いくつ知ってる?法律トリビア【第一法規】

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こんにちは、第一法規「法律トリビア」ブログ編集担当ですカナヘイピスケ

 

「刑法」には、どんな犯罪をしたらどんな刑が科されるかが定められています。

例えば、物を盗むと「窃盗罪」となりますが、

窃盗罪については刑法に次のような規定が置かれています。
 

刑法(明治40年法律第45号)
(窃盗)
 第235条
  他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし、10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。


一度犯罪とされた行為が、犯罪でなくなるということはあまりなさそうな気がしますが、

刑法を見ていると、削除された条文がいくつかあります。


では、現在の刑法の中で、「削除」と書かれている条を見てみましょう。
 

刑法
 第2条第1号 削除
 第40条 削除
 第55条 削除
 第58条 削除
 第73条から第76条まで 削除
 第83条から第86条まで 削除
 第89条 削除
 第90条及び第91条 削除
 第131条 削除
 第183条 削除
 第200条 削除


結構たくさんありますね。

ということは、かつては犯罪とされていた行為が、

現在は犯罪ではなくなったということなのでしょうか?

刑法で「削除」とされている条に、もともと何が書かれていたのか、見てみましょう。


○皇室に対する罪

刑法の「第二編 罪」には、犯罪が列挙されていますが、

その冒頭は以下のようになっています。
 

刑法
 第二編 罪
 第一章 削除
 第73条から第76条まで 削除


このように、いきなり冒頭の四つの条が「削除」となっています。

これは昭和22年の改正により削除されたものですが、

もともとは皇室に対する罪が規定されていました。

削除される前の条文を見てみましょう。
 

刑法〔※昭和22年改正前の条文〕
 第73条

  天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ危害ヲ加ヘ又ハ加ヘントシタル者ハ死刑ニ処ス
 
 第74条第1項
  天皇、太皇太后、皇太后、皇后、皇太子又ハ皇太孫ニ対シ不敬ノ行為アリタル者ハ3月以上5年以下ノ懲役ニ処ス

 第2項

  神宮又ハ皇陵ニ対シ不敬ノ行為アリタル者亦同シ

 

第73条と第74条には天皇、皇后、皇太子などに対して危害を加えたり、

不敬行為を行ったりした場合に、死刑や懲役刑が科されると規定されていました。

また、それに続く第75条と第76条には、皇族に対して同様の行為をした場合について、

少し軽い刑が規定されていました。

終戦後、これらの規定は削除されましたが、かといって、

何をしても処罰されなくなったという訳ではありません。

天皇や皇族に危害を加える行為は、現在の刑法でも、傷害などの罪に当たりますから、

犯罪でなくなったということではないですね。


また、住居に侵入すると、住居侵入罪(刑法第130条)として

3年以下の懲役など刑が科されますが、その規定に続く第131条は「削除」となっています。
 

刑法
 第131条 削除


ここには、かつて、皇居などに侵入すると3か月以上5年以下の懲役が科されるという、

住居侵入罪より重い刑が科されることが規定されていました。
 

刑法〔※昭和22年改正前の条文〕
 第131条第1項

  故ナク皇居、禁苑、離宮又ハ行在所ニ侵入シタル者ハ3月以上5年以下ノ懲役ニ処ス

 第2項
  神宮又ハ皇陵ニ侵入シタル者亦同シ

 


○敵国を利する行為

第83条から第86条、また89条も、「削除」となっています。
 

刑法
 第83条から第86条まで 削除
 第89条 削除


これも、皇室に対する罪と同じく、昭和22年の改正で削除されたものですが、

その前は、軍の施設を壊したり、敵国のためにスパイ行為を働いたりする行為を

罰する規定がありました。

また、第89条には、日本の同盟国に対して同じ行為をした場合も、

同様の刑罰が科されることが規定されていました。
 

刑法〔※昭和22年改正前の条文〕
 第83条

  敵国ヲ利スル為メ要塞、陣営、艦船、兵器、弾薬、汽車、電車、鉄道、電線其他軍用ニ供スル場所又ハ物ヲ損壊シ若クハ使用スルコト能ハサルニ至ラシメタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス
 

 第84条

  帝国ノ軍用ニ供セサル兵器、弾薬其他直接ニ戦闘ノ用ニ供ス可キ物ヲ敵国ニ交付シタル者ハ無期又ハ3年以上ノ懲役ニ処ス
 

 第85条第1項

  敵国ノ為メニ間諜ヲ為シ又ハ敵国ノ間諜ヲ幇助シタル者ハ死刑又ハ無期若クハ5年以上ノ懲役ニ処ス

 第2項

  軍事上ノ機密ヲ敵国ニ漏泄シタル者亦同シ

 
 第86条

  前5条ニ記載シタル以外ノ方法ヲ以テ敵国ニ軍事上ノ利益ヲ与ヘ又ハ帝国ノ軍事上ノ利益ヲ害シタル者ハ2年以上ノ有期懲役ニ処ス

 第89条
  本章ノ規定ハ戦時同盟国ニ対スル行為ニ亦之ヲ適用ス



○姦通罪

刑法第183条も「削除」となっています。
 

刑法
 第183条 削除


ここには、かつて「姦通罪」が規定されていました。
 

刑法〔※昭和22年改正前の条文〕
 第183条第1項

  有夫ノ婦姦通シタルトキハ二年以下ノ懲役ニ処ス其相姦シタル者亦同シ

 第2項

  前項ノ罪ハ本夫ノ告訴ヲ待テ之ヲ論ス但本夫姦通ヲ縦容シタルトキハ告訴ノ効ナシ


この規定では、姦通した妻と、その相手が罰されるとされていました。

1947(昭和22)年に、刑法の改正案が国会で審議されたとき、内閣が提出した改正案では、

姦通罪を廃止する内容になっていましたが、議員の中からは異論も出されました。

その異論というのは、姦通罪は廃止すべきではなく、むしろ、男女平等の観点、

また、敗戦後の風紀が退廃していることなどの理由から、

妻が姦通した場合のみを処罰の対象とするのではなく、

夫が姦通した場合も処罰の対象とすべきである、という意見でした。

これに対しては、刑罰ではなく、

むしろ道徳を高めることによって対応していくべきであるという意見などが出され、

結局は原案のとおり削除となりました。


○尊属殺人罪

第200条も「削除」となっています。
 

刑法
 第200条 削除


この規定については、

200回突破記念① いろんな法律の「第200条」大集合 という記事でもご紹介しましたが、1995(平成7)年に削除されました。

改正前の条文は次のようになっていました。
 

刑法〔※平成7年改正前の条文〕
 第200条

  自己又ハ配偶者ノ直系尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役ニ処ス


この規定は、1973(昭和48)年に最高裁判決により憲法違反とされたため、

適用されなくなり、1995(平成7)年の改正で削除されました。

「削除」となっている条文を調べてみると、世の中の移り変わりが分かります。

また他の法律でも、探ってみたいと思います。


(この記事は、2018年10月16日時点の法令情報に基づいています)
 

 

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いかがでしたでしょうか。

ブログ本『法律って意外とおもしろい 法律トリビア大集合』もぜひご覧ください!


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是非、次回もお楽しみにつながるうさぎつながる花1

by 第一法規 法律トリビア編集担当

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