus

peu s'en fallut, au matin, que je ne me reveille plus

 

死ぬことと眠ること、まるで違うことだけど

まぶたを閉じて横になるのは同じ

長い夜の間に、私は二つを取り違え

もう少しで、朝になっても目が覚めないところだった

 

mais au ciel de mon lit, y avait des pompiers de Paris

au pied de mon lit, les adjudants de la gendarmerie

o Messieurs dites-moi, ce que vous faites la, je vous prie

Madame, nous sommes la pour veiller sur vos insomnies

 

でも、ベッドの上にはパリの消防士

ベッドの下には憲兵のお偉い人

みなさん、そこで何をなさっているの?

「マダム、あなたの不眠症の番をしているのです」

 

en un cortege chagrin viennent mes parents, mes amis

gravement au nom du Pere, du Fils et puis du Saint-Esprit

si apres l'heure, c'est plus l'heure, avant, ce ne l'est pas non plus

ce n'est pas l'heure en tout cas, mais grand merci d'etre venus

 

いまは亡き両親や友だちが、列を作ってやって来る

大げさに、父や息子、聖霊の御名によって

時が、後にも先にもないとしたら

「今」もない。でも、来てくれてありがとう

 

je les vois deja rire de leur fine plaisanterie

ceux qui pretendent connaitre un remede a mes insomnies

un medecin pour mes nuits, j'y avais pense moi aussi

mais c'est contre lui que je couche mes plus belles insomnies

 

みんな、鋭い冗談で笑っている

私の不眠症に効く薬があるか知りたいと

私も、夜をみてくれる医者を探していた

でも、私が不眠症を横たえるのは彼のそば

 

a voir tant de gens qui dorment et s'endorment a la nuit

j'aurais fini, c'est fatal, par pouvoir m'endormir aussi

mais, si s'endormir c'est mourir, ah laissez-moi mes insomnies

j'aime mieux vivre en enfer que de dormir en paradis

si s'endormir c'est mourir, ah laissez-moi mes insomnies

j'aime mieux vivre en enfer que de mourir en paradis

 

夜、たくさんの人が眠りについているのを見ると

私もついに眠りにつける、それが「運命」

でも眠ることが「死」だったら、そのままでいたい

天国で眠るより、地獄で生きていたい

眠ることが「死」だったら、ああ、そのままでいたい

天国で死ぬより、地獄で生きる方を望む!

 

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(daniel-b=フランス専門)