突然だったので、『即効性の毒を致死量ぬった針』を為す術なく腕に刺されたのであった。全身に焼けるような痛みが走る。「かはっ!!」声も出ない。激痛の中死ぬかと思った瞬間。痛みがひいたのである。「それも水気の力だ、万物の蘇生・回復を司る力。お前には毒は効かない。精進すれば他人を治癒することも出来よう。」事も無げに返す陽炎に俺は「は?おい、アンタしにかけたんだぞ?おい、謝罪の一言でもいいやがれ!!」そうすると陽炎は苦無と呼ばれる刃物を俺の喉元に突き付け。「勘違いするな。私はお前が毒では死なないことを知っていた。ただ、試したまでのことだ。それとな、お前の直属上官である私にあまり馬鹿な口の利き方をするでないぞ。」俺は殺気に圧されてただうなずくだけであった。


 陽炎と二人で家を後にし、他のメンバーとの待ち合わせ場所に行くことになった。そこには活発そうな、短髪の少年と大人しげで、長い髪を後ろでくくっていて前髪はそれっている少女が居た。共に年齢は同じぐらい。陽炎はその二人に「こいつが今回共に任務を行う和田樹だ。初任務で忍者になってからの日々も浅い。お前等、上手くフォローするように。」そして続ける「そして、この馬鹿面下げた餓鬼が大野犬千代・モジモジした娘が花だ。」そうすると犬千代と呼ばれる少年が「陽炎さん、嫌ですよ、こんな『御荷物野郎』ひっさげて任務いくのなんてよぉ、なぁ、花?」花という少女が「そんなことないよ、あんただって『御荷物野郎』って思われた時期もあるかも知れないでしょ?」犬千代はムキになって「ねぇよ!」と怒鳴る。そして「この犬千代様が、この御荷物野郎を審査してやるよ!!」といい、一跳びで樹の前にやってきた。俺は影ながら練習していた水遁を披露しようと思い、犬千代の顔に水球をぶち当てる。「デ、デメェ、こ、この犬千代様をなめやがって・・・。本気でぶっ潰してやる・・・。」というと犬千代の体に変化が起きた。体中から体毛が生え、耳は長く牙や爪は鋭くなっていった。それはまさしく『狼男』そのものだった。「こ、これはやばくネ?」俺はあまり使いたくないが、『奥の手』を使わざるを得ない状態であるのはたしかだった。

 戦国時代にタイムスリップしてきた俺。自分の家を与えられ、そこには生活を世話してくれる少女『おりん』と二人での生活が始まった。現代を離れたものの、自分が必要とされているこの世界が心地よくもあった。それに、おりんとの共同生活は楽しかった。おとなしくて、鈍臭く、恥ずかしがりやだがちゃんと家事もこなしてくれた。俺は陽炎からの呼び出しもなく。おりんと二人平和に暮らしていた。


 おりんが言うに俺は『とても優しい人』らしい。何故ならこの時代の日本は男尊女卑の思想が強く、この里でもよほど忍術に長けていない限りは、男のほうが態度がでかいらしい。『男女平等』の世界で生きてきた俺の接し方は、とても優しいという評価をもらっている。『夜伽』の件は『おりんに任せる』ということにした。やはり、向こうの気持ち無しには、そういうことをしたくない。おりんは、俺を慕ってくれているらしく、出かけるときは手を繋いでいる。餓鬼の様だが、それもまたいい。


 そんな日々をすごすこと数日。我が家に陽炎がやってきた。「樹、任務だ。今回行動を共にする面子に会う前に、すこし試したいことがあってな。修行でも積んだか?」まるでマシンガンのように用件を言っていく陽炎。それに対し俺は「いや、修行も何も、忍術においてのイロハのイもわからねーっすよ。」陽炎は静かに「そうか、ではまず、腕を差し出してくれないか?」『話し聞けよ!!』という突っ込みを入れたくなったが抑え、樹は腕を差し出す。「この針には即効性の毒が致死量ぬられている。」と言放ち、針を樹に刺した。樹は反論する間も無く、訳など判らぬままに殺されようとしていた。

俺は伊賀忍者衆の一人、泥壁に襲われた。その際に自分の能力であろうかと思われる水術を見つける結果となった。


「それがお主の忍術じゃ。樹殿。」藤林はにこやかに続ける。「しかも貴方が使ったのは五行の内の一つ、水遁術です。この里数百人の内にも使えるものはいませんよ!!他ならおるんだがね」俺はまったく話がよめなかった。「ゴギョウ・・・?スイトン・・・?忍術って一様のものじゃないのですか?」藤林はこう返す。「忍術は十人十色じゃよ。『刃心』が術者に合わせて能力を作り上げるんじゃ。『刃心』がみな一様に与えるのは身体能力の強化じゃよ。お主も体現したじゃろ?そして、五行と言うものは万物を司る5つの物質のことじゃ。具体的に言えば木・火・土・金・水じゃな、つまりじゃ、自然の力そのものを武器と出来るんじゃよ。後は陽炎にききよれ、あやつがお主の家にもつれていってくれよう。」陽炎という女と屋敷が出て行った。


『俺の家』へと向かう道。陽炎との会話はほとんどなかった。ただ「家に着くと側女が色々と説明してくれるだろう。用事があれば迎えに行く。主に任務となると私と一緒だと思え」と言われただけだ。たどり着いた『俺の家』は一人住みにしては大きすぎた。家の前で陽炎とは別れた。「ガララ・・」と戸を開けると中は明かりがともっていて、少女が一人玄関で正座していた。戸の音に驚いたらしくビクッと体を震わしていた。「お、おかえりなさいなせ・・・・。」いきなり噛んでいた。俺は関西人の癖でついつい突っ込みを入れる。「なさいなせ?」少女はまたビクっと体を震わし。「す、すいません・・・・・・。そ、そのぉ・・・・・。」少女が本気で怯えたようなので優しく返すことにする「怒ってないから?どうしたの?」少女はこう返す「お名前を・・・。」俺は名前を答えることにする。「和田樹です。」少女は慌てて「そ、その、敬語なんて使わないでください。私は樹様の側女なのですから!!あっ、それと、私の名前はおりんっていいます。その、樹様のお世話など、何でもさせて頂きます。掃除も、洗濯も、炊事も、その、あの、お夜伽も・・・・。樹様が望むのであれば・・・。」正直、このときは『夜伽』の意味を本当に知らなかった。「は?夜伽ってなんだよ?」少女は顔を赤らめて「そ、その、だだ、抱ぃてくださっても、結構ですとぃぅ意味で・・・。ぁぅぅ・・・・・。」今にも消え入りそうな声でゴニョゴニョと恥ずかしそうに答える彼女を見て、『そのようにさせた』自分自身も顔をあからめていた。そして、この習慣の違いが、自分が戦国末期いるということを実感させたのであった。