「まさか・・・・こんな手があったなんてね・・・・。見事です・・・・。」


「悪いな・・・・これが白鬼の能力である『斬撃』ってやつだ。純粋に斬る力を増幅し、その空間ごとお前の腕を切ったって訳さ♪」


 一瞬で勝敗は決まり、獄は崩れ落ちる。そして鬼面は笑顔を見せて獄を見つめる。


「はははっ、いやあ、本当に見事です、鬼面様!貴方が歯車としてどのように動くか見れないのが残念ですよ。」


「歯車・・・?どういう意味だ?」


 突然の言葉に鬼面は表情を変える。獄の様子は、苦し紛れでも、躍起になったわけでも無いように感じられた。

獄の体の炎が、次第に弱くなっていく。


「乃亜に刃心を与えた『玄武』という女が、新たな十勇士を集め、この国を動かそうとしているんですよ。そして貴方もその計画にかか・・・・・わるで・・・・・・しょうか・・・ら・・・・ね・・・・。」


「玄武・・・・?聞いたこと無いな・・・。」


 獄は燃え尽き、仮面を外した鬼面はその場に崩れ落ちる。


「ったく・・・・白鬼は疲れるからやなんだよ・・・・。」





「ひ、姫、下がってくださいませ!」


「いやじゃっ、ごんた、何をしておる!」



 奥より現れた美姫に不覚にも風雅は一瞬気を取られてしまった。その瞬間に風雅は死を覚悟したものの、権太の攻撃はやってこなかった。


「千姫さんよぉ・・・・これが・・・・俺らの生き様なんよ・・・・。だから・・・黙ってみてやってくれ・・・。」


「そうだな・・・。貴様の言う通りだ、鏑木・・・。ここは俺の奥義で戦いに幕を下ろしてやろう・・・・。」


 息も絶え絶えに風雅が言い終わると同時に、権太は槍を振るう。しかし風雅の姿は無く、槍は空を切った。


「奥義・・・空舞・・・神風・・・。」


 神速が如き風雅の一撃にて、権太は槍ごと右腕を切り落とされる。権太は叫びながら残った左手で腰に下げていた瓢箪をとり出し、栓をあける。そこから出てきた黒い球状のものは、地面に付くと同時に床一面に広がり、硝煙のような匂いが漂った。


「俺特製の・・・・火薬だ・・・・・。この・・・・意味は分かるな・・・・・?」


 権太は地面に向かって炎の息を吹きかける、それと同時に爆発が起こり、頑丈に張り巡らされた佳乃の結界を突き破った。

「佳乃!結界張れい!」


「はいっ!」


 槍を振るいながら権太は佳乃に指示をだす。風雅はその一瞬の隙を突いて斬撃を放つが、権太はそれを軽々と避け、鋭い突きを放つ。風雅はその突きを刀身で受け止めたものの、その一撃は非常に重く、刀を突き破って風雅の胸元に食い込んだ。


「かはっ・・・・・!」


「案外、あっさりと決まりそうだな・・・。まぁ・・・まだ殺さねえけどよ。」


 倒れた風雅の足を掴み、権太は軽々とそれを放り投げる。すると風雅は佳乃の作り上げた結界に激突し、崩れ落ちる。


「さっきの突きが気になって仕方ないか?教えてやるぜ・・・俺の力は・・・『圧縮』だすべてをより高い密度に維持することが出来る。あの槍の鉄も見た目とは比べものにならない量になるって訳だ・・・それで、こんなことも出来る。」


 崩れ込んでいる風雅に向かって権太は息を吐く。するとその息は火炎となって風雅を飲み込む。


「ぐ・・・ぐああああああああ!」


「はっ!俺の息には『圧縮』された強い酒が含まれててよ、それを歯に仕込んだ火打石で着火するんだ・・・結構な手品だろ・・・・?」


 満身創痍となった風雅はゆっくりと立ち上がり権太を睨み付けた。限界の状態で、風雅の戦いは激化する。





「案外、やるじゃねーか・・・。」


「だてにこちらも『命』削ってませんからね。」


 一進一退の戦いをする鬼面と獄。白鬼の刃は炎龍の身体をすり抜け、炎龍の爪はなかなか白鬼を捕まえることが出来ない、まさに五分五分の状態であった。


「これならどうですかね?」


 獄の背中から新たな腕が二本生える。もう彼の身体は原型を持っていない。それが強みとなった技であった。腕二本分の攻撃はいなせたものの、それが倍になると勝手が違う、鬼面は窮地に立たされた。


「仕方ない・・・これはつかいたくなかったんだがなぁ・・・。」


 その時、白鬼が美しく笑った。

 炎の龍が風雅を飲み込むその瞬間、一つの影が間に割って入った。風雅はその何者かによって危機を脱した。


「風雅さんよっ、本当ならこれは甲賀の問題なはずだ・・。だから・・・・俺が割って入っても文句は言えない・・・そうだろ?」


 炎の中から現れたのは、相も変わらず飄々とした鬼面であった。


「アンタは・・・。」


「さぁっ、行きな!裏切り者の鏑木 権太がまってるからよ♪


 風雅は、かたじけない、とばかりに頭を下げて大阪城内部へ忍び込む。それを一瞬目で追った後、鬼面は獄を睨み付けた。


「さっき・・・貴方は私たちを裏切り者扱いしましたね・・?しかし、裏切り者は貴方達だ・・・争いを捨て、威信を捨てた裏切り者だ・・・・。」


「かの水龍は、復讐の炎を自分自身で飲み込んだ。彼をみて思ったのさ、俺らが復讐の鎖を千切らねーと、後の世界に迷惑をかけるだけだと・・・な。」


 炎の龍は次第に小さくなり、人のような形にとどまる。自分の動きを確認するように獄は手足をぶらつかせ、臨戦体系に入った。


「下らない・・・戦いから逃げた言い訳にしか聞こえないですね・・・。」


「どう聞こえたって結構だ・・・・お前は此処で死ぬんだからな。」


 鬼面の口調が変わる。すると彼は腰にある美しい銀髪の面を外し、顔にかざす。すると彼の肌は白く透き通り、髪は美しい銀色に換わり、異形をあらわす角が生える。


「これは白鬼っつーんだ・・・俺の持っている面の中で最強のやつだ・・・。炎龍と白鬼、どっちが強いかきめようじゃないか!」





 一方その頃、風雅は天守閣に着き、鏑木 権太と対峙してた。


「貴様が・・・鏑木・・・・。猿飛に良く似た面構えだな・・・・。」


「あー、獄と乃亜はやられたか・・・・・。仕方ない・・・これも運命だろう・・・・・佐助先生の敵、今討たしてもらうぞ!」


 権太は槍をとって風雅に向かう、そして風雅も静かに刀を抜いた。