【はじめに】

 

 

Kaua'i 島の Hanalei に関する歌「Hanohano Hanalei 〜 Nani Wai'ale'ale」では 

Hanalei は雨で有名なことと、非常に滑りやすい場所 Manu'akepa があることが描か

れています。後で見るように、Hanalei に関する他の歌でも、この2つは必ずと言っ

てよいほどに言及されています。しかし、どこに Manu'akepa があるか、地図を調べ

ても分かりません。辞書[1] の「 limu kā-kanaka 」の項にはこうあります。

 

 limu kā-kanaka 【藻類】柔らかな緑色をした藻類. 和名は イシクラゲ、湿った季節

 に斜面に繁茂し、そのゼラチン質はよく滑る.  カウアイ島の ハナレイ 地方が有名. 

  He pakika i ka limu o Manu'akepa. マヌアケパ の(にある)苔はよく滑ります.

 

この最後の言い方は「 Hanohano Hanalei 」でも

 

 E pakika i kahi limu o Manuʻakepa     (Manuʻakepa の苔の所はよく滑る)

 

として使われています。

 

「 limu 」とは一般に水中にある藻類を指すことが多いため、Manu'akepa は海水を被
ることの多い海岸地区にあるという説があります。しかし、海水を被る海岸地区はた
だでさえ危険なところですから、「よく滑る場所」という牧歌的な言い方はしないで
しょう。ですから、Manu'akepa は海水を被ることの少ない陸上の、唯見ただけでは
それ程に滑るようには見えない何処かにあると考えるのが良いと思われます。それに
対して、陸上の何処かにそんな特異な場所があるなら、観光名所になっているはずで
はないかという反論があるかも知れません。
 
まず、Hanalei 付近を グーグルマップ で見てみます。
 

 

ハナレイの砂浜付近から山の方面を眺めると、Namolokama と Mamalahoa の2つの
山が見えます。それが Wikipedia の Hanalei の項から拝借した以下の写真です。
 
【 Hanalei Town, Kauai with a view of Mt. Namolokama  and Mt. Mamalahoa. This file is licensed under  the Creative Commons Attribution-Share Alike 2.5 Generic license.】
 
撮ったのは 2005年と若干古いのですが、現在でも街の様子は大きくは変わっていない
と思います。このように自然が広がっている状況では、明示的な案内がない限りは、
何処に滑りやすい場所があるかは分からないでしょう。土地の人たちには場所を知っ
ている方々も居るでしょうが、観光による人集めよりは、Kaua'i の伝統を守っていき
たいという気持ちが働けば、外部の人には曖昧なままにしておくかも知れません。で
すから、意外な所に Manu'akepa がある可能性は大きいのではないかと思います。そ
うなると、我々が得ることができる情報源から、場所を特定することになります。
 
情報源とは、そう、歌です。
 
 
【 Hanaley にある基本的な事物】
 
まず、Hanaley にある基本的な事物を確認します。まず、代表的な河川は、図の右手
から Ka'āpoko 川、Wai-oli 川、Waipa 川があります。これらの川が注ぎ込むところが
Hanalei 湾です。湾の左端が Makahoa 岬です。図の下の方に Mamalahoa 山の山頂が
記されていますが、Na-molokama 山は Wai-oli 川の源流となる地点に有るのでその山
頂は図には現れていません。人工物としては、Kuhio (幹線)道路、そして、その幹
線道から Wai-oli 川を渡る辺りで分岐して川に沿って伸びている Kumu 道路です。
 

 

 

        【 Hanaley の川、山、道路、海】

 

 

【 Maikai Kauai Hemolele i Ka Malie 】

 

「Ancient Hawaiian Civilization」と言う文献があります。[2]  ご存知のように、欧米

人が来訪したときの ポリネシア は石器時代に在りました。現在の文明の基礎が製鉄に

あることを考えると、非常に遅れた文明であるということはできます。しかし、人々

の生活によって作り上げられる文化を考えると、人々が幸福に暮らしていけることが

高い文化の条件であるはずです。この面から考えると、当時の ポリネシア は欧米から

見て、優れた文化を持つ国々であったわけです。そのことは、一部とは言え、祖先の

を ポリネシア の人々と共有する日本においても同様で、江戸時代の日本に対する欧米

の称賛は依然として続いています。しかし、日本と違い、太平洋の中心部で他の世界

から保護されてきた ポリネシア は、欧米人がもたらした、当時の欧米ではありふれた

伝染病で壊滅的な被害を受け、存亡の危機に直面しました。それが、ポリネシア、特

に ハワイ の人々の民族的な尊厳を貶める大きな原因となったことは事実です。ハワイ

や タヒチ の最後の王朝の動きや試みは、全て、この事実を念頭に置いてみなければな

りません。単に遅れた社会だったから欧米の支配に下ったのではありません。それを

明らかにするための様々な試みの中に、文字出現以前の文化の再評価を行う、The 

Kamehameha Schools における一連の講義が在りました。それが、この文献[2] にま

とめられています。

 

さて、その文献[2] の pp. 178-180 にある歌です。表面上はカウアイ島を讃える賛歌で

すが、それに託して男性が女性の美しさを称える ラブソング です。原歌詞と、詩を解

釈した英語訳の全文は付録 A に挙げますが、その中から Manu'akepa に関係する 9行

目から 13行目を抜き出します。日本語文は表面的な訳文で、詩としての解釈ではあり

ません。訳のための解析は付録に示しておきました。

 

 Aole a'u mea maikai ole olaila
                        私の事柄がそこで良くないということはありません。
 He makamaka ke oho o ka palai lipolipo i ka ua,
                        雨の中で、深い緑色のシダの葉は美しい
 Ke hopu aku i ke one o Mahamoku,
                        Mahamoku の砂浜で掴みかかるなら、
 Pahee i ka iimu kaha kanaka o Munakepa.
                        Munakepa の人は苔の場所で滑る
 Kapekupeku iluna ka ua o Hanalei,
                        Hanalei の雨は上向きに跳ねかかる

 

最初の行( 9行目)の「私の事柄(a'u mea)」は、それまでに述べてきた Kaua'i の

美しさを指すのだと思います。この様な否定の否定の構文は、「悪いわけではない」

という意味になるのが我々の世界ですが、ポリネシア では「比較できない良さ」とい

う積極的な評価になるようです。表面的な解釈だと散文的になるのは仕方がありませ

ん。なお、「Munakepa」とあるのは「Manu'akepa」のこと、「iimu」とあるのは

「limu」のことであると思われます。ここで、幾つかのことに注意してください。


・状況は雨の中

・Mahamoku の浜と Manu'akepa は近い位置に有る

・この状況で、雨は下から跳ね上がるようにやって来ている

 

(6/21  3行目で、「 hopu 」は捕まえる、「 aku 」は向こう側へですから、捕まえよ

うと追いかける様な状況を表しているのだと思います。そうすると、Mahamoku の砂

浜を、山の方角へ、追い上げていくと、Manu'akepa に差し掛かった所で滑り落ちて

しまい、そこを Hanalei の上向きの雨に襲われるという状況を表しているのかも知れ

ません。ただし、この解釈は付録にある英語の解釈とは一致しません。)

 

次の文献に行きましょう。

 

 

【 Hula Niau-Kani 】

 

「 Unwritten Literature of Hawai'i 」という本[4] があります。副題は「 The 

Sacred Songs of  the Hula 」です。序文ではおおよそ次にように述べています。

 

 ハワイの詩歌は伝統や民族の誇りを伝え、同時に人々の色々な思いや愛を伝えて

 人々を楽しませるものであった。そこには民族の真実の姿が描かれていました。

 しかし、昨今の フラ では踊り手の動きや仕草は必ずしも歌が伝えることと合致せ

 ず、それを歪めて、見る人を楽しませるものに堕落してしまっています。それを正

 して、本来の フラ の姿を回復するために、フラの学校で教材として使われる様々な

 歌を集めました。

 

さて、ここで取り上げる「 hula niau-kani 」は hālau(ハラウ)の伝統的な踊りの一

つで、伴奏の楽器「 niau-kani 」にちなんで名付けられたものです。この楽器は所謂

「口琴」の一種で、文献[5] によれば、竹の断片に細い棒が刺さった形の以下のような

ものです。竹の部分には細い間隙が開けてあり、細い棒を弾きながら、間隙から声を

出すとあります。細い棒の振動音が声で変調されて出て来るのでしょう。

(6/21 声を出すと書きましたが、口琴と同じ使い方を考えるなら、間隙に当てた口を

あたかも声を出すかのごとく動かすのでしょう。そうすると、口の中での共鳴と合わ

さって、声のような音になるのかも知れません。いずれにしても、この辺の使い方に

ついてはきちんと調べていません。)

 

        【 Niau-kani (文献[5] 31ページの図)】

 

この歌はこの楽器を口に当てて歌うもので、余程にハワイ語に精通していないと何を

歌っているのかはわからないのではないかと思います。

 

この歌は以下のような問答歌です。

 

kāne:               man:
E pi'i ka wai ka nahele,        Up to the streams in the wildwood,
U'ina, nakolo i na Molo-kama;    Where rush the falls Molo-kama,
Ka ua lele mawaho o Mamala-hoa. While the rain sweeps past Mamala-hoa,
He manao no ko'u e ike       I had a passion to visit
I na pua obi'a o Kupa-koili,       The forest of bloom at Koili,
I hoa kaunu no Manu'a-kepa;      To give love-caress to Manu'a,
Ua like laua me Maha-moku.    And her neighbor Maha-moku,
Anapa i ke kai o Mono-lau.     And see the waters flash at Mono-lau;
Lalau ka lima a noa ia ia la,       My hand would quiet their rage,
I hoa pili no Lani-huli.       Would sidle and touch Lani-huli.

wahine:              woman:
E huli oe i ku'u makemake,      Grant me but this one entreaty,
A loa'a i Kau-ka-opua.         We'll meet 'neath the omens above.

kāne:              man:
Elua no pua kau         Two flowers there are that bloom
A ka manao i makemake ai.    In your garden of being;
Hoohihi oe a hihi           Entwine them into a garland,
I lei kohu no neia kino.       Fit emblem and crown of our love.

wahine:             woman:
Ahea oe hiki mai?           And what the hour of your coming?

kāne:              man:
A kau ka La i na pali;        When stands the Sun o'er the pali,
Ka huli a ka makani Wai-a-ma'o,    When turns the breeze of the land,
Makemake e iki ia ka Hala-mapu-ana, To breathe the perfume of hala,
Ka wai halana i Wai-pa.         While the currents swiri at Wai-pa.

歌の大体の流れは、男が Wai-oli 川の上流から河口までの情景に乗せて自分の熱情を語

り、女がそれに答え、男が逢引を求め、女が時刻を尋ね、男が場所と時を述べる、と

いう流れになっています。第1節の 8行目の、湾に流れ込んだ Wai-oli の水がきらめき

を発している様は男の情熱のきらめきであると説明されています。逢瀬はハナレイ湾

の西側の山壁に太陽がかかる夕暮れ時と ロマンチックな頃合いですね。

 

(6/18  「Wai-pa」という名前が最後の方にあります。これは Wai-pa 川の河口から

Wai-oli 川の河口にかけての海域をさすようで、その海岸付近に hala の木の林がある

ようです。「ナニ ワレ ナ ハラ」の項で説明したように、hala の木は雌雄異株で、そ

の雌花には香気があります。なお、その歌に出てくる「Naue」は Hanalei の西隣の

「 Wainiha 」にある地名で、「 Ha'ena」という地名もその付近にあります。)

 

さて、問題は、最初に男が歌う第1節における地名です。これらは全て Wai-oli 川周辺

の事物です。文献[4] の補足を書き出します。

 

「Molokama (Na Molo-kama)」

  Namolokama 山から北側へ広がり、Wai-oli の源流を形成する広い谷の部分を指

  す地名で、ここでは特に、この谷で Wai-oli 川に現れる滝の連続を指す。

  ( 6/18 Hanalei town から山方向を見た写真の左奥に Namolokama 山がありま

  すが、どうも、この沢山の滝で流れ落ちる様子は Hanalei からはっきりと眺めら

  れるようですね。)

「Kupa-koili」

  Wai-oli 川(河口に面して)左岸、公道に近い所に有る山りんご(ohia ai)の林。
「Manu'a-kepa」

  草に覆われた砂地の牧草地、「Kupa-koili」の反対側の右岸に有る。
「Maha-moku」

  河口付近に有る砂浜で、「Manu'a-kepa」と同じ右岸にある。
「Mono-lau」

  Hanalei 湾の Wai-oli 川が注ぎ込む付近。船などの投錨海域。
「Lani-huli」

  Wai-oli 川が海に注ぎ込む前に Wai-oli 渓谷の端に曲がりこむ所

 

これらを先程の Hanalei の地図に書き込むと以下のようになります。ただし、Lani-

huli の推定地は省略してあります。

 

 
       【 Wai-oli 川周辺の歌に現れた地名】
 
Maha-moku と書かれた部分は、現在は Hanalei Beach として知られている砂浜で
す。実は、この Hanalei Beach の 5344 Weke Road と言う地所に「Mahamoku Beach
 House」という歴史的な建物が有るので、Hanalei Beach が元々は Mahamoku Beach
であったことが分かるのです。そうすると、この砂浜から少し山側へあがっていった
付近に Manu'akepa の草地が有るであろうということになります。ここでは雨の記述
がないので Manu'akepa についても滑りやすいという記述もないのでしょう。
 
以上より、Manu'akepa の大体の位置は分かりましたが、もう少し状況証拠を固めて
みましょう。次は カヒコ です。
 
(6/16  結局は、この本にかかれていた補足が決定的な情報になるのですが、この様な
情報が記録された事自体が、ハワイの伝統に背くことだったと思います。背後には幾
つかの要因が有るように思われます。一つには、ハワイが米国の准州となり、独立の
望みが立たれて民族としての危機感があったこと、もう一つにはこの本に記録されて
いる歌の採取がハワイの伝統文化を残そうという意欲に溢れた人たちによって行われ
たので、hālau の関係者がかなり協力的になっていたことがあげられると思います。
本の序文には関係者の協力を強く感謝している一文があります。現在ですと、多分、
このようなことは行われない、6/23 つまり「記録されない」と思います。)
 
【 Wai'oli 】
 
「Wai'oli」というカヒコ [6]があります。
 


 

その歌詞を [7] より引用します。

 
   Wai'oli
     by Mark Keali'i Ho'omalu
      (Kumu Mark Ho’omalu)
      Released on: 2003-04-15

‘Ae, ‘auhea wale ana ‘o     Where are you
E ka ua loku Wai’oli?       Oh heavy showers of Wai’oli?

‘Auhea wale ana ‘oe la      Where are you
E ka ua loku o Wai’oli la       Oh heavy showers of Wai’oli?
Ka Manawa pehu keia la     This is the time to swell
O ka limu o Manu’akepa la    The moss of Manu’akepa.

Hehi aku i ka wawae la     When one steps upon it
He mau ia he pahe’e na’e la     It’s moist and slippery
Holu i ka pu’u o Mahiki la      (I) slide on the grassy slopes
I ka ‘ehu kai o Makahoa l    Near the sea spray of Makahoa.

A he hoa no ‘oe no’u la        You have been made my companion
I ka welelau o ka ‘ano’i la      Drawn towards this place by desire
Ha’ina mai ka inoa la       The name will be told
Kapi’olani i ka ‘iu o luna la   Kapi’olani the supreme.

He inoa no Kapi’olani      In honor of Kapi’olani.
 
英語の説明をご覧になれば分かるように、この歌では最初に Hanalei 名物の雨、そし
て滑りやすい Manu'akepa の草原を歌い、続いて王族である Kapi'olani の名前をあげ
て敬意を表しています。ですから、この Kapi'olani を寿ぐ名前歌( mele inoa )であ
ることは明らかです。ただ、ややこしいことに、お二人の Kapi'olani がいらっしゃる
のです。お一人は、ハワイの統一王朝成立時の重要な貴族であった方と、Kalākaua 王
の皇后であった方です。この方は Kalākaua 王がなくなられた後は Kapi'olani 皇太后
として知られています。Kapi'olani 皇太后の母は Kaua'i の王族でしたし、ハワイ王朝
の Hanalei 公式訪問に二回加わって居られます。一回目は カメハメハ IV世と Emma
王妃が訪問された際に、王子の養育係として、二回目は Kalākaua 王の皇后として、
Kalākaua 王即位を祝う巡幸に付き添っています。特に、この二回目では Kaua'i 全島
で盛んな歓迎を受けたとあります。従って、ここで言う Kapi'olani とは Kalākaua 王
妃を指すものでしょう。 Kalākaua 王は hula 復興に力の有る方でしたから、或いは、
Kalākaua 王がなくなられた後に Kapi'olani 皇太后をお慰めするための歌なのかも知れ
ません。いずれにしても、「 Wai'oli 」の発表は 2003年となっていますが、過去のい
ずれかの機会に作られていた歌が元となっているように思われます。
 
この歌には地名が3つ、「 Wai'oli 」と「 Manu'akepa 」、そして「 Makahoa 」 が
出てきます。「 Wai'oli 」は今まで「 Wai-oli 」と書いてきたものでしょう。場所とし
ては、Wai-oli 川を中心とした領域を指すものだと思われます。
 
歌の2節目と3節目では、激しい雨が降って Manu'akepa の草地は滑りやすくなって
いて、足を踏み入れると、滑って、草地の凹凸に弾みながら、Makahoa の波しぶきの
中に行く、というようなことを歌っています。Makahoa は Hanalei 湾の西側を区切る
岬である Makahoa 岬として出てきていますが、ここの Makahoa は岬から湾内の波の
荒い海域を指すのだと思われます。強い北風が吹いている時には、この波の泡だった
海域の波しぶきが風に乗って、雨と一緒になって吹き上げてくるのでしょう。
 
まとめると、風雨が強い時には Manu'akepa は大変に滑りやすくなっていて、そこで
滑ると草地を滑り下って、波しぶきのまっただ中に放り出される、という状況である
ようです。そうすると、Manu'akepa の場所は上の地図に書いた辺りで良いように思
われます。面白いことに、この状況は「 Hanohano Hanalei 」に歌われている状況と
そっくり同じです。
 
  Hanohano Hanalei
    words & music by Alfred Unauna Alohikea

 Hanohano Hanalei i ka ua nui   The glory of Hanalei is its heavy rain
                   栄光ある Hanalei   大いなる雨で
 E pakika i kahi limu o Manuʻakepa Slippery seaweed of Manuʻakepa
                   よく滑る  苔の所は   Manuʻakepa の
 I laila hoʻi au i ʻike iho ai        There I felt
                   私はそこに行き  自ら見た
 I ka hana huʻi konikoni i ka ʻili   Tingling cool sensation of the skin
                   そしたら 肌がピリピリした


 Aloha kahi one o pua rose       Greetings, o sand and rose flowers
                   こんにちは、薔薇の花咲く砂浜よ
 I ka hoʻopē ʻia e ka hunakai    Drenched by sea spray
                   波しぶきに濡れそぼり
 ʻAkahi hoʻi au a ʻike i ka nani     Never have I seen such splendor
                   初めて、その美しさを知った
 Hanohano Hanalei i ka ua nui      The glory of Hanalei is its heavy rain
                   栄光ある Hanalei   大いなる雨で
 
最後に、「 Hanohano Hanalei 」の作者 Alfred Unauna Alohikea と「Wai'oli」の作者
Mark Keali'i Ho'omalu が Manu'akepa の場所を知っていたかを考えてみましょう。ま
ず、後者は Kumu Mark Ho’omalu とも書いているように、hālau 等で教える立場です
から、伝統的な事柄については口伝で伝えられていると考えて間違いないでしょう。
前者については、歌の 3行目に「I laila hoʻi au i ʻike iho ai(自ら行って見てみた)」
とありますから、誰かに教えてもらって行ってみたのでしょう。これと似た言い回し
は「 Waipiʻo Pāeaea 」の 4行目にもあります。「 I laila hoʻi au e ʻike ai(私は 知るた
めにそこに 行く)」ですね。Alfred Unauna Alohikea は Kaua'i に住んで長いはずです
が、特別に教えてもらわなければ知らなかったのです。そうすると、Kaua'i に住んで
いるから Manu'akepa の場所を知っているとはならないようです。ハワイ が多民族の
住まう地となって久しいですから、ハワイ 民族の伝承の地を守る意識は強いのかも知
れません。
【まとめ】

以上より、Manu'akepa の地のおおよその検討はついたと思われます。その範囲の、
草むした、凹凸の有る、砂地の斜面に、強い雨の降るときに足を踏み入れると、斜面
の遥か下まで滑り落ちて、海から吹き寄せる波しぶき混じりの雨にずぶ濡れになることに
なるのでしょう。そのときに、改めて Hanalei の美しさに気がつくのでしょうか。

 
 
 
【付録 A :  「Maikai Kauai Hemolele i Ka Malie」 】
 
Maikai Kauai hemolele i ka malie,
                        "Beautiful is Kauai beyond compare,
Kupu kelakela ke poo o Waialeale,
                        She sends forth a bud in the summit of Waialeale,
Keia i ka lani kilakila Kawaikini,
                        She flowers in the heights of Kawaikini,
Ka no ka helekua linohau Alakai,
                        Her strength radiates in awful splendor from the Alakai;
Maloeloe ka laau huli e mai ka pua,
                        Though I weary, though I faint, she renews my strength in her 
      soft petals:
Ke ike iho ia Maunahina.
                        I have myself beheld Maunahina!
He makai, he nani, he hemolele ke alo o Hihimanu,
                        Beautiful, serene, all surpassing, here is Hihimanu!
I ana kapuai lima ia ka nui, ka loa, ka laula, ka hene o na kuahiwi,
                        The imprint of her hand is all-embracing, far-reaching, tantalizing:
Aole a'u mea maikai ole olaila
                        For none other do I yearn; she is all that is good, none other can 
      compare.
He makamaka ke oho o ka palai lipolipo i ka ua,
                        Hear me, Light of my Eyes, as I cry—You are like a young green fern, 
      spangled with dew.
Ke hopu aku i ke one o Mahamoku,
                        I am ensnared, I can not turn in the sands of Mahamoku.
ahee i ka iimu kaha kanaka o Munakepa.
                        I slip on the seaweed, I fall; overcome is the man of Maunakepa.
Kapekupeku iluna ka ua o Hanalei,
                        Splashing upward is the rain of Hanalei,
Owala lua na hala o Haena i ka makani,
                        Brandished again are the hala of Haena by the wind,
Aole wahi hemahema o Hoohila,
                        None other is your peer, O Hoohila!
Miki ke kai miki kaupale, miki ka apo'na a ka makani,
                        As resistless as the sea, so is my desire, strong as the sucking wind.
O Keolaokalani ke'lii nona ia inoa,
                        Life-Protected by the Heavens, my heavenly one, this is your name!
Auamo iluna ke ahi o Kalalau,
                        Borne to the heights are the fires of Kalalau
I'i ka welo'na a ke ahi komo i Makuaiki,
                        You surpass the flaming torches of Mahuaiki,
Pipili mamau ke ahi hele i Kamaile
                        I cling fast, asking no return, to the flame flung from Kamaile
Miki maloo ke ahi haaheo i Napali
                        Licking up the dry brands, the proud torches of Napali,
I hooma'u wai ia ke ahi komo i Kaholanui
                        The water cools the consuming flames of Kaholanui
Kuehu ka laau me ka mamo kukupa'u ke kai o Nualdlo."
                        The brands make a cloak of shining feathers for the sea at Nualolo
 
本文で引用した 9行目から 13行目までの解析。単語の意味の内、日本文は辞書[1]よ
り、英文は オンライン辞書[3] から採りました。
 
Aole a'u mea maikai ole olaila
        'a'ole     いいえ、でない、何もない
        a'u     人称代名詞一人称単数目的格、一人称単数所有格
        mea     thing, person, matter;
        mea 'ole   insignificant, nothing
        maika'i   good, fine; handsome, beautiful
        'ole     not, without, lacking; deny
        maika'i 'ole    not good; bad
        olaila     there; that; that place
私の事柄がそこで良くないということはありません。

He makamaka ke oho o ka palai lipolipo i ka ua,
        makamaka        friend; pal; host; good, beautiful; fresh, new;
        oho     hair of the head; leaves of plants; to cy out
        palai     a native fern; to turn the face away
        lipolipo   duplication of 「lipo」
        lipo     deep blue-black as the sea; dim; a deep shady forest;
               deep water in the sea
雨の中で、深い緑色のシダの葉は美しい

Ke hopu aku i ke one o Mahamoku,
        ke     (接続詞)〜とすると
        hopu    to seize, grasp, capture
        aku     bonito or skipjack tuna(かつお), an important food;
              particle expressing direction away from the speaker
        one
        Mahamoku
Mahamoku の砂浜で掴みかかるなら、
(「ke」については他の可能性もありますが、行が カンマ で終わっていることから、
接続詞と解釈しました。)
 
Pahee i ka limu kaha kanaka o Munakepa.
        pahee   slippery; to slide, slip
        limu
        kaha    to scratch, mark; cut, slice; place
        kanaka  man, person
Munakepa の人は苔の場所で滑る

Kapekupeku iluna ka ua o Hanalei,
        kāpekupeku      reduplication of kāpeku
        kāpeku          To splash the feet in the water, as in scaring fish;
                        the person who splashes thus.
        iluna           above, up; upward; upon
Hanalei の雨は上向きに跳ねかかる
 
 
 
【参考文献】
 

[1] 西沢佑、「ハワイ語の手引」、千倉書房、2021.

 

[2] E.S Craighill Handy, et al.,  Ancient Hawaiian Civilization: A series of lectures 

  delivered at The Kamehameha Schools, revised edition. Charles E. Tuttle 

  Company, Inc., 1965. (The first edition was published in 1933 by Frank E. 

  Midkiff, the President of The Kamehameha Schools)

 

[3] Wehewehe Wikiwiki Hawaiian language dictionaries: University of Hawaii 

  System, University of Hawaii, Hilo.

 

[4] Nathaniel B. Emerson, Unwritten Literature of Hawai'i: The Sacred Songs of 

  the Hula. Mutual Publishing, 1998.  ( この原版は「Unwritten Literature of 

  Hawai'i, The Sacred Songs of the Hula. The Bureau of American Ethnology, 

  1909.」)

 

[5] 内﨑以佐美、古代ハワイ音楽(2)、大手前女子大学論集, 29, pp. 1-33, 1995.12.

 

[6] Wai'oli, YouTube マーク・ケアリイ・ホオマル - トピック channel
  (https://www.youtube.com/watch?v=mldl58D92Zo)

 

[7] Wai'oli rylics,  (https://static1.squarespace.com/static/5e7206a9f60a2d6c87f6e0b1/t/5f3ba94a7b401a5943141a4b/1597745483238/Wai%E2%80%99oli+Translation.pdf)