ロンドン - 交差点 -
ピカデリー・サーカスは、
昼夜を問わず多くの人と車が常に行き交う
ロンドンの一大中心地
夜になれば、
night outに繰り出す若者たちが
夜な夜なtubeの出口から止まることなく溢れだしてくる
真っ赤なダブルデッカーが次々と行き交い、
真っ白く長いリムジンが、滑るようにして通り過ぎていく
観光客がカメラを片手に地図を広げ、
ドレスアップした女の子は足早に通り過ぎていく
ロンドンを代表するメインストリート
PiccadillyとRegent Streetが交差する、
ピカデリー・サーカス
ここは、
人と物語の交差点
イギリス ロンドン - 群青色の空の下で -
夏のロンドンは日が長い
21時を過ぎてもまだ、
まるで夕方のように空は明るく
体内の時間感覚をくるわせ、
時計の針が22時を刺す頃になって
ようやく、日没がおとずれる
するとその刹那、
いつまでもこのまま明るいのではないかと思えていた空が、
静かに、そして急速にその色の濃度を深めていく
空はどんどんとその深みを増していき、
瞬く間にして、濃厚な群青色に染まっていく
周囲は空に同化するようにして、色を変える
「ブルーモーメントって、知ってる?」
むかし、
誰かが教えてくれた
「辺り一面が群青色に照らされて見える、
日没後のほんのわずかな時間帯を
ブルーモーメントって呼ぶんだよ」
雲がなく空気の澄んだ日にだけ現れる、
ブルーモーメント
それは、
日没後のわずかな隙にだけ訪れる、
神様がくれた刹那の、気まぐれな幸せ
EL ENCIERRO - エンシエロ(牛追い) - 7
日時:7月7日 08:03
場所:第3区間 - Estafeta(エスタフェタ通り) -
区間その3、エスタフェタの曲がり角を直角に右へ曲がると始まるエスタフェタ通り。
傾斜わずか2%の長く細い上り坂で、もっとも有名な区間である。
通り沿いの建物の戸口が唯一の避難場所となるため、参加者にとっては過酷な区間。
細く長いエスタフェタ通りの向こうを眺めていた。
あの黒い塊は、一瞬にしてエスタフェタ通りで待ち受けるランナーたちの雑踏の中に突っ込んでいった。
それに呼応するようにして、歓声と絶叫の波も、渦を巻いて細い通りの向こうへ消えていく。
俺は恍惚感にも脱力感にも似た感覚を全身に帯び、
細く長いエスタフェタ通りの向こうを眺めていた。
あの黒い塊は、もはや生き物ではなかった。
ただ、意思のある黒い巨大な塊だった。
俺のすぐ左脇をすり抜けた、ガラスのような眼をした黒い巨大な塊。
しばらくそのフラッシュバックに意識を取られていた俺は、
周囲のランナーたちの安堵の混じった話し声に呼び戻されて、我に返った。
隣の男が肩を抱いてくる。
前の男も輪に加わる。
横の男とtake5をする。
後ろの男が握手をしてくる。
皆で笑い合い、お互いの健闘を称える。
そうだ、俺たちは戦場で生き残った兵士なのだ。
その時は、本気でそう思ってしまった。
戦場と言っても、ここで命を落とすようなことはまずあり得ない。
ただ雄牛から逃げるだけのこのイベントを、戦場と呼ぶには甚だしいのだろう。
だが、命を落とす可能性は0%ではないのだ。
事実、長い歴史の中で、合計14名が命を落としている。
少なくとも日常の生活に対して、ここでは死が明確なかたちでイメージできていたのは確かだ。
それがわずか数分の出来事であったとしてもだ。
俺は生き残った。
その時は、本気でそう思ってしまった。
周りのランナー達も同じ心境だっただろう。
薄らいでいくざわめきを遠く向こう側に眺めながら、
俺たちはエスタフェタ通りのゆるい登り坂をゆっくりと進んでいった。






