私が酒を飲んでいたのは5年前の2019年まで。

酒をやめて5年になる。


アルコール依存症の治療で精神科病院に入院する直前まで、私は酒を飲んでいた。


朝から酒を飲まないと「手が震える」などの離脱症状(禁断症状)に襲われていた。


数時間、いや、数十分酒を飲まないと恐怖に負けてしまう恐ろしい状態。


「連続飲酒」という飲み方を4年間続け、最悪を覚悟していた。


あの時、私は泣きながら酒を飲んでいた。







    

泣きながら酒を飲み続ける。
5年前の
連続飲酒発作と
共にいたころ



酒を飲んでいる自分はどれ程なさけない姿なのか。自分が一番わかっていた。


だけど脳が、体が、酒をやめることを許してくれない。


今朝も、酒は飲んでいた。


起きて焼酎を瓶で呑み、顔を洗って湯呑みに日本酒を注ぎ飲み干した。


家族に見つからないように注意して、鼻血のあとを見せないようにして。


私は居間の自分の座椅子に腰をおろした。

テレビをつけると朝の情報番組が流れている。


テレビに出ている人たちは、皆んな酒を飲んでいない、健康そうな顔色をしている。


私は朝から落ち込んでいた。


起きてから僅か1時間でもう2杯も飲んでいる。

1日が始まったばかりなのに、もう酒臭くなった。


でも、おかげで手の震えは治まっていた。


あの頃、私はいつもこう考えていた。


(朝の酒の酔いを昼までもたせて、午後までは飲まない!)


(そう、お昼すぎまでで酒2杯なら、上出来じゃないか。)


私は毎日そうして、朝から酒を飲むことを止められない自分を励まそうとしていた。


でも酒を飲んでいた頃、


最後の2年はまったく自分を制止できなかった。


たった15分後


「駄目だ、酒、さけ、飲まないと、、、」


僅か十数分後、

私は酒を求めていた。


何でだ、さっき、朝から2杯も飲んだばかりだろ


私は酒を求める自分の頭のあたりの何かに恐ろしさを感じた。


(いい加減にしてくれ!俺、もう飲みたくない)

私は自分なりに抵抗しようとした。


頭が“ボケー”っとしだした。

マズい、負ける。


(午後までは酒を飲まない。)

体と頭がさっきまでの決意を払いのけていく。


私は座椅子から立ち上がって、台所に向かい出した。


トボトボと辿り着き、冷蔵庫の中の日本酒が入った瓶を取り出した🫙


一見して酒と解らないように、妻が料理酒用に詰め替えていた日本酒の入った瓶。


瓶の蓋を開け、コップに中身を注いだ。


残り少なくなってしまった日本酒入りの瓶をしまい、冷蔵庫の扉を閉めた。


目の前にはコップに注がれた日本酒。


私は泣いた。

「ゔぇーん」「飲みたくない飲みたくない」


「ごめんなさい、酒飲んでごめんなさい」


コップに注いだ酒を震え出す手で口の中に流し込むと涙が頬をつたっている。


震えながら空になったコップを流水で洗って棚に置いた。


居間の座椅子にフラつきながら腰をおろした。


ティッシュで涙を拭いて、飲んだことを悟られないように整えた。


混乱した頭が、酔っぱらいの正常な思考に戻っていく。


「フゥー。もう大丈夫。」


そうして15分から30分、私は落ち着いた時間を手に入れた。


力尽きるまで繰り返す


ドーパミンだとかシナプスだとか、アル中は酒が切れると途端に騒ぎ出す。


酒を飲んでいたころ、特に最後の頃。

私は連続飲酒発作と共にいた。


泣いて酒を飲んで、落ち着いて、

また数十分後、発作に襲われる。


毎日、まいにち、


アルコール依存性の連続飲酒発作と共にいた。