乃亜による流麗な槍さばきと、水術でつくられた三叉の槍の組み合わせは強力であった。彼の舞を思わせる円状の斬撃は確実に風雅の動きを捉え、三叉による突きは『幅』を持ち、紙一重では避けられない。この二つによって風雅は攻めあぐねていた。


「何故・・。何故俺の動きが分かる・・・・・?」


「分かるっていうか・・・感じる・・・。ほら・・・水も風も流れるものだから・・・・。それを・・・・感じる・・・・。」


 言葉でいうのは簡単だが、そのような事を簡単に成せるわけが無い。風雅は彼の才能に驚きながら、対抗策を練り始めた。


 彼の奥義である神風は、まさにその流れに乗って攻撃を行う画期的な移動方であった。しかしながらそれが仇となってしまっている。風の能力の持ち味である接近戦で勝てないという事実が、風雅に重くのしかかった。


「遠距離技・・・つかってもいいよ・・・・。」


「生憎・・・俺は負けず嫌いでな・・・。意地でも倒してやる。」


 そう言って風雅は神風を使わずに乃亜との距離を詰めるが、彼の間合いの内には入ることが出来ない。それどころか彼は槍を伸ばし、風雅の頬を裂いた。


「間合いも自由って訳か・・・。これはまた厄介だな・・・・。」


「さっきとは形勢逆転だね・・・。もうあきらめる・・・・?」


 冗談だろ?と言わんばかりに風雅は再び距離を詰める。それに合わせて乃亜は槍を伸ばし、風雅を狙う。しかし風雅は刃を逃れ、柄を蹴り上げて乃亜の腕より槍を引き剥がす。そして一撃を加えようとするものの、乃亜は再び槍を作り上げ、風雅の動きを牽制する。


「これで終わり・・・・?」


「いやっ、今お前の倒し方を思いついた・・・・。」


 そういうと風雅は神風にて距離をつめる。風の道を作り上げ、それに乗りながら乃亜の元へ進む。もちろん乃亜はその動きに合わせて槍を振るう。


 乃亜は確実に風雅を捉えたと思った。しかしながら槍は空を切るだけであった。そして隙だらけとなった背後には風雅が立っていた。


「風・・・・双・・・・裂・・・・掌・・・・!!!」


「なんで・・・後ろに・・・確かに流れは・・・・!?うああああああああああああっ!!」


 楯状におこる豪風に乃亜は吹き飛ばされた。少し月を眺めた後、風雅は天守閣に戻った。


「のあは・・・・のあは・・・!?」


「いきております・・・・。命は・・・・奪って・・・・おり・・・ませ・・・ぬ・・・・。」


 心配そうに覗き込んでくる千姫に笑顔を見せる。彼女の安堵の表情を見た瞬間、体力が尽き、彼はそのばに倒れこむ。千姫は彼の頭を自分の膝に乗せ、その寝顔を見つめた。


 その後ろから現れたのは、冷たく青い炎を目に宿した男、真田 幸村であった。

「流石ね・・・鏑木 権太・・・。『自分の死』という任務までこなすなんて・・・。それでも、彼では十勇士は力不足よ・・・。あと二年・・・・あと二年であの方が・・・・。」


 大阪城を遠くから見つめる女、玄武が小さく呟き、その場を後にする。


「もうすぐ・・・『青龍』の完成ね・・・。うまく動いて頂戴よ・・・藤林 風雅・・・・。」





 一方、大阪城の中では、無残に焼けた権太の死体に目をやりながら、その場に腰を下ろす。近くに居る佳乃を無視して静かに瞼を閉じる。千姫は状況をよめないまま、焼け爛れた佳乃の背中に目をやり絶叫する。


「よしのっ!よしのっ!せなかが・・・・・せなかが・・・・!」


「姫・・・姫・・・。私は・・・・復讐に生きて・・・・結局自分の復讐の炎に焼かれた結果が・・・・こうなの・・・。だから・・・姫は・・・だれも・・・だれも・・・・憎まないでください・・・。」


 千姫は事切れた佳乃を寝かせ、風雅をにらみつける。


「うぬの・・・ねらいはなんじゃ・・・?」


「家康公より・・・貴方様を連れ帰るように言われております・・・・。」


 風雅はゆっくりと目を開け、千姫に視線を合わせる。


「じじさまはどうして、どうしてじぶんでこられぬのだ・・・そうしたら・・・だれもっ!」


「家康公には家康公の考えがあってのことです・・・。」


 千姫が続きを発しようとした瞬間、風雅が立ち上がる。振り返った先には、静かな怒りを目に宿した乃亜がたっていた。


「場所を・・・・かえるか・・・・・?」





 二人は大阪城の屋根へ上る。夜風は冷たく、傷にしみる。風雅が一瞬痛みで顔をしかめた瞬間、乃亜は水弾を放つ。風雅はそれを手刀で潰し、奥義である神風で勝負を決めにかかる。一瞬で乃亜の後ろをとるが、風雅は動きを止める。


 喉元につけられた刃に、彼は驚愕をした。自分の最高速度に完璧に攻撃を合わせてくれるのは至難の技である。先程戦ったときとは違い、乃亜の武器は三叉の槍であった。


「ゴンタみたいにうまく使えないんだけど・・・。でも・・・・こっちのほうがしっくりするよ・・・。」


 権太のそれとはまったく違う流麗な槍捌きを見せる乃亜を見て、風雅は笑みを漏らす。そう、約十五年前に彼と戦ったときのような笑みを。





 最近、ちょいと出番がまわってきた面無さん(本編では鬼面と表記)です!まぁ、どっちで表記するあ、僕も良く迷うんですよねー笑


 お気づきの方もいらっしゃると外伝は一本で終わらせません。近作、風舞う夜に姫は泣くでは、元御手洗 風雅こと藤林 風雅を主人公としている訳ですが、なんか、「風雅のヤローだけ活躍しすぎやろ!」などの他キャラクターの声が聞こえてきそうな感じですので、次作は選り取り見取りでいかせていだきます。


 そこで次作の内容を・・・。






 動き出した陰謀、それは甲賀、伊賀だけでなく、徳川、そして千姫をも飲み込む。そしてその陰謀は大阪城にて花開く・・・・。玄武と呼ばれる謎の女、真田幸村、そして、新生真田十勇士、それぞれの思惑の裏にあるものは・・・・?1615年夏、大阪夏の陣、一つの終焉に忍たちは涙する。


 こんな感じですかね・・・・。


 今回もお世話になった夜鹿様のサイト↓

http://hillclimb-y.net/index.html