ザ、上京物語 -5ページ目

第3話 興奮

新宿につくと、パチンコ屋に行く幸一達と別れ、面接予定の歌舞伎町にある居酒屋にむかった。

「こんばんわー。」

奥から店長らしき人が慌てて出てきた。

「店ならもう少しまっててください。」

「あ、あのー面接にきたんですが。」

「そうだ。そうだ。ごめん。すっかり忘れちゃってたよ。店長の高田です。座って座って。」と苦笑いをして彼はいった。

僕は履歴書を渡し、椅子に座った。

「そうかー君は受験生なんだー。大変だけど、大丈夫か?」と店長

「大丈夫です。去年もある程度がんばったんで。それより、予備校の学費が必要なんで。」

「そうかー。うちは今人足りてないからすぐ採用OKだけど、飯もこまったらいつでも賄い食いにこいよ。」


正直東京という所に、あまりいいイメージがなかったのでやさしい人がいるんだなーと、心から嬉しかった。


「ありがとうございます。週4日ぐらいでシフトにいれてください。」

「おー始めるまえからやる気だなー。言っておくけど週末は忙しいから覚悟しとけよ。」

と、店長はやさしく微笑みを浮かべた。

「高校時代はバスケで鍛えてたので自信あります。」と、自分も意気込みをみせた。

「じゃ、早速けんじ明日からシフト入ってもらうけど大丈夫か?」

「はい。がんばります!」

そう店長と握手をして、店をでた。


長野に住んでた頃よくきていた新宿。相変わらず人が多い。でもなんか、自分もその中の一人になった気がした。


不思議な感覚だが、歌舞伎町のネオンが自分を応援してくれている。春のなま暖かい風が心地よかった。東京生活に不安がないといったら嘘になる。

でも、予備校にも友達もできたし、バイトもうまく決まった。あとは勉強をがんばるだけだ。と家路についた。


家に帰り、たばこに火をつけ、長野に残してきた彼女のかなと電話をした。

かなは相変わらずだ。人の話をあまり聞かない。自分の話ばかり。受験のこと。友達の話。

東京の事。

かなとは、1年前から付き合い始めた。同じ高校の1つ下。同じバスケ部でとそんな感じのどこにでもある出会い。背が小さく、笑顔のかわいい、気の強いけどやさしい子。

告白も向こうからだった。受験勉強の時、かなには本当に支えてもらった。

「ねぇけんじ聞いてるの?」とそんなにも大きな声で言わなくてもという電話越しの声。

「聞いてる。聞いてるよ。」

「来週の日曜日かな東京に行くから。けんじ向かいにきてよ。それで、かな渋谷で買い物したいから付き合ってね。」相変わらず強引だ。

「おう、待ってるよ。」

そのあと30分ぐらい電話をして切った。


俺は、参考書を手に取り、勉強をはじめた。


なんか長いようで短い、1日だった。窓の外を流れる神田川のせせらぎがとても居心地よく感じた。