法鉄の世界 ~突撃インタビュー! 鉄道会社の法務部門の人って、どんなお仕事をしているの? | いくつ知ってる?法律トリビア【第一法規】

いくつ知ってる?法律トリビア【第一法規】

このブログでは、第一法規が、日常生活ですぐに役立つ…とは限らない法律のトリビアを発掘していきます!

 

こんにちは、第一法規「法律トリビア」ブログ編集担当ですカナヘイピスケ

 

法律という切り口から鉄道の世界を探る、法鉄シリーズ

 


  電車新幹線 法鉄記事の一覧はこちら ⇒ 「法鉄」の世界 ~ 記事まとめ 新幹線電車



これまで、法鉄の記事を書きながら、

いつか法鉄の『現場』を見たい!

と思っていました。
そして、

法鉄の『現場』って、一体どこなんだろう…?

とあれこれ考えた末、

鉄道会社の法務部門が、最強の『現場』なのでは?

と思い至りました。

というわけで、鉄道会社の法務部門の方に、どんなお仕事をしているのか、

 

突撃インタビューを敢行しました!


今回、ある鉄道会社で法務のお仕事をしている方お二人が、

匿名を条件にインタビューに応じてくださいました。

ここでは、法律のお話らしく、甲さん、乙さんとお呼びすることにします。

それでは、法鉄の現場へどうぞ!
 


○主な業務は、コンプライアンスと契約書

――――― 鉄道会社の法務の方は、どんなお仕事をされているのですか。

(甲さん)
私の勤めている会社では、法務部門の主な業務は、

 

内部のコンプライアンス維持と社員教育、契約書のチェックなどです。

鉄道分野以外の企業とあまり変わらないと思います。


――――― どのような内容の契約が多いですか。

(乙さん)
工事の発注が多いですね。また、設備の保守契約もあります。
そのほか、売買契約としては、電車の部品を買ったり、

線路・枕木などを買ったりする契約があります。



〇どんな物を購入しているの?

――――― 枕木も契約を結んで購入するのですね! 

当ブログでは、「関税定率法」をよく取り上げているのですが、

その中で、枕木が、防腐剤がしみこませてあるかどうかで分類されていて興味深かったので、

ご紹介したことがあります。(「法鉄」の世界 ~法律に登場する鉄道関係の物品あれこれ

(乙さん)
当社では、枕木はすべて国内のメーカーのものを購入しています。

PC枕木(コンクリート製の枕木)、合成枕木(ガラス繊維等を使った枕木)

といったものを購入します。
木は劣化が早いので、本線には木製の枕木は使わず、PC枕木を使います。

車両基地では、車両がゆっくり走るので、木製の枕木を使っている場所もあります。

――――― 枕木の種類と使われ方について、

具体的に知ることができる日が来るとは思いませんでした! 

では次に、電車の部品は、どのような物を購入することが多いのですか?

(乙さん)
電車の部品の購入契約は、一年の中で定期的に案件が来るのですが、

ブレーキの部品の購入が多いですね。そのほか、パンタグラフの購入契約もあります。

――――― 契約内容から鉄道会社らしさがうかがえて、興味深いです。


〇著作権関係や、テナントとの契約も

――――― そのほかには、どんな契約書の審査がありますか。

(乙さん)
継続的に取引をする業者との間では、基本契約というものを結んでいるので、

それをチェックすることがあります。調査の委託契約であるとか、工事の契約などです。
そのほかには、電車のロゴマークの使用許諾や、

高架下の商業施設に出店しようとするテナントさんとの契約もあります。


〇利用客とのトラブル案件も

――――― お仕事では、どんな法律を扱っていますか。

(甲さん)
仕事で参照する法律は、「民法」や「商法」が多いですね。


――――― どんな場合に、法律を参照されるのですか。

(甲さん)
駅で、お客様とのトラブルがあったときが多いです。

事例は少ないですが、駅員が暴力を振るわれてケガを負うこともあります。
そのほか、エスカレーターにお客様の荷物が挟まり、駅員が取り除いたら鞄が壊れたとか、

お客様が、他のお客様の吐いた物で滑ってケガをしたとか、

お客様が酔ってガラスを割ったとか、様々なケースがあります。
相手との交渉ですんなり決着がつけばよいのですが、そうならないこともあります。


――――― そのほかには、どんな法律を参照しますか。

(甲さん)
先ほどお話しした、電車のロゴマークの使用許諾など、

知的財産権にかかわる事項の場合は、「商標法」や「著作権法」を見ることもあります。
また、「建設業法」を見ることもあります。

工事の発注前に契約を結ぶときには、建設業法を確認することがあります。


――――― 鉄道事業法など、鉄道事業について定めた法律は、お仕事で使いますか。

(甲さん)
鉄道会社であっても、法務部門は、一般に企業の法務部門が取り扱うような、

契約書のチェックであるとか、コンプライアンスに関する業務を担当しています。
鉄道事業に特有の法令については、むしろ、原課である旅客担当の部署や、

車両の運転を担当する部署が、参照しています。


〇SNS時代ならではの社員研修

――――― 社員研修もしているとのことですが、どのような内容の研修ですか。

(甲さん)
新入社員研修や、社員が昇進した場合の研修を、年3回実施しています。
昇進すると、後輩の指導や、組織のマネジメントを担当するようになりますから、

その機会に、コンプライアンスを順守することの大切さや、

パワハラ・セクハラなどのハラスメント対策、

また薬物使用の怖さ・重大性などについて学んでもらっています。
また、軽い気持ちで不用意な行動をすると、SNSが発達した現代は、

行動した内容がすぐに社名とともに拡散され、大変なことになってしまいますから、

しっかり学んでもらう必要があります。
それに、SNSで不用意なことを書き込んだりすることのないように、

不用意な行動が重大な問題を引き起こす可能性があることも教育しています。


〇多くの部署を支える仕事

――――― 読者の方に、鉄道会社の法務のお仕事について、PRをお願いいたします。

鉄道会社の法務部門は地味な仕事が多く、表に出ることはあまりないのですが、

社内の色々な部署に対して、地道にアドバイスをしています。
調べて、チェックして、アドバイスして、社員教育も地道にやっています。
華々しいことはありませんが、色々なアドバイスをして、それが相手の業務に役立つと、

よかったなあと思います。


――――― 貴重なお話、ありがとうございました。



いかがでしたでしょうか。

電車の部品や枕木の購入契約を結ぶとは、鉄道会社ならではですね。
それから、駅での乗客とのトラブル解決や、高架下の商業施設のテナント契約というのも、

鉄道会社の法務ならではの案件ですね。
「法鉄」を仕事にしたいな、と思っている方にとっては、

たまらないお仕事かもしれませんよ!


(この記事は、2019年2月14日時点の法令情報に基づいています)

 

 

 

 

↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑↑

 

いかがでしたでしょうか。

ブログ本『法律って意外とおもしろい 法律トリビア大集合』もぜひご覧ください!


法律って意外とおもしろい 法律トリビア大集合

 

是非、次回もお楽しみにつながるうさぎつながる花1