何もないという魅力 | 第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

第一経営グループ代表 吉村浩平のブログです

今週は何を書こうかと悩んでいると・・・何もない。そう言えば「ここには、何もないがあります」というキャッチフレーズを、千葉県にある「いすみ鉄道」のポスターに見ることが出来ます。昔懐かしいキハ2両編成の列車が鉄橋を渡る姿とともに、ポスター中央に書かれたその一言が、ジワジワと謎めいた魅力を伝えてくれます。

 

今年6月の当社ぐるーぷ1総会では、廃線の危機にあったその「いすみ鉄道」の公募社長として名乗りを上げ、様々なユニークなアイデアで鉄道存続の道筋をつけられた前社長である、鳥塚亮さんに記念講演をしていただきます。

 

42日には、ぐるーぷ1の世話人会の皆さんと一緒に、実際にいすみ鉄道に乗車して来ました。火曜日なのに一両編成の車両は地元の人以外に観光客で超満員です。ちょうどその頃は、始発駅から終着駅までの沿線を桜の花と黄色い菜の花がそれぞれ満開で迎えてくれました。

 

いすみ鉄道の観光列車としては一年で一番いい季節ということで、ワンマンカーの運転士が沿線の見どころをアナウンスしてくれます。菜の花は地元の子供たちも一緒になって植えてくれたものという紹介があり、地域ぐるみでいすみ鉄道を大切にし盛り上げていこうという、手作りの暖かさが伝わってきます。

 

中小企業にとって、いわゆる「ひと、もの、かね、情報」といった経営資源は限られていて、厳しい経営の言い訳を探せばいくらでも出てきます。それでも「やめるにやめられない」からとか「しかたがないから」事業を続けているだけでは夢も希望もありません。

 

どこにもないと思っていた夢や希望だって、真剣になって探せば見つけ出すことが出来るということを、鳥塚さんは教えてくれます。中小企業が身の丈に合ったところで自社の強みを探し出し、また創り出すことなら出来るはずです。何もかもが満ち溢れた、飽食の時代を深堀りして考えた時、もしかしたら「何もないこと自体に魅力を感じる人たちが居るはず」という仮説を基に、逆転の発想による挑戦だったように思います。

 

そんなことを考えていたら、先日の日経新聞のコラム「ヒットのクスリ」で「トレンドが消える令和」と題した記事が掲載されていました。その中で、博報堂生活総合研究所の夏山研究員にインタビューした時の「情報過剰で、若い世代からするともはや情報が新しいかどうかは分からないし、関係もない」という言葉が紹介されていました。

 

日経新聞のコラム氏は「時差を感じない若い世代。消費のトレンドの正体とは、トレンドが消失したことではないか。だから新しくても古くても状況に合えばヒットする」「しかも情報が多すぎて、流行を追うのも面倒くさい。博報堂生活総研ではその代表的な事例として“白のTシャツに黒のパンツ”という実にシンプルなファッションが増えてきていることを発見した」とありました。

 

ただ古いことの魅力はそのままでは伝わりません。いまの時代を深読みし、古さを今の時代にマッチさせて魅力ある情報として発信することの必要を感じます。トレンドを追うことがマーケティングの一つである一方で、安易にトレンドを追わないで、モノやコトの古さやシンプルさ、何もないことの魅力を再発見し、更にひと手間を加えて発信する力こそが求められる時代なのかも知れません。