【はじめに】

 

「前項」で見てきました様に、トケラウ語に関しては、その独自性が強調されています。他方で、その地理的な関係、つまり、一番近い隣国サモアの「北(tokelau)」ということから、トケラウ語を サモア語に従属的な言語であると考えるのも自然です。と書いている素人カメラマンも、トケラウ語は サモア語の方言、つまり タヒチ語に対する、やはり北側に位置する トゥアモトゥ諸島の パウモトゥ言語(方言群)の位置づけであると考えていたところがあります。それで、 トケラウ語辞書 [1] にある文法概説を簡単にご紹介すれば、それが明らかになって、トケラウ語の理解が進むだろう考えたのが始まりです。もちろん、文法を網羅するとなれば、概説とはいえ、それなりの分量になりますので、幾つかの項に分けてご紹介させていただくことになります。そして、本項では、概説の 2章「語」までをご紹介することにしました。その過程で、ところが、トケラウ語が サモア語の方言であるというのは誤った見方である様に思われ始めてきています。どうも、サモア文化の歴史的変遷を考慮しなければ本当のところはわからないようです。ですから、概説をある程度まで読み通してから議論させていただきたいと思います。ともあれ、トケラウ語辞書 [1] の トケラウ語文法概説紹介は始めさせていただきます。本文の調子は文法概説の著者ロビン フーパー(Robin Hooper)さんを想定しています。

 

 

 

 

【トケラウ語文法概説: 1章から 2章】

 

この概説の目的は、トケラウ語について、専門用語を極力排した明快な解説を提供し、幅広い読者に役立ててもらうことです。言語という複雑な対象を扱う以上、専門用語を完全に避けることは不可能であり、そのため一般の読者には難解に感じられる箇所があるかもしれません。他方で、言語学の専門的な訓練を受けた読者にとっては、説明が単純化されすぎていると感じられることもあるでしょう。しかし、こうした妥協の産物である本書が、トケラウ語に関するより詳細な研究が登場するまでの間、同言語について知るための有益な情報源となれば幸いです。

 

 

「目次」

1. PRONUNCIATION 発音

1.1   The Sounds of Tokelauan トケラウ語の音声
1.2   Word Stress 語強勢

2. WORDS 語

2.1    Lexical Words and Grammatical Words 語彙語と文法語
2.2    Classes of Lexical Words 語彙語の分類
2.3    Phrases 句
2.4    Word Formation 語形成
2.5    Reduplication 畳語
2.6    Homonymy and Polysemy 同音異義と多義性

3. GRAMMATICAL WORDS WHICH OCCUR IN THE NOUN PHRASE 名詞句に現れる

  文法語

3.1    Articles 冠詞
3.2    Premodifier 前置修飾語
3.3    Postmodifiers 後置修飾語
3.4    Demonstratives 指示詞
3.5    Prepositions 前置詞
3.6    Locative Noun Phrases 場所を表す名詞句

4. PRONOUNS AND POSSESSION 代名詞と所有

4.1    The Independent Personal Pronouns 独立形人称代名詞
4.2    Short Form of Agent Pronouns 動作主代名詞の短縮形
4.3    Possessive Pronouns 所有代名詞
4.4    Possession 所有

5. GRAMMATICAL WORDS WHICH OCCUR IN THE VERB PHRASE 動詞句に現れる

  文法語

5.1    Transitive and Intransitive 他動詞と自動詞
5.2    Tense-Aspect Particles 時制-相(アスペクト)標識
5.3    The Conjunctions 「oi] and 「kae」 接続詞「oi」と「kae」
5.4    Imperatives 命令形
5.5    Negatives 否定形
5.6    Negative Imperatives 否定命令形
5.7    Premodifiers 前置修飾要素
5.8    Verb Prefixes 動詞の接頭辞
5.9    Verb Suffixes 動詞の接尾辞
5.10 Postmodifiers 後置修飾要素
5.11 Directional Particles 方向標識
5.12 The Pronoun Forms 「ai」 and 「ei」 代名詞形「ai」と「ei」
5.13 Manner Particles 様態標識
5.14 Emphatic Particles 強調の小辞
5.15 Order of Post-Verbal Particles 動詞後置小辞の順序

6. NOMINALISATIONS 名詞化

6.1    The Structure of Nominalisations 名詞化の構造
6.2    Possessor Marking in Nominalisations 名詞化における所有者の標示

7. TYPES OF SENTENCE 文の形

7.1    Verbal Sentences 動詞文
7.2    Locative Sentences 所在文
7.3    Possessive Sentences 所有文
7.4    Nominal Sentences 名詞文
7.5    Sentences in Which a Ko-Phrase Precedes the Predicate Ko句が述語に先行

   する文
7.6    Questions 疑問文
7.7    Object Incorporation 目的語の取り込み

8. SUBORDINATE CLAUSES AND COMPLEX SENTENCES 従属節と複文

8.1    Temporal Clauses 時を表す節
8.2    Conditional Clauses 条件節
8.3    Reason Clauses 理由節
8.4    Purpose Clauses and Caution Clauses 目的節と注意を促す節
8.5    Relative Clauses 関係節
8.6    Complement Clauses 補語節

 

 

 

 1. 発音
1.1 トケラウ語の音

トケラウ語には 15の音素があり、その内訳は子音が 10個、母音が 5個です。母音には長母音と短母音があり、長母音は文字の上にマクロンを付して示されます。例えば、「pā」, 「pakū」, 「mālō」の様にです。

長母音である母音に加え、本来は短母音である母音が、発話のリズムや表現上の理由から長くなることがあります。例えば、所有を表す前置詞「o」や「a」は、特定の環境下で長くなることがあります。

トケラウ語のアルファベットを、表記される順序で以下に示します。


 母音        子音
 a e i o u     f g k l m n p h t v

子音字のうち「g,  f,  h」の3つは、英語においてそれらの文字が表す音とは異なる音を表しています。

 「g」   軟口蓋鼻音(velar nasal)です。これは英語の「si[ng], sa[ng], ri[ng], i[ng] 」

     などに含まれる 「ng」 の音に相当します。

 「f」    無声唇声門摩擦音(voiceless labio-glottal fricative)です。この音は、英語

     の「w」を発音する際と同じ唇の形で発音され、声帯が同時に狭まること

     によって、「h」のような音質になります。この「h」のような音質は、後

     舌母音である 「a, o, u」の前でより顕著に現れます。

   注釈:   サモア語の「f」 は, ミルナーのサモア語辞書 [2] によれば, 無声唇歯音

      (voiceless labio-dental). 英語の「f」 は無声唇歯摩擦音(voiceless labio-

      dental fricative)です. 

 「h」   声門摩擦音(glottal fricative)です。この音は、母音「i」 および「e」 の前

     では、英語の 「h」と同じように発音されますが、後舌母音(back vowel)の

     「a, o, u」の前では口蓋化(palatalised)が起こります。これは舌が硬口蓋に

     向かって持ち上げられることによるもので、その音は「hy」のように表記

     できます。例えば、トケラウ語で「huke」は「hyuke」と発音されます。

   注釈:   サモア語では, トケラウ語の「h」に相当するものは「s」で無声歯茎硬口

      蓋摩擦音(voiceless alveo-palatal spirant). サモア語の「h」は借入語の

      みに用いられ, 発音は トケラウ語と同じです. 

 

 

1.2 語強勢

トケラウ語の単語の大部分は、1音節、2音節、または3音節からなり、3音節を超える単語のほとんどは複合語(compound)か、あるいは畳語(reduplication)です。

発話強度(stress)は複雑な問題であり、現時点では体系的な研究がなされていませんが、以下の規則を適用すれば、トケラウ語の単語の大部分において適切な強度を置くことができます。

   (i)   長母音がある場合、その母音に主強勢(main stress)が置かれる。

    pā, pakū, māhina, fānau.

  (ii ) そうでない場合は、最後から2番目の母音に強勢が置かれる。

    manu, manatu, tiute, tioa, huiga, fofou, tekau, fekei, fifio.

 (iii)   複合語や、語全体の繰り返しである全畳語(full reduplication)の場合(2.4節

   および2.5節を参照)には、複合語を構成するそれぞれの部分が、本来の強度

   を保持します。したがって、正しく強勢を置くためには、その複合語がどの

   ような構成になっているかを理解しておく必要があります。

    kiatotama, kiatomatua, pekapeka, fakamanatu.

 

 

 

2. 語


2.1 語彙語と文法語

他のあらゆる言語の語彙と同様に、トケラウ語の語も大きく2つのグループに分けることができます。その1つは、語彙語(lexical words)と呼ばれるグループであり、「家」、「魚」、「走る」、「きれいな」といった「実質的な」意味を持つ単語からなります。ここに含まれる語は「開かれたグループ」に属しています。つまり、必要に応じて、新しい語を随時追加していくことが可能なグループです。

第二の主要なグループは、文法語(grammatical words)、あるいは小辞(particle)、から構成されます。これらは語彙語を結びつけて句や文を形成するために用いられますが、単独で使われることはありません。文法語は「閉じたグループ」に分類されます。つまり、ここに新しい要素が加わることは極めて稀です。これには、「te, he」などの冠詞(article)、「ki, i」などの前置詞(prepositions)、「oi, kae」などの接続詞(conjunctions)、「na, nae」などの時制-相を表す小辞(tense-aspect particles)、さらには名詞や動詞を修飾するその他のさまざまな小辞(particle)が含まれます。この『トケラウ語文法概説』の大部分は、こうした文法語の用法を説明することに充てられます。しかし、本節では語彙語に焦点を当てましょう。

 

 

2.2 語彙語の分類

語彙語(lexical word)は、特定の文法語と結びついて句(phrase)を形成する能力に基づき、以下の5つのクラスに分類されます。

     (i) 冠詞(article)や所有代名詞(possessive pronoun)の直後に現れて名詞句を構成す

   る語は、名詞(noun)である。

     he loi       an ant,           [se loi]
     tona vaka     his canoe,       [lona va‘a]
     te malau   the soldier fish.       [le malau]

 

     注釈:   括弧 [ ・・・ ] 内は辞書 [2] より, 対応するサモア語として付加しました. 


    (ii) 時制や相を表す動詞的小辞(verbal particle)の、つまり、「kā」(未来)や「koi」

   (現在進行)等の小辞の直後に現れる語は、動詞(verb)です。


     te malau   the soldier fish.       [le malau]
     kā fano      will go,          [‘ā alu]
     koi ola    is still alive,        [‘o ola]
     kua tauale   has become ill.        [‘ua ma‘i]

   幾つかの語は、動詞として以外ではほとんど使われません。例えば、

 

     galo      be lost, disappear,    [gālo, disappear, fade]

 

   などがそうです。

 

     注釈:   動詞的小辞に続くものを動詞と定義するので, 一つの語に先行する小

        辞を動詞的と見るか, 名詞的と見るかで, その語の分類が変わる可能

        性があります. 


 (iii) 数多くの語は名詞としても動詞としても機能し得、それらは 普遍語(universal)と

  呼ばれます。

 (iv) 前置詞「i, ki, mai」の直後に冠詞を挟まずに現れる語は、場所名詞あるいは処格

  名詞(locative noun)です。これらの語は重要なグループをなし、地名や、他の事

  物との関係における位置を示す語などを含みます。

     luga     above,        [luga]
     lalo       beneath,       [lalo]
     loto      inside,            [totonu,  (loto, heart)]

  または、地理的位置


     uta       islets on far side of lagoon,     [uta]

     haute     south,          [saute]

   (v) 主に時を表す副詞からなる小さなグループがあります。前述のどの小辞も先行し

  ません。

     ananafi     yesterday,         [ananafi]
     āpō      tonight,          [pō nei]
     ātaeao       tomorrow morning,   [‘ātaeao]


英語では副詞によって表現される概念の多くが、トケラウ語では動詞によって表現されます。

 ui       although,          [e ui ina,  e ui lava]
 manū      nearly,         [manū, verbal particle]

以下に挙げるものは、その前に動詞的小辞を伴わずに現れ、副詞に分類されます。

 kamea, namea  almost, nearly,
 ailoga     doubtful,       [‘ailoga]
 


本辞書においては、普遍語の項目には、「名詞(n)」および「動詞(v)」という見出しの下に、それぞれ別個の語義解説と用例が記載されており、その語が各品詞の構成要素としてどのように用いられるかが示されています。幾つかの普遍語は、その意味から、基本的には名詞であり、二次的に動詞として使われると思われます。例えば、

 

 mahaga    twins(双子),         [māsaga]

 papa       rock,         [papa  rock,  papā  rocky]

 

対して、他のものは、基本的には動詞であると思われます。例えば、

 

 miha       quarre,        [misa  to fight, fight]

 manava    breathe,          [mānava  to breathe,  breath]


普遍語や名詞は、名詞や動詞の直後に置かれることで、修飾語(qualifier)や限定語(attributive)として機能することがあります。

 he tino lelei    a good man,        [se tagata lelei  (tino  body)]
 kai lelei     eat well,         [‘ai lelei  (lelei  good, well)]
 tane vai     water tank,      [tane  water tank]


辞書の中で、多くの項目には、「qual(ifier)」という見出しの下に、独立した用例が記載されています。これは、その語がそのような形で用いられる際にやや特別な意味を帯びるためか、あるいは、修飾語を伴う表現がその言語において重要であったり、頻繁に使われたりするためです。例として、

 

 fale koloa    house of goods = shop,   [fale‘oloa   shop]

 tala kave      carried story = rumour,   [tala  story, rumour]
 


数詞(numeral)は動詞の下位クラスであり、通常は動詞的小辞「e」の後に現れる。


 e tolu aku ika I have three fishes,    [e tolu a‘u i‘a]


数詞は修飾語としては用いられません。ですから、


 na maua nā ika e tolu they caught three fishes, [na  maua ni i'a e tolu]

 

と言うことはできますが、


 ☓  na maua nā ika tolu

 

とは言えません。ただし、特定の構文においては、数詞を名詞的に用いることができます。

 kua lava te lima     five are enough,    [‘ua lava le lima]
 kua teka te fā      it is past four o’clock,    [‘ua te‘a le fā]
 valu te limagafuapopo    great five coconuts,

 

   注釈:   サモア語,トケラウ語で tolu ~ three,  fā ~ four,  lima ~ five

 

   注釈:   数詞の部分での サモア語例文はは グーグルの サモア語変換で確認

 



2.3 句

 

話されたり、書かれたりする トケラウ語文は、句の連なりで考えられます。句(phrase)は自然な発話の単位です。話者はそれを区切りとして間を置くことはできますが、句の途中で間を置くのは不自然になります。句には二種類あります。それらは、名詞句(nominal phrase)、 例えば

 

 i te vaka lahi        in the big canoe,       [i le va‘a tele] 

 

そして、動詞句(verbal phrase)、例えば

 

 kā fano nei        will go now,      [‘ā alu nei]

 

   注釈:   サモア語で,  tele ~ big,  alu ~ go,  そして「‘ā」は「‘ole‘ā (immediate 

      future)」の省略形.

 

 

全ての名詞句や動詞句には、その句の核(nucleus)と呼ばれる語彙語、あるいは語彙語の組み合わせが含まれていなければなりません。その前、または後には、1つ以上の文法語が置かれます。上で示した語彙語や文法語の定義から明らかなように、名詞句と動詞句は、そこに現れ得る文法語の種類によって区別されます。名詞句には冠詞や所有代名詞が含まれ、前置詞が含まれることもあります。動詞句には、時制-相を表す小辞や、動詞の後に置かれる様々な小辞が含まれます。特定の状況下では、動詞が文法語を伴わず、単独で現れることもあります。例えば、もし命令であったとすれば(5.4節を参照)。

 

この段階で指摘しておく価値があるのは、4.1節で紹介する独立人称代名詞(indepen-dent personal pronoun)は、語彙語と文法語の中間的な位置を占めているということです。これらは文法語の様に閉じたグループを形成しますが、名詞と同様に、名詞句の核として機能することが出来ます。

 

新しい語彙語は、語彙的基底語(lexical base word)、あるいは語基(base)、と呼ばれる語から主に 2つの方法で形成されます。一つは、接辞(affix)を付加する方法です。つまり、「faka-, fe-」などの接頭辞を語基の前に付加したり、「-ga, -tia」などの接尾辞を語基の後に付加して新しい語を作る方法です。これによって、互いに関連しつつも異なる意味を持ったり、文法的な役割の異なる語が形成されます。

 

   注釈:   項「『Samoan Dictionary, by G.B. Milner』のまえがきを読む 5」にお

      いてサモア語の場合の ミルナー博士による語基の定義が与えられていま

      す. 一般には, 接辞が付く土台となる語彙語が語基であると思います.

 

もう一つの語の形成法は複合、つまり、2つの語彙項目を組み合わせて新しい語、複合語を作ることです。例えば、 

 

 kofu (garment) + vae (leg)    ⇒    kofuvae (trousers)    [‘ofuvae]


複合語は非常に一般的です。ある種の語には、わずかに変化した形態で数多くの複合語を作り出す基となるものがあります。例えば、「mata (eye)」は、「matā-」という形で、何かの基点またはその様な意味を持つ複合語を形成し、「vā (space between two things)」は、「vāi-」という形で、例えば「vāifale (space between two houses)」などの様な、特定の種類の空間を指す複合語を形成します。

 

   注釈:   この特別な形態で複合語を作る例は サモア語でも同様です。

 

語形成のプロセスには、生産的(productive)なものと非生産的(non-productive)なものとがあります。生産的プロセスとは、新しい語を作り出すために今も自由に用いることのできる、つまり活きているプロセスのことです。複合はこの類に含まれ、使役接頭辞「faka-」の使用もそうです。非生産的なプロセスは、それが適用できる語のグループの少数の語に限られ、個別に学習しなければ分かりません。そのような語は、辞書に列挙されています。

 

生産的な語形成プロセスに関しては、本辞書では次の方針を採用しています。

 

 複合語(compound)

 

   本辞書には多くの複合語が収録されています。特に、日常的に用いられ、トケ

   ラウの生活において重要な事物、活動、或いは概念を表すものが含まれます。


     logotonu      refreshing,        [mālū] 

     āmiovalea   foolishness,      [āmiovalea] 

     lomituhi    typewriter,        [lomitusi]

 

 

 接頭辞「faka-」

 

   この接頭辞は、後述の 5.8.1節にもあるように、事実上あらゆる自動詞に付加す

   ることができます。多くの場合、その意味は完全に予測可能です。

 

     kukula     red          fakakukula    cause to become red

 

      注釈:   「kukula」に対応するサモア語は「‘ula」ですが、「fa‘a‘ula」が

         存在するかは不明です。

 

   その場合には、その言葉は辞書に載っていません。しかし、場合によっては、

   「faka-」を冠した語が、その語の基となる単語の意味や接頭辞の意味から推測

   できない特殊な意味を持つことがあります。例えば、


     fiti       bounce, jump     fakafiti     deny       [fa‘afiti]


   そのような言葉は辞書に含まれています。単語に予測可能な意味と予測不可能

   な意味の両方がある場合には、辞書の項目に最初に予測可能な意味が示され、

   次に予測不可能な意味が示されます。その様な例は「fakamāfanafana」です。

 

接頭辞「faka-, ma(ā)-, fe, ta-」や接尾辞「-aki, -fia, -lia, -tia」などは動詞句の節で説明します。名詞化接尾語「-ga」については名詞化の節で説明します。この節の残りの部分では、非常に生産的な重複のプロセスについて説明します。

 

      注釈:   音節を繰り返す(重複)ことにより作られた語を畳語(reduplication)

         と呼ぶことにします。

 


 

2.5 畳語 (reduplication)

部分的畳語(partial reduplication)では、語基の最後から2番目の音節が繰り返されます。

 nofo       sit,         nonofo     (plural),      [nofo, nonofo]     

 galue     work,       gālulue     (plural),      [galue, gālulue]

全畳語(full reduplication)では、語基の2音節が繰り返されます。

 ilo        asort, perceive  iloilo      examine,    [ilo, iloilo]

 kata    laugh,      katakata      smile,       [‘ata, ‘ata‘ata]

語が2音節を超える長さの場合、余分な音節は過去に接辞であった場合が一般的です。そうした部分は、繰返しの対象にはなりません。

 havili     wind,        hāvilivili   increase (wind),    [savili, (none)]

 poloaki    send a word,    polopoloaki  educate,     [poloa‘i, (none )]

語の第1母音の長音化は、上の「hāvilivili」や「gālulue」に見られるように、しばしば畳語の生成と結びついています。

 

どちらの種類の畳語でも、常に同じ意味になるとは限りません。例えば、自動詞に対する部分的畳語は、その複数形を形成します。

 nofo       sit,         nonofo     (plural),      [nofo, nonofo]
 tele     sail,       tetele     (plural),      [folau, (none)]
 kai       eat,        kakai      (plural),      [‘ai,  ‘a‘ai ]

 

      注釈:   サモア語においては「tele(big)」です. タヒチ語の「forau」と, 

          ハワイ語の「holau」は共に カヌーの格納庫を意味します. 

他動詞の場合には、しかし、部分的畳語が単数形を意味することもこともあります。

 koto    bite (some),    kokoto      bite (one),     [‘ati,  ‘a‘ati ]
 hele     cut (some),     hehele      cut (one),   ( 5.8.3節).

 

      注釈:   サモア語辞書 [2] には単数/複数の別は明示してありませんが, 用例

         から「‘ati,  ‘a‘ati」は「koto, kokoto」に対応するようです.

 

      注釈:   サモア語辞書 [2] では「sele (cut)」が基本, 複数形は接尾辞「-i」

         を付加した「selei (cut, plural)」です. これとは別に「‘oti (cut)」

         もあり, その複数形が「‘o‘oti (cut, plural)」です.

畳語に一般的に結びつくその他の意味としては、頻繁な動作や繰り返される動作、継続的で長引く動作、あるいは、より強制的で強烈な動作や、逆に弱められた動作などが挙げられます。名詞に対する全畳語は通常、より小さなものを指します。


 holo    towel,      holoholo    handkerchief,     [solo,  solosolo]

畳語の典型的な例を以下に挙げます。ただし、「s.th. ~ something」です。

 

 fiti        jump,       fifiti       be active,
 tili        do s.th. urgent,  titili       spend all one's time on s.th. urgent,
 halu    sweep,        hahalu     sweep forcefully, in one movement,
                haluhalu     sweep slowly and gently,

 fotu     bloom,        fofotu      bloom in abundance,
 alo       paddle,       aloalo      paddle continuously,
 kalapu      gleam,         kalapulapu  glitter, twinkle,
 logo    tell, inform,   logologo   tell everyone, one by one,
 tafu     build a fire,    tafutafu    add fuel a little at a time,
 gako      animal fat,      gagako      be fatty,

 

  注釈:   サモア語に対応する畳語を求めると, 意味が違っていたり, 微妙に違ってい

     たりしますから, 以下にまとめます. ただし, 「fqv. ~ frequentive」です.

 

   <fiti>     「fiti (flick)」であり「oso (jump)」です. 

   <tili>     「tili (hurry,  run for one's life)」と両方の意味があります.]
   <halu>  「salu (sweep)」に対し「sasalu (drag one's feet on the ground)」

        そして「salusalu (fqv. sweep)」です.
   <fotu>  「fotu (appear, blossom out)」以外は見つけられません. 
   <alo>    「alo (paddle)」に対し「aloalo (fan, 扇ぐ)」です.
   <kalapu>   「‘ila (twinkle)」に対し「‘ila‘ila (glitter)」です.
   <logo>     「logo (perceive, tell)」に対し「logologo  (fqv. tell inform)」です.
   <tafu>  「tafu (burn)」に対し「tāfutafu (limelight)」です.
   <gako>   「ga‘o (fat, lard)」に対し「ga‘oa (be fatty, 脂ぎる)」です.

 

 

 

2.6 同音異義語と多義性

 

二つの語、それらの形、すなわち、発音と綴りは同じでありながら、意味が異なり、互いに関連性のないものどうしは、同音異義語(homonym)と呼ばれます。同音異義語の例として、「kafa」と「kafa」いう二つの異なる語が挙げられます。一つは魚の一種、ボラ科の魚を指し、もう一つは センニトと呼ばれる ココヤシの殻の繊維を編んで作った組紐を指します。ポリネシアの諸言語には、非常に多くの同音異義語が存在します。本辞書では、同音異義語をそれぞれ別々の項目として記載します。
 

      注釈:   サモア語では「‘afa (coir sennit)」, 「‘afa (fish)」, 「‘afa (half)」.

 

複数の異なる意味を持ち、それらすべてが何らかの基本的な中心的な意味に関連していると感じられる語は、多義的(polysemous)」であると言われます。多義語(poly-semous word)のそれぞれの意味は、番号が振られた上で、一つの見出し語の下に列挙されます。

 

しかし、個々のケースにおいて、それが同音異義性(homonymy)なのか多義性(poly-semy)なのかを判断することは、往々にして非常に困難です。歴史的には一つの多義的語における異なる意味であったものが、意味的に大きく乖離してしまい、話し手がもはやそれらの間に何らかの関連性があるとは感じられなくなる場合があります。それは、話し手によって判断が異なることもあります。ですから、本辞書には、読者によっては「判断が誤っている」と感じられるような箇所が少なからず存在するでしょう。時には、純粋に実用的な理由から、すなわち、辞典を引きやすくするため、あるいは、どの意味同士をまとめるべきかの判断が困難であったために、別々の項目として記載するという判断を下すこともあります。その一例が、「tali」に関する6つの項目です。

 

      注釈:   サモア語の辞書 [2] でも「tali」には動詞として四つあります. 

 

 

 

 

【トケラウの踊り: Haoloto】

 

ポリネシアン グランドステージ 未来〜Hau'Oli(ハウオリ )に「Haoloto」という踊りがありました。サモアの部にありましたのでサモア語の歌かと思っていたのですが、サモア語には「h」はありませんから、トケラウ語の歌であることが、どうやら、分かりました。最初の頃、 2022年 11月 30日の舞台のスナップをご紹介します。次に引用するのは、歌の最後の行です。

 

    te hihiva o te haoloto

 

ここで、「te 」は単数定冠詞、「hihiva」は動詞「hiva (踊る)」の複数形、「o」は帰属、そして「 haoloto (自由)」です。動詞に定冠詞が付いて名詞句となり、「自由の踊り」という意味になるのかと思います。しかし、複数形の動詞「hihiva」に単数の定冠詞が付いていますので、一つの仮説ですが、動詞の主語に当たるものが複数であるとして、「皆で踊る自由の踊り」ということなのかも知れません。トケラウ語文法概説には、まだまだ、先がありますので、これからです。

 

 

<te hihiva o te haoloto>

 

<te hihiva o te haoloto>

 

<te hihiva o te haoloto>

 

 

 

 

 

【おわりに】

 

 

[1] Tokelauan Language Dictionary 1986

 

[2] G.B. Milner,  Samoan Dictionary, Samoan-English, Eglish-Samon. Government
  of Samoa, 1966.