瓦礫の撤去作業 からの続き

 

 

元妻ユリの再婚相手のユウヤさん(仮)と都内某所で会合した日、僕らはコーヒー1杯でカフェに4時間居座り、話し続けました。

 

 

「知ってる癖に知らない振りしやがって、この野郎!! 騙されるもんか!!ムキー

 


というようなこれまでの前提はひとまず置いて、僕らは非常に冷静にお互いの答え合わせをしたのです。

 

 


っていうか、ナミさんも言っていたから僕もある程度は準備していったんだけど、ユウヤは本当に僕からの反対弁論や証拠を全く見ておらず、自分が関わる裁判のことすらも詳細をよくわかっていなかった。

 

 

そしてただ、離婚届やクリニックへの精子の提出、さらに不倫の有無に関して、ずっと僕が気違いじみた言いがかりをつけてきていると思っていた。

 

 

 

えー。

 

それでただずっと心配だけしてたの??ゲロー

 

 

 

まあ、でも、ユリなら都合が悪いことは絶対ユウヤから隠すし、言い訳して見せないかな・・・。

 

仕方ないか・・・。

 

 

 

 

ユウヤは何かが吹っ切れたように、それまでの疑問を率直に僕にぶつけ始めました。

 


僕も、「カイトに関係ない話はしたくない!」などと言わずに、すべてに答えるつもりで淡々と僕側の事実をユウヤに話しました。

 

 

 

ユウヤは、僕がユリの妹アオイとも揉めて、訴訟にまで発展した話についても尋ねました。

 

 

周りを巻き込む必要なんかないでしょう。

 

何故妹まで訴える必要があったんですか?と。

 

 

自分でちゃんと裁判の調書や訴状見てから聞けよ!


と言いたい気持ちもありましたが、多分ユリが完全に隠している んでしょう。

 

 

 

僕は、体外受精の際にユリがクリニックに許可して、ユリの妹アオイの卵子とユリの卵子を合体させて作った、倫理的には認められていない細胞操作した人口卵子を使って、ユウヤとの子を妊娠し、僕にそれが僕の子供だから養育費を払えと言って来た話を伝えました。

 

つまり、アオイはユリの計画に加担して、詐欺行為をほう助したのだと。

 

(この裁判に関しては、僕は単にアオイから「卵子は自分が提供した」という証言が得られれば良かったわけで、別にアオイから慰謝料取ろうと思ってやった裁判ではなかった。アオイは自分が卵子を提供したことを認め、嫌だったが姉に無理やり頼み込まれて卵子を提供したこと、その後姉がその卵を使って妊娠したと聞き、恐ろしくて心から後悔したこと、死産になった時は正直ほっとしたこと、僕に新たに金銭を要求したなど全く知らなかったこと等を証言していますが、ユウヤはそれも全く見ていなかった)。

 

 

 

 

ユウヤは、アオイの卵子提供の話を知りませんでした。

 

 


僕とユリとの体外受精に関するトラブルも、

 

 

ちょっとからかって『あなたの子』ってDragonに言ったら、Dragonが本気になって大騒ぎして裁判までしてきた。軽い冗談だったのに、こんなことするなんて・・・えーん

 

とただユリから聞かされていたらしいのです。

 

 

 

そしてまさか、直接自分の子供にそんな卵子が使われていたことは、今まで知らなかった、と。

 

 


「全く知りませんでした・・・。

 

そんなことをしてまで子供が欲しいなんて、僕は思っていなかった。

 

死産になったのはもちろん今でも悲しいことだけど、でも、そんなことをして作った卵で子供を作るつもりだと最初に言われていたら、僕は体外受精には同意していなかった。

 

恐ろしい・・・。ユリは何を考えていたんだろう・・・」

 

 

 

顔をこわばらせながらユウヤは言いました。

 

 

 

本当に、僕にもユウヤが100%本当のことを言っているかはわからない。


でも、もしこれが演技ではなく100%の真実なら、ユウヤはとてもナイーブで信じやすい奴で、僕以上とは言わないが、これまでかなりユリに騙されてきたってことに今やっと気づいたことになるわけだが、このナイーブさで今夜家に帰って、こいつはユリと平然と話せるのかな・・・。

 

 

いきなりギクシャクしてそう。ゲロー

 

 

 

まあ、でも、もう仕方ないです。

 

 

パンドラの箱は開いた。

 

 

ここまで来たら、僕はただ僕の真実を言い続けるだけだし、それを信じるも信じないもユウヤの自由。

 

 

その後ユウヤとユリ夫妻がどうなっても、それは僕の責任ではないとしか言いようがない・・・。

 

 

 

ユウヤは最後に、多分一番気になっていた話を僕に尋ねました。

 

 

 


 

 

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答え合わせをしようか からの続き

 

 

僕は今まで、

 

 

 

息子カイトの面会交流をいつ行えるかという話し合い以外はすべてやる意味はない

 

言い訳は聞きたくない

 

とにかく息子を出せ!!むかっ

 

 

という態度をずっと貫いてきました。

 

 

 

しかし、確かに瓦礫の山の上に立って無理やり息子を出させても、いつ下の瓦礫が崩れるかわからないところでの面会ではあまり意味がない。


継続して、気持ちよく続けられる面会でなければ。

 


元妻ユリはサイコパスなのでどうしようもないとして、育ての父親となっているユウヤさん(かなり疑惑が下がってきた)の協力を得られるかもしれない、というのは僕にとって息子との面会実現への大きなメリットとなる、と僕は思いました。

 

 


僕は、息子カイトとの面会交流の具体的な話し合いの前に、まずユウヤとの間に積みあがった瓦礫の撤去作業に入ることを決めました。

 

 


僕側の認識としては、ユウヤは僕とユリが離婚するずっと前から不倫していて、これまでのいきさつも全部知っている(もしくはこいつがそそのかしてユリにこっそり離婚届を出させて、半年したら黙って再婚するつもりだったんじゃないかぐらいに疑っていた)くせに、知らんぷりして無実を装っているヘタレの嘘つき野郎ということになっていました。

 

 

 

しかしユウヤの言うことが本当であるという前提でユウヤの立場からこれまでを考えれば、ユウヤは離婚してこれからどうしようと悩んでいるユリと、何も知らずに自分になついて無邪気に笑っている幼いカイトを見て、この2人を守っていこうと優しさから思っただけなのに、ユリの新たな幸せを許せない執念深い元夫が、わけのわからない言いがかりをつけ続け、様々な裁判をしつこく仕掛けてきているということになる。

 

 


しかし答え合わせの結果、まず本当に僕が離婚届を書いておらず、ユリが全部勝手に離婚届を出したこと、そしてクリニックに出されていた提出者不明の精子は本当に僕のではなく、そしてユウヤのものでもないということをお互いが認め、その結果として精子を出した第3の男がいたとしか考えられないということ、そしてユウヤは本当に離婚後からユリと付き合いだしたということが、お互いの間である程度了承されました。

 

 

 

これまでずっとお互いに対して「卑怯な嘘つき野郎」「しつこい嫌がらせ男」と思っていた大前提がここで崩れた。

 

 


特にユウヤは精子が僕のではないという部分にはかなりこだわりました。

 

 

「本当にDragonさんの精子じゃないんですか?」

 

 

・・・まあ、仕方ないですね。僕にしたら元妻ですが、彼にしたら今妻ですから。

 

そういう女だったって認めたくない気持ちはわかります。

 

でも、言わなきゃいけない。

 

 

誓って違いますよ」

 

 

「本当なら恐ろしいですね・・・。恐ろしい・・・」

 

 

ユウヤはうつむくと、信じられない・・・という風に左右に首を振りました。

 

 

もしかしたら、ホントにユウヤは、単なるいい奴だったのかもしれない・・・。

 

 

 

その瞬間そこは、敵との戦略的交渉の場から、被害者の会の集会所に近いものとなったわけです。

 

 


敵の敵は味方(by鬼神お父さん)となるのか?

 


正直、僕の戦略としては、ユウヤが敵(=ユリ)の敵とまではならなくていいんだけど(これ以上この2人が揉めてカイトが不安定になったら大変。まあ、でも、そうなったらそうなったで、僕にはいつでもカイトを引き取る心の準備はあるけど、カイトの安定をまず考えなければ)、少なくとも僕とユウヤ間のお互いへの敵認定は大分解除になった手ごたえを、この時僕は感じました。

 

 

 

 

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第3の男からの続き

 

 

ナミさんと「ガス抜き」がてらの話し合いをした結果、少なくとも元妻ユリの再婚相手、ユウヤさん(仮)(まだ疑いが完全に晴れたわけではない)は、多少冷静になって話ができるようになった様子で、僕との直接の対話を希望してきたので、僕も同意して彼との会合に出かけることになりました。

 

 

 


2016年10月某日

 


僕らは都内某所で落ち合いました。

 


正直、いまだお互いに対する疑惑や怒りというのは水面下に沸々としており、一緒に仲良く飲んだり食事をしたりという気分ではなかったため、僕らはとりあえずコーヒーでも飲むことにして、カフェに入りました。

 


どこから始めようか、と思案していた僕に、席に就いたユウヤがまず、今の状況についての愚痴を言い始めました。

 


「正直言って、厳しいです。経済的なことだけじゃなく、裁判がらみでユリとのケンカも増えて、毎日気持ちが落ち着くこともない・・・」

 

 

 

ユリとケンカを良くしているらしい、とは、間に立ってくれていたナミさんからも少し聞いていたのですが、いきなりユリとケンカが多いと僕に言い出したユウヤさん(仮)に、僕は一体何を狙いとしてこいつはこんなことを言い出しているのかと、多少身構えました。

 

 


「そういうケンカをカイトに見せてしまっていて、カイトも多分かなり不安に思っているんだろうと思うと、かわいそうで・・・」

 

 


え。

 

 

僕はユウヤをしみじみ観察しました。

 

 


「ユリだけならともかく、カイトをかわいそうな目に遭わせてはいけないと、私もなるべく言い争いにならないようにしてるんですが、それで結局一人でかなりストレスをため込むことになって・・・」

 

 

 

 

完全に愚痴なんだけど、まとめると彼は、

 

 

 

義理の息子のカイトをかわいがってくれているらしいのは本当

 

 

 


世の中には義理の父親だとか内縁の夫だとかに虐待される子供のニュースが多いので、僕もユウヤに対して疑いの目を持っていた部分がありました。

 


そもそも、こいつにそそのかされてユリも離婚届出したんじゃないかとか、法外な和解金を吹っ掛けてきたんじゃないか、とか。

 

 

 


だが、しかし。

 

 

 


今目の前のこいつは、今のところ判断するに、

 

 

 


カイト(と自分)の行く末を心から心配しているのは本当

 

(そして、かなり自分は被害者だと認識

 

 


らしい。

 

 

まあ、「カイトがかわいそう」って言ったら僕がおとなしくなると踏んでのことかもしれないが、少なくともカイトをかわいがっているという部分は本当のように見える。

 

 

 

 

ふむ。

 

 

 

 

僕はとりあえず相槌を打ちました。

 

 


「まあ、正直訴える僕の方も相当しんどいですから、どこから訴えられるかわからない方はもっとしんどいだろうというのはわかります。でも、それも全部、ユリがしてきたことの結果ですから・・・」

 

 


「Dragonさん」

 

 


ユウヤは僕にまっすぐ尋ねました。

 

 


「あれは、本当なんですか? 

 

離婚届を書いたのはDragonさんじゃないって話。

 

ユリはずっと、Dragonさんが酔って書いたものだって僕に言ってますけど」

 

 

 

ナミさんから、ユウヤのその疑惑の話も聞いていた僕は、裁判所に提出していた証拠書類の1つ、離婚届の署名の筆跡鑑定の結果をユウヤに見せました。

 

 

それは、

 

 

「その署名はDragon氏が書いたものではない可能性が高く、また筆跡の癖から見て、日本語(漢字)をよく書いていると思われる人物が書いた署名(署名自体は英語)と推察される」

 

 

というような内容のものでした。

 

(僕は普段、手で漢字を書いたりすることはほとんどないし、ユウヤもそれは知っています。)

 

 

 


「これ、見たことありますか? 裁判所に提出した僕からの反論につけた証拠なんですが」

 

 

「いえ・・・」

 

 

 

ユウヤは黙ってその鑑定書を読みました。

 

 

 

僕はユウヤに説明しました。

 

 

 

何度ケンカをしても、日本では離婚したら子供に会えなくなると人から言われていたから、カイトのために絶対に自分から離婚届にサインしようとは思っていなかったこと。

 

 

酔って書いたというのなら、具体的に署名をしたのはいつ頃だったのか。

何度聞いてもユリは、これに関してははっきりした時期を言えないでいること(僕の仕事は海外出張が非常に多いのです。いい加減な時期を言って、もし僕が日本にいない時だったらユリのウソがばれてしまう。だからユリは、僕が書いたとしながらも、いつ書いたのかははっきり言えないのです)。

 

当時僕は日本国籍でなくアメリカ国籍(今は日本国籍)だったから、日本人のユリの配偶者ビザで日本で住み、仕事をしていました。

いきなり離婚したら、仕事にも影響する。

そんなことを、例え酔ったとしても、勢いでするわけないこと。

 

 

 

ユウヤは頷きながら僕の説明を聞きました。

 

 

 

 

そしてそこから、ユウヤの中で、今までずっとユリを信じてはきたけれど、どこかでは「何かおかしい」と思っていたいくつもの争点について、初めて男同士の答え合わせが始まったわけです・・・。

 

 

 

 

 

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