社会・経済・技術の転換期に情勢を見るポイント | 第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

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先週の21日、木曜日から金曜日にかけて同友会の中小企業問題全国研究集会が長崎で行われ、私も参加して来ました。今回の全体テーマは「時代の転換期に立ち向かう覚悟と実践『人を生かす経営』を広げ、地域再生を」というものです。

 

初日に私が参加した第一分科会では、タイの「チュラロンコン大学サシン経営大学院日本センター所長」という肩書きを持つ藤岡資正氏による報告を受け、10のグループに分かれて議論が行われました。藤岡氏はバンコクからこの研究集会のためにわざわざ来られたわけですが、その報告テーマは全体のテーマともリンクした「社会・経済・技術の転換期における中小企業経営」というものです。

 

藤岡氏が時間を超過して約100分、しかも相当な早口で報告された中でいう「転換期」とは大きくいって二つありました。一つはIoTAIなどの情報技術革新で、もう一つは新興アジアの台頭による世界のパワーバランスの変化というものです。こうしたマクロ環境の急激な変化を、私たち中小企業の経営者はどのように受け止めてこれからの将来構想を描いていけば良いか、という点で問題提起がありました。

 

まず情勢を見る視点として、「視座を高く」してデジタル社会と世界経済の全体像を俯瞰すること、そして「視野を広く」してアジア新興国の台頭と日本企業の現状を理解することが大切だといわれます。そうした環境分析をした上で、「視点を明確に」して自社の存在意義を考え、長期的な将来ビジョンを考えることの必要を熱っぽく語られました。

 

デジタル化について強調されたことは「変化のスピードは私たちの想像を超える」ということです。第4次産業革命と言われる今日のデジタル化のスピードと規模を理解することの必要を言われます。藤岡氏は従来からある「産業の壁が崩壊する」という表現をされていましたが、要するにデジタル化の進歩によって、工業や農業や漁業等という区分であったり、製造業や小売業やサービス業といった分類が意味をなさなくなる時代に入っているということのようです。IoTなど、そうした「破壊的イノベーション」が進んでいるというもので、改めてそう言われてイメージしてみると色々な分野で「確かに」という気づきがあります。

 

産業構造の組み替えによるイノベーションが行われ、またAIの進化は人間による労働に置き換わる分野も多くなってきています。そうした変化に私たちはどのように対応して行ったら良いか、税務会計の業界をはじめとして、あまりのんびりと構えている訳にはいかないようで、しっかりと経営環境を分析しながら危機感をもって考えて行かなければという気がします。

 

また藤岡氏はグローバル化の進展とともに、世界経済の重心がG7から新興国に移ってきていると言われます。特に中国の台頭は目覚ましく、1970年に中国とG7全体とのGDPを比較すると中国が2.6%に対しG758%と122という大きな差であったものが、2016年には中国が15%に対しG747%で、13.2というわずかな差になっているということです。

 

その背景としてあるのはやはりIT技術の進化で、これまでのビジネスのルールを変えていると言われます。考えなければならないのは、これからは中国だけでなくASEAN地域の経済発展が急速に進んでいくことは明らかであり、日本を別格にして「日本とアジア」と考えていた時代から、これからは「アジアの中の日本」という視点で見ていく必要があるということです。

 

こうしたグローバル化は自分の業界に関係ないのと思っていて、旧来のビジネス・ルールが変わっているのに気づいていないと、一気に足元をすくわれたりします。そうした時代認識と視点から見た時に、環境変化のスピードと規模に対応するもので中小企業が出来ることの一つに「横の連携を使う」パートナーシップがあります。ただしその際のポイントとして、自社がパートナーとして選ばれるだけの魅力・オリジナリティを持つことが大切であり、そのためにも常に社内にイノベーション・変化をつくることの必要を言われます。

 

しかも外から学ぶ、アウトサイド・イン型のイノベーションのみならず、社内のアイデアや技術を外で活用してもらうインサイド・アウト型の発想が求められるというもので、価値観を共有するネットワークづくりこそが、「乱気流を乗り越えて偏西風を味方につける」ことになるというまとめでした。これは同友会を通じた有機的連携として、同友会をプラットフォームに見立てた「おまけ的な」コメントでしたが、「偏西風を味方に」という表現、さすがバンコクからの参加だなと「おまけ的に」思いました。