こんにちは、第一法規「法律トリビア」ブログ編集担当です
法律という切り口から鉄道の世界を探る「法鉄」シリーズ。
今回は、前回に続き、11年ぶりの「鉄道営業法」改正について見てみたいと思います。
今回の「鉄道営業法」の改正は、
「民法」の大改正にあわせて行われたもので、二つの柱がありました。
そのうちの一つである、
運賃を返還するときの時効に関する改正について、前回の記事でご紹介しました。
今回は、もう一つの柱である、約款に関する改正について見ていきましょう。
法鉄記事の一覧はこちら ⇒ 「法鉄」の世界 ~ 記事まとめ
◯民法に設けられた、約款に関する規定
電車に乗ることは、法律的にいうと、乗客が鉄道会社との間で、
電車に乗る「契約」を結ぶということになるわけですが、
乗客一人一人が違う内容の契約を結ぶのではなく、
契約の内容は「約款」で一律に定められています。
しかし、契約についてのルールを定めている「民法」には、
これまで、約款についての規定はありませんでした。
今般の「民法」の大改正では、約款に関する規定が新たに設けられ、
鉄道に乗車するような定型的な契約を結ぶときは、相手に約款を示すことにより、
その約款に書かれた内容が契約の内容になる…という規定が設けられました。
民法(明治29年法律第83号)〔※平成29年法律第44号による改正後の条文〕
(定型約款の合意)
第548条の2第1項
・・・
上の条文の中で、「定型取引」とは、
・ある特定の者が不特定多数の者を相手方として行う取引であって、
・その内容の全部又は一部が画一的であることがその双方にとって合理的なもの
と定義されています。
また、「定型約款」とは、
・定型取引において、契約の内容とすることを目的としてその特定の者により
準備された条項の総体
と定義されています。
◯民法の規定を少し変えて適用する
鉄道に乗るということは、この新しい民法の規定によれば「定型取引」に当たり、
鉄道会社が定型約款を作ってあらかじめお客さんに表示していれば、
定型約款の内容で契約の合意ができたことになる、というわけです。
しかし、いちいちお客さん一人一人に、
約款の内容を「はい、こういう内容ですよ」と示すのは、
鉄道会社にとっても、お客さんにとっても、面倒なことですね。
そこで、「民法」の改正にあわせて、
「鉄道営業法」については以下のような改正が行われました。
民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
(平成 29 年法律第 45 号)
(鉄道営業法の一部改正)
第303 条〔抜粋〕
・・・
第18条の次に次の一条を加える。
これはどういう改正かというと、
具体的には、改正後の民法第548条の2の中で、
「表示していた」
と書かれている部分を、鉄道による旅客運送の場合は
「表示し、または公表していた」
と読み替えるというものです。
これにしたがって、民法の規定を読み替えてみると、
民法(明治29年法律第83号)
〔※平成29年法律第44号による改正後の条文〕
〔※平成29年法律第45号第303条の規定により読み替えた後の条文〕
(定型約款の合意)
第548条の2第1項
このように民法の規定を少し変えることで、
以上、2回にわたり、「鉄道営業法」の11年ぶりの改正について見てきました。
次はいつ、どんな改正が行われるのでしょうか? 楽しみですね。
(この記事は、2017年10月18日時点の情報に基づいています)
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いかがでしたでしょうか。
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是非、次回もお楽しみに
by 第一法規 法律トリビア編集担当