こんにちは、第一法規「法律トリビア」ブログ編集担当です
法律という切り口から鉄道の世界を探る「法鉄」シリーズ。
今回・次回の2回に分けて、
今年行われた「鉄道営業法」の改正について見ていきたいと思います。
「鉄道営業法」については
昨年10月28日の記事『「法鉄」の世界 ~鉄道事業を運営するには その2』
という記事でご紹介しました。
この法律は、1900(明治33)年に制定され、これまで117年の間に、11回改正されました。
平均するとおよそ10年に1回というペースになります。
前回の改正は、今から2006(平成18年)に行われたものだったので、
今回の改正は11年ぶりに行われたものでした。
では、どんな改正が行われたのでしょうか。
法鉄記事の一覧はこちら ⇒ 「法鉄」の世界 ~ 記事まとめ
◯民法の改正に合わせた改正
今回の改正は、「民法」の改正に伴い、行われたものです。
なお、この法律改正は、今年6月2日の公布から3年以内に施行されることとされていますが、
具体的な施行日を定める政令はまだ公布されていません。
今回の民法改正では、時効に関する規定が大きく改正されました。
改正前の民法では、
・債権は、10年間行使しないときは、消滅する
と規定されていました。
つまり、誰かに対して「◯◯をしてください」と求めることができる権利(債権)は、
10年間使わなかったら、消えてしまうということです。
この規定が、今回の改正で、
・債権を行使できることを知っていた場合は、5年間行使しなかったら、消滅する
・債権が10年間行使されなかったら、(本人が知らなくても、)消滅する
というように、債権を行使できることを知っていたかどうかで、
消滅するまでの期間をはっきり区別されるようになります。
◯「運賃を返して!」と言えるのはいつまで?
さて、「鉄道営業法」にも、時効に関する規定があります。
それは、お客さんが運賃を返してもらえることになった場合に、
いつまでなら「返して」と言えるか、ということについての規定です。
改正前の条文(まだ改正が施行されていないので、現時点で使われている条文です)は
こうなっています。
鉄道営業法(明治33年法律第65号)
第14条
運賃償還ノ債権ハ1年間之ヲ行ハサルトキハ時効ニ因リテ消滅ス
このように、
改正前の条文では、運賃を返してもらえることを知っていた場合のことなのか、
知らなかった場合のことなのかは、明記はされていません。
この条文が、今回、民法の書き方に合わせて、
・(権利を行使できることを知らなくても)行使できるようになったときから1年で消滅する
というように、
とにかくその権利が行使可能な状態になって1年たったら権利が消滅する、
という条文に改正されることになりました。
民法の一部を改正する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律
(平成29年法律第45号)
(鉄道営業法の一部改正)
第303条
鉄道営業法(明治33年法律第65号)の一部を次のように改正する。
その結果、改正後の条文は、次のようになります。
鉄道営業法〔改正が施行された後の条文〕
第14条
以上、今回は、「鉄道営業法」の中の、時効に関する規定の改正について見てきました。
次回は、今回の改正のもう一つの柱、「約款」に関する規定について見てみたいと思います。
(この記事は、2017年10月18日時点の情報に基づいています)
法鉄記事の一覧はこちら ⇒ 「法鉄」の世界 ~ 記事まとめ
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いかがでしたでしょうか。
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是非、次回もお楽しみに
by 第一法規 法律トリビア編集担当