意訳のつくり方 【 言葉の言い換え 】

 

 

 

 

西洋の文化と日本の文化には大きな隔たりが存在しているため、辞書の言葉通りに直訳で訳してしまうと自然な日本語にはならない場合が多いです。そのため、翻訳者は原文の内容を理解した上で自然な日本語になるように言葉の言い換えをして訳文を作成する必要があります。

 

 

 

 

 

【 例題 1 】 【 Made In Heaven 】

 

QUEEN

Made In Heaven

天国で生まれ変われ

 

 

I’m taking my ride with destiny.

僕は運命と共に 箱舟に乗っています

 

Willing to play my part.

役目を果たし 感極まっています

 

Living with painful memories.

辛い記憶を抱えながら 天寿を全うしました

 

Loving with all my heart.

心の底から 人生の全てを愛することができました

 

 

【 QUEEN Made In Heaven 】

【 Made In Heavenからの引用 】

 

 

【 解 説 】 抽象的な表現を具体的な表現に言い換える

 

一行目の【 my ride 】は直訳すると【 私の 乗り物 】ですが、洋楽では抽象的で曖昧な表現が好まれる傾向がありますので、【 誰が 】【 どこへ向かうための 】【 どんな乗り物 】なのかを文脈の中から読み取り、その意味を反映させた訳文を作成しないと、洋楽ファンの皆様には原文のメッセージを伝えられません。

 

この文脈の場合は、【 フレディ・マーキュリーさんが 】【 天国へ向かうための 】【 乗り物 】ですので、【 箱舟 】あたりが分かりやすいのではないでしょうか?

 

 

この曲のタイトルである【 Made in Heaven 】は、どうやって訳せばよいのかと言いますと【 語学力( 単語や慣用句の理解 ) 】から訳すのではなく、【 文章読解力( 原文の内容に対しての理解 ) 】から訳すことが大切です。

 

何故なら西洋の言語における、それぞれの単語や慣用句の表現というのは、その言葉と隣接する文章との関連性によって適切なニュアンスが決定するからです。対象となる言葉の表現と密接に関係している隣接する文章が理解できていない状態で訳したとしても、何の根拠もない訳文になりがちです。

 

【 Made in heaven 】の表現を辞書の言葉通りに直訳しただけでは、【 天国の中で創られる・創造される 】という意味にしかなりません。そういう場合は【 何故( Why ) 】【 誰が( Who ) 】【 いつ( When ) 】【 どこで( Where ) 】【 どうやって( How ) 】【 何のために( What ) 】の疑問に対する答えを導き出せば、直訳では訳せなかった表現が訳せるようになります。

 

【 Why 】 【 この世界にいつまで経っても平和が訪れないから 】

【 Who 】 【 フレディ・マーキュリーさんが 】

【 What When How 】 【 来世で 神様や女神の力によって この世界の来世を平和に導くために 】

【 How When Where 】 【 天国の中で新しい生命を与えられて 創造される 】

ですので【 Made in heaven 】【 天国で生まれ変われ 】と訳せます。

 

 

 

 

 

【 例題 2 】 【 No One But You 】

 

QUEEN

No One But You

キミのことを忘れない

 

 

One by one.

一人 また一人

 

Only the good die young.

早死にするのは イイ奴ばかり

 

They’re only flyin’ too close to the sun.

彼等は あの太陽に近づきすぎて飛んでいただけ

 

We’ll remember.

僕たちは忘れない

 

Forever.

永遠に

 

 

【 QUEEN Greatest Hits Ⅲ 】

【 No One But You からの引用 】

 

 

【 解 説 】 原文の肯定文を訳文では否定文に言い換える

 

四行目の【 We’ll remember. 】は直訳すると【 僕たちは 覚えている 】ですが、西洋と日本の間には大きな文化の壁が存在するため、日本語としては馴染みのない表現になりがちです。

 

この文脈の場合は、【 早死にしてしまったフレディー・マーキュリーさんの存在を 僕たちはいつまでも覚えている 】ということを表現していますので、自然な日本語として表現するためには肯定文の原文を否定文の訳文として表現したほうがいいのではないでしょうか?

 

【 We’ll remember. 】【 僕たちは忘れない 】【 早死にしてしまったフレディー・マーキュリーさんの存在を 僕たちはいつまでも忘れない 】

 

 

 

 

 

【 例題 3 】 【 Bad Habit 】

 

THE OFFSPRING

Bad Habit

悪いクセ

 

 

Well they say the road’s a dangerous place ! !

よく言われていることだが 道路とは危険な場所!!

 

If you flip me off I’m the danger you’ll face ! !

テメーが反論すると オレはテメーの脅威となる!!

 

You drive on my ass ! !

テメーは オレの機嫌を運転することになる!!

 

Your foot’s on the gas ! !

今 テメーの足は オレの怒りの蒸気の上だ!!

 

And your next breach is your last ! !

そして次の違反が テメーの最期だ!!

 

‘Cause I got a bad habit ! !

オレの悪い癖を恨むんだな!!

 

 

【 THE OFFSPRING SMASH 】

【 Bad Habit からの引用 】

 

 

【 解 説 】 原文の能動態を訳文では受動態に言い換える

 

一行目の【 Well they say. 】は直訳すると【 彼等はよく言う 】ですが、このとき、【 they 】で表現されているキャラクターが【 不特定多数の人々 】である場合、日本では、【 不特定多数の人々に よく言われている 】と表現しますので、【 Well they say. 】=【 不特定多数の人々は よく言うが 】と能動態の表現で訳すよりも、【 不特定多数の人々に よく言われているが 】と受動態の表現で訳したほうが、自然な日本語として表現できます。

 

 

 

 

 

【 例題 4 】 【 Now I Here 】

 

QUEEN

Now I Here

今 俺はここに

 

 

Ooh, Whatever came of ? You and me.

Ooh, 何が起こったんだ? 君と俺の間に…

 

America’s new bride to be.

アメリカの新兵器がやって来たのよ

 

Ooh, Don’t worry, Baby, I’m safe and sound.

Ooh, 心配はしないで Baby. 俺は無事に帰還したよ

 

Down in the dungeon just peaches and me.

この迷宮の中に降り立ったばかりの美女と俺が…

 

 

 

 

【 QUEEN Sheer Heart Attack 】

【 Now I Here からの引用 】

 

 

【 解 説 】 慣用句・専門用語・方言の意味のほうを訳文として採用する

 

二行目の【 new bride. 】は直訳すると【 新しい 花嫁 】ですが、実はこの表現、軍隊用語の一つです。

慣用句や専門用語、方言などの表現は直訳で訳すのではなく、その言葉の意味のほうを訳文として採用する必要があります。

 

この表現には、【 戦場に初めて投入される新兵器( 処女コード ) 】という意味がありますので、【 new bride. 】【 新兵器 】あたりの訳文が妥当かな? と思います。

 

 

 

 

 

【 例題 5 】 【 Mad The Swine 】

 

QUEEN

Mad The Swine

崇高な存在

 

 

They call me Mad The Swine.

私は 人類に崇高な存在と呼ばれる存在

 

I’m Mad The Swine.

私こそ 崇高な存在

 

I’ve come to save you,

私は キミ達を救いにやって来た

 

Save you.

キミ達を救おう

 

 

Mad The Swine.

崇高な存在

 

Mad The Swine.

崇高な存在

 

So all you people gather around.

この世界の尊い子供たちを世界中から集めよう

 

Hold out your hands and praise the Lord.

キミ達の両手を広げて 主を讃えよう

 

 

 

【 QUEEN デビューアルバム QUEEN 】

【 Mad The Swine からの引用 】

 

 

【 解 説 】 オリジナルの表現を原文の内容を理解して、適切なニュアンスに変更して訳す

 

その文章の書き手本人のオリジナルの表現というのは、どんなに辞書で調べ物をしたとしても、どんな文献の資料を読み漁ったとしても、その言葉の意味はどこにも記載されていませんので、その文章の書き手本人のオリジナルの表現は、原文の中でどういうニュアンスで使用されているのかを理解して、自然な日本語に変更して訳す必要があります。

 

英語の慣用句には【 When pigs fly 】=【 絶対にありえない 】という表現があります。

【 When pigs fly 】を直訳すると【 ブタが空を飛ぶとき 】となりますが、おそらくこの表現にインスピレーションを得て作った表現が【 Mad The Swine 】なのではないのかな? と勝手に思っています。

 

【 Mad The Swine 】を直訳すると【 その狂った白鳥 】となりますが、この曲の中では神様を讃える表現として使用されていましたので、【 Mad The Swine 】【 偉大なる存在 】【 崇高な存在 】【 神々しい存在 】あたりの訳文が妥当なのではないでしょうか?

 

 

それから洋楽和訳においては、Web検索とか調べ物とかの手段はあまり有効な手段であるとは言えません。洋楽の歌詞というのは他の人とは異なる表現で文章を構成しているからこそ、魅力的な曲だと思われているため、歌詞の中に含まれている見たこともない表現というのは、だいたいがそのミュージシャン特有の比喩表現であったり、オリジナルの表現であるため、調べ物をしたからといって、求めている答えに辿りつけるというわけではありません。しっかりと原文と真剣に向き合い、理解できた内容を自然な日本語になるように言葉の言い換えをしなくては訳文の読み手に原文のメッセージは届けられません。洋楽和訳において調べ物に夢中になっている時間というのは、実はタダの時間の無駄に終わることのほうが多いです。原文の内容を理解しようとする意識のほうが遥かに重要です!

 

 

 

 

 

【 例題 6 】 その他色々

 

実は西洋の言語というのは、日本語のようにより細かな状況を詳しく説明することに特化している言語ではありません。日本語には漢字の概念があり、【 火 】【 水 】【 雷 】【 氷 】【 地 】【 風 】を表す言葉も多種多様で、ここに書き込めないくらい存在しています。そのため外国語を日本語に翻訳する場合は、その対象となる言葉がどんなニュアンスで使用されているのかを理解して、具体的な日本語で表現してあげれば、より読み手に伝わりやすい訳文として表現することができます。

 

では実際にどうやってそういう訳文を作成すればいいのかと言いますと、まずは機械翻訳か辞書の言葉通りに原文を訳します。その後、【 その対象となる言葉 】+【 類義語 】でインターネットで検索してみて下さい。その検索結果から、原文に近しいニュアンスの言葉を選択すればイイわけです。

 

 

例えば、【 Steal 】=【 盗む 】という言葉を翻訳しようとしていたとします。

この表現をさらに具体的な日本語に翻訳するために、インターネットで類義語を検索します。

 

そうすると、【 盗む 】の類義語

【 奪取する 】【 強奪する 】【 窃盗する 】【 泥棒する 】【 頂戴する 】【 ネコババする 】【 搾取する 】などの検索結果がヒットします。

 

このとき、どの表現で訳すのかは、その文脈のニュアンスに近しい表現であることの他に、対象となる言葉と隣接する文章とこの動詞を使用しているキャラクターの性格に合わせることが重要になります。

 

【 キャラクター 】

【 支配者 】=【 ( 他者の人生を ) 搾取する ( Steal ) 】

【 忍 者 】=【 ( 悪党の命を ) 頂戴する ( Steal ) 】

【 銀行強盗 】=【 ( 銀行のお金を ) 強奪する・窃盗する ( Steal ) 】

【 オジサン 】=【 ( 妻のへそくりを ) ネコババする ( Steal ) 】

 

 

他の動詞でも同じですし、名詞とか形容詞とかでも同じです。

より具体的で自然な訳文として文章を表現してみたいときは、インターネットで類義語を調べてみて下さい。自分の頭にはなかった言葉が次から次へとヒットします。

 

この方法を使用すれば、語彙力が数段跳ね上がります!

ぜひ参考にしてみて下さい (*´▽`*)

 

 

 

 

 

 

 

実は、この言葉の言い換えをどうするのかが洋楽和訳の最大の魅力になっています!

皆様なりの自由な発想で訳文を表現することこそ、翻訳者としての腕の見せどころです!!

 

 

 

 

 

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