「消費に対する罰金」を引き上げるな | 第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

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今年二回目のお正月が来たかのような異様な盛り上がりを見せているゴールデンウィークの10連休です。天皇の生前退位による改元に便乗したお祭り的な企画が様ざまなところで行われていて、昭和から平成の時とは違い、その経済効果は相当大きいものが予想されています。露骨な政治利用さえなければ、今回は天皇の人間性を尊重したものとして、それはそれで純粋に景気のプラス材料なのだろうと思います。

 

ただテレビを見ていると「平成」と「令和」にちなんだ同じような番組を一日中流しているし、ニュースを見ると高速道路はどこも大変な状況が伝えられていて、さすがにゴルフに出かけるのもビビッてしまうし、やっぱり家でおとなしくしているのが一番と思っていたのに、連休の前半から風邪をひいてしまい、気だるい日々を過ごしています。

 

今回の連休中どこにも出かけない人たちが少数派であることは確かであろうし、その大きな消費力で助かっているサービス業や小売業なども多いと思います。でも心配されるのは、この後に予想される反動減です。「山が大きければ、それだけ谷も深い」ということにならなければ良いのですが・・・

 

ところで先月末に、自民党の萩生田幹事長代行が今年10月に予定されている消費税増税の見送りの可能性について言及したことが話題になっています。6月の日銀短観の結果次第では、衆議院を解散して「国民に信を問う」ことになるという訳です。参議院選挙とダブル選挙の可能性が急浮上して来ました。幹事長の二階氏は、知っていたのか知らなかったのか、それぞれの役回り?なのか、この発言に一応「不快感」を示したと報じられています。

 

萩生田氏といえば、加計問題のキーマンの一人で、安倍首相の側近中の側近と言われていて、安倍、加計、萩生田の三人がビール片手に談笑する写真も有名な方です。結局のところ安倍流に誤魔化し続けたことで、あの疑惑もうやむやになってしまったようですが、その萩生田氏の発言だけに、単なる個人的見解ではなく、改憲に向けて選挙で大勝するための戦略的な背景を感じないではいられません。

 

それはともかく、消費税増税が出来る状況にないことが、いよいよ明らかになってきたことだけは確かです。そんな中、いま私の周りで話題になっている元内閣官房参与の藤井聡さんが昨年10月に書かれた「10%消費税が日本経済を破壊する」という本を読みました。藤井さんは年末に内閣官房参与を辞められたということですが、さすがに政府の身内としてこの本はマズいです。

 

とても読みやすい本で一気に読めるのですが、「消費税とは『消費に対する罰金』だから、増税されれば消費を控えるのは当たり前」という指摘には目からウロコというか、今まで見なかった分かりやすい表現に驚きました。言われてみると消費すればするほど多額の「罰金」を払わないといけなくなるのですから当然です。しかもそうなるとデフレの悪循環から抜け出すどころか、ますます深刻になるという政策の矛盾を鋭く指摘しています。

 

低所得者ほど「税負担率」が大きくなるという消費税の「逆進性」の強さが、それに拍車をかけることになります。高所得者が高級品をたくさん買うからといっても、ほんの一握りの富裕層が圧倒的な庶民の購買力をカバーするにも限界があります。消費税の増税は、個人消費が6割を占めると言われるGDPの芽を摘むことは明らかです。

 

藤井さんは、まだバブル崩壊前だった消費税導入時(1989年)と現在の経済基盤のちがい、バブル崩壊後1997年の5%増税と2014年の8%増税で「失われた10年、20年」と続く、致命的な状況になったことの認識を持つ必要を指摘します。

 

その上で消費税を増税しない財源として、法人税や所得税の担税力に応じた負担を求めることを言い、更には消費税の税率を下げることをも提言しています。結果として国内の消費が高まり経済が元気になって行けば自然増収になるというものです。これらは期せずして「消費税をなくす会」など、消費税に反対する人たちが以前から言い続けていたこととも一致します。

 

この本を読み、内閣府にこうした人が居たことへの驚きとともに、少子高齢化の時代を迎えた日本で、税制の面で庶民に対して北風を吹かすのではなく、太陽の暖かさでGDPの根幹を育てていくことこそが、これから求められていることなのだろうと改めて思いました。ただ今の情勢を見ていて、仮に増税延期で「国民の信を問う」解散が打ち出された時に、世論が「安倍さん、ありがとう」となることだけは勘弁してほしい。その先にある本丸が「憲法改正」であることが明らかなだけに・・・