少しだけ文化的なお正月でした | 第一経営グループ代表 吉村浩平のブログ

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お正月を過ぎて、この一週間ほどで一気に「これぞ冬」という感じになってきました。今日の725スタート、風花が舞う中のゴルフはとにかく寒かった。スコアはともかく、終わってからのお風呂で無上の幸せを感じることが出来たので、今日はそれで良しとします。

 

ところで今年は、元日から映画を観てスタートしました。思えばまだ二週間前のことですが、仕事が始まるともう随分と前のことのような気がします。せっかく文化的なお正月を過ごしたので、少し思い出しながら書いてみようと思います。

 

年末に日経新聞の夕刊で「見逃せない」という★4つで紹介されていたスウェーデンの映画「幸せなひとりぼっち」です。新宿駅のすぐ近くにある「シネマカリテ」という小さなシネコンに初めて入りました。

 

出かける前にとりあえず念のためにということで、ネットで座席予約をしてから出かけたのですが、元日の午後というのにほぼ満席だったのは驚きです。それとなく観察してみると、タイトルへの共感なのか一人で観に来ているオジサンがそれなりに多く、誰とも話はしませんでしたが、なんとなく親近感を覚えました。

 

映画は、変人と言われるほど頑固な一人の男、オーヴェと近所の人たちとの日常風景、そしてオーヴェが想起する昔の出来事をユーモアたっぷりに描いています。鉄道局に勤めていた父との会話、スウェーデン製の車に対する愛着、そして妻との出会い、幸せな日々、器用に家具など自作した想い出、等々

 

今となっては愛する妻を亡くして孤独な毎日を送る男の日課は、妻の墓参りをして話しかけることです。そして家に帰れば早く妻のもとに行こうと、毎日のように自殺を試みるのです。でも首吊りのロープが体重の重みで切れて、ホームセンターにクレームで怒鳴り込んだり、車に排ガスを引き込んでも近所のトラブルでたたき起こされたりと、自殺どころではありません。

 

そんなオーヴェも頑固でありながら、近所のおばさんや子供たちに頼まれると、悪態をつきながらも家具の修理や車の運転を教えてあげたりと何とも優しいオジサンです。昔の喧嘩友達も今は意識があるのかないのか、車いすに座ったまま動かない。そんな彼に「早く死にたい」と話しかけると目がにらみつけて「やめろ」と言っている。

 

隣人たちに愛されながらの独りぼっちは、決して孤独ではない。約2時間、一人の女性を愛し続けた頑固親父の人生を、人間臭くほのぼのと描いていて、とても素敵な映画でした。

 

劇場を出て帰りがけに階段のところにあるポスターを見ていると、なんと年末に見逃した宮沢りえ主演の「湯を沸かすほどの熱い愛」を近くの劇場「武蔵野館」で上映していることが分かりました。行ってみると次回の上映時間が21時からということなので、やむなく元日に続いて翌日も新宿に通うことにしました。

 

でも2日通っただけの値打ちがありました。少なからず期待はしていたものの、それを大きく超えるものでした。「紙の月」以来の宮沢りえ主演の映画でしたが、本当にすごい女優さんだなと改めて感動です。

 

昔ながらの街中で銭湯を経営している一家の物語です。家族って何か、血のつながりとかでなく、幸せなことばかりでない世の中にあって、愛情をもって必死に支えあう、心から信頼しあう関係というものを感じました。

 

中野量太監督自らが脚本を書きおろした作品です。観終わってから思うのは、いろいろな伏線があり、しかもその伏線の延長線で観る者の予想を裏切る“ひねり”があったりしながら、それらがしっかりと違和感なく組み立てられている構成のすごさです。もう一度観たいと思わせる映画でした。

 

決して湿っぽい映画ではないのだけれど、なんだか涙腺が刺激されっぱなしでした。「お母ちゃん」という呼び方は、それだけで自分の子供時代に重なってしまいます。そして子供たちがそれぞれに自分に襲い掛かる現実に必死で立ち向かい、一人の人間として成長する姿はやっぱり感動です。

 

なんとも意外で、みんなが笑顔の爽やかなエンディングが、涙を乾かす時間をくれたのは幸いでした。ところで映画とは関係ないのですが、観終わってから近くの紀伊国屋書店まで歩きました。不思議というか周りから聞こえる会話に日本語が少ないのに気がついて、それもまた今年の新年から新鮮な驚きでした。