劇薬だんご『GAME』『Leben、Lieben~…しちまった悲しみに~』② | おだんご日和

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Dango茶屋・いちのせの徒然記

私は「文は人なり」と思っています。
よって脚本は、書き手の心の変化や信条や如実に現れる、ある意味で非常に恐ろしいものだと思っています。


どちらの舞台も技術的には素晴らしい作品でした。しかし、脚本には明らかに「柱の喪失」が描かれていると思うのです。


『GAME』は、端的に言うと「一人を生き残らせるために、もう一人が命を捧げる物語」です。
生き残る方にとっては「友人が死ぬ」だけですが、命を捧げる方にとっては「愛する人が生き残る」わけです。しかも、愛していることは最後まで伝わらない。
生き残った方は、自分を支えてくれていた大きな柱をそうと知らずに失ってしまうのです。


そして『Leben、Lieben~…しちまった悲しみに~』は、結局のところ「家族を見捨てて、気の合う友人たちと一緒に楽しく暮らす男の物語」です。
あんなに慕ってくれている妹の結婚式に出席することもせず、最後になぐさめてくれるのは職場の同僚たちです。
ハッピーエンドのようにも見えるかも知れませんが、妹の結婚相手に会うことからも、両親と邂逅することからも最終的には逃げています。
これは「家族」という柱を失った男の悲劇の物語として見ることもできます。


「文は人なり」が真実だとするならば、脚本家は何らかの「柱の喪失」に直面している可能性があります。
本人たちはそれに気付いているのか、新しい柱は見付かっているのか、今何本の柱が残っているのか、非常に心配です。
どちらも作品として面白かっただけに、倒れたりしないようによくよく注意してほしいと思います。


佐賀は良質な人材を失っても平気でいられるほど、厚い層を持っているわけではありません。
力のある人は、それに見合った責任感を持って、身を大事にしなければいけないと思うのです。