同友会は経営者の宝島 | 第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

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74日と5日、中小企業家同友会全国協議会(中同協)の定時総会が新宿の京王プラザホテルで行われ、私も参加して来ました。今回は第51回総会ということで創立50周年の記念総会でもありました。現在の会員数は全国47,000名あまりで、当面50,000名を目標にした取り組みが進められていますが、それ以上に中小企業の経営者団体として、質的な発展の可能性、勢いが感じられる総会だったように思います。

 

企業数の99.7%、従事者数の70%を占める自分たち中小企業が、日本の経済だけでなく社会そのものを支えているという誇りを持とうというものです。そのために「良い会社をつくろう、良い経営者になろう、良い経営環境をつくろう」という三つの目的を、ただ言葉に発するだけでなく「個々の企業が真剣になって追求していこう」という意思統一がなされた総会だったように思いました。

 

それぞれの挨拶の中で改めて中同協の歴史を聞いていると、混迷した時代にあっても長期的な視点で徹底した議論を重ね、作りあげた幾多の宝物を残してきていることが実感されます。戦後の高度成長期、総資本対総労働という形で労使紛争が激化する中で作られた「人を生かす経営(労使見解)」をはじめ、学者・研究者とも連携した会員企業の景況調査など様々な調査研究の取り組みは、時の流行に流されることなく筋を通し、自主的な中小企業の近代化を進める運動として進められてきました。

 

そして今では経営指針づくりや企業変革支援プログラム、労働環境整備に向けた指針、また共同求人や社員教育、更には障害者雇用など、社会性・科学性・人間性を重視した、まさに先進的な企業づくりを進める運動として成長を続け、とどまることなく変化をつくって来ていることが分かります。

 

二日目に行われた記念講演は、「同友会は経営者の宝島・・・おせっかいな仲間たちと、出会い、学び、実践する。失敗しながら、変わる」というテーマで、お茶葉の包装やティーパックなど様々なパッケージを製造する会社、株式会社吉村の橋本久美子社長による60分です。実は2年前に名古屋で行われた中同協の総会で、私は橋本社長が「ひらがな経営」の実践報告された分科会に参加していたので、彼女の話を聞くのはこれが二度目になります。

 

その時も、先代の長女として事業を引き継ぎ、社員みんなに分かりやすい経営として苦労しながら進めている「ひらがな経営10年」の話はとても面白かったのですが、今回は人数的に分科会の十数倍規模になる千数百名の前での記念講演というだけでなく、内容はもとより話し方の面白さも数倍ブラッシュアップされていて、朝から興奮して聞き入ってしまいました。

 

講演は、父が創業し、大手に出来ない小ロット・短納期という市場を開拓する先見の明で成功した話、ところがオイルショックの時?一転して銀行の貸しはがしにあった話、両親が銀行員に膝まづく姿を見た時の悔しい思いに始まりました。

 

まさか自分が社長になるとは思っていなかったのに「将来に向けた種まきをしろ」と父から事業を引き継いだキッカケや「オンナ」というだけで取引先から軽く扱われ、またクレームにもまともな対応が出来なかった経験を、なるほど「分かる、分かる」という感じで、会場を爆笑に変えて報告されます。更に2011年、東日本大震災の福島原発事故で静岡のお茶からもセシウムが出た際の経営危機があり、そんな文字通り激動の中で久美子社長は同友会と出会います。

 

以来ひたすら同友会の例会等で学び、良いと思ったことはとにかく真似をする。社員との信頼関係をつくるために徹底して「人を生かす経営」の実践を進めていきます。社員と一緒に理念づくりをする中で、「お茶は主役でなくて脇役ですよね。主役はお菓子じゃないですか」という指摘に気づきがあります。今までのようにお茶袋にこだわり続けるのではなく、お菓子を含めたパッケージとして事業の広がりが見えてきました。立ち位置を変えてみること、お客様目線への変化です。

 

株式会社吉村の経営理念「想いを包み、未来を創造するパートナーを目指します」が誕生します。そしてこの理念に続くのが「私たちは、パッケージを通してキラリと光る未来を創ります(社会性)。私たちは、商品への思いが伝わる舞台を造ります(科学性)。私たちは、挑戦して成長し、失敗と喜びを分かち合う仕事場を作ります(人間性)。」という経営方針です。

 

まさにこれらにブレずに従い、この一言ひと言に自分たちの行動を照らし合わせながらお客様と対応し、そしてワインボトルのような「お茶ボトル」や「みたらしちゃん」など新商品開発にも社員一人ひとりが参加していく、株式会社吉村の楽しい仕事ぶりが伝わってきます。橋本社長の講演は、改めて理念を生かす経営の凄さ、そして経営指針づくりの大切さを感じる話でした。それからオマケではありませんが、これも爆笑の中で聞いた「全ての長所と短所はコインの裏表」と無理やり考える楽天性の大切さも、しっかりと学ぶことが出来ました。