『②作品上映』
次から次に連続上映されたのですが、作品の前後に解説とか、司会者のコメントとかが入ってもよかったかもしれません。
「遠すぎた飛行機雲」8分 柿塚真美子(有田工業高校)監督
現代の閉塞感が良く出ていて、SFとしても寓話としても非常に面白かったです。
後半のシンポジウムで、年輩の観客から「更に突っ込んで表現したいという欲望は出なかったか?」との質問が出ていましたが、監督はきょとんとしていて上手く答えられていませんでした。
監督は「閉塞感」を表現しようとしているのであって、「絶望感」や「閉塞感への反抗」を表現するつもりはさらさらないのでしょう。
それを期待してしまうのは観客側が無意識にカタルシスを求めているからだと思います。
そういう観客の期待に、もし制作中に気付いてしまった時、期待に応えるべきかは微妙ですよね。
期待に応えてしまうと別のテーマの作品になってしまう。
こういう時「自分の主張を貫きつつ、観客の期待を実現する」押井守監督の言うところの「裏読み的表現」が役に立つのでしょう。
単純な映像表現の部分で気になったのですが、頭からお尻までほとんど人物が出ずっぱりなのは良くなかったと思います。
インサート映像がほとんどなかったので、構図と役者の演技力で勝負するしかなく、少し窮屈な感じがしてしまいました。
それに役者さんは普通の高校生ですから、演技力や美貌の点でどうしても損している場面がありました。
監督は撮り直したカットがあったと言っていたけれど、もしかすると、どアップや風景、大ロングなどのインサートでごまかせたのではないかという気もします。
「軍神~終わらない戦後~」10分 久保康平(九州龍谷短期大学)監督
しっかりとしたドキュメンタリーでした。記録映像やインサートの使い方が良かったです。NHK放送コンクールの大学部門で2位を受賞したそうです。
こういうドキュメンタリーでは作者の視点をどう置くのか、難しかったと思います。
作品自体が短いせいもあるかも知れませんが、少し「現代の視点」でまとめすぎた気がしました。当時は当時の価値観や思想があったワケで、それを現代の視点で単純に見てしまうのは良くないかと…もちろん、決して「現代の単純に見た」だけの作品でないのですが、もう少し複雑な視点を持った方が広がりのある作品になったのではないかと思いました。
ただ、関係者がご存命のうちに少しでも多くの証言を記録しておくべきで、資料としての価値も高いと思います。
難しいテーマに対して、自分なりに格闘して行く姿勢は素晴らしいです。
ところどころカットのつながりが甘いところが散見され、実は素材が足りなかったのではないかとも思いました。
(…つづく)