夏は、 | 曽川沙也伽

曽川沙也伽

記憶と感情を創っては吐いてるだけ。






ジメジメと静かな夜がやって来て
手元で光る様々な色の物体を見て
もうとっくに夏はきているのに
「夏がきたね。」と言う

シャリシャリというギターの音が
鼓膜にこびりついた記憶を振動と共に揺らしていく
王道のコード進行と使い古された言葉たち
全部全部流れてしまった
よかったなあ、と安心した。

息を吸えばいろんな夏が入ってきた
くだらないけど幸せを願ったこともあった。
不思議なことにすっかりと笑える。



エメラルドグリーンみたいな空と
オレンジ色のライトは
どこにもない夏だった
よかったなあ、と安心した。



ぽっかりと空いた穴に
月の明かりが照らすけれど
暗すぎてそれが深い穴なのかどうかなんて
誰も考えることはなかった

誰も知らないよ、誰もわからないよ
自分が一番かわいい。

可笑しいねって。
あの言葉もあの言葉も嘘じゃなかったのに
変わってしまうと嘘になるねって。


季節に喰われる感覚を
過敏に意識しては
同じことを繰り返してたけど
出来ればもうそれはこりごりだな、と思ってる。

誰のことも願いたくない、奪いたくない。
誰かに傷付けられたり傷付いたり
散々じゃないか、と言ってるのが聞こえる。



飽々するなあ、
と思いながら今日も呪いのような1ページを見てる

解けるかわからないまま、考えてる。

ぜんぶお伽噺ならよかったのに、と少しだけ思ってる
もう味のしないガムは噛まなくても良いのに。

そう思いながら新しい味を噛み締めてる。





いつだって記憶していたいのは私だけだったみたいだ。