巨大な水の龍が俺に襲いかかる。ただ俺は避ける事しかできなかった。氷の矢も、巨大な水弾も全く歯が立たなかった。「知らないのか・・・?水術とは、造形術の極み・・・。お前のソレはただの水遊びだ・・・。」再び水龍が俺に襲いかかる。


 「おのれぃ!ちょこまかとぉ~!!」そう叫ぶのは二人の入道。犬千代も花も防戦一方のようであった。それをよそに、佐助と陽炎は一進一退の攻防を続けていた。「おっ!?やるねぇ~姉ちゃん!十勇士に入っても上位だよ、アンタ!」相変わらずの様子で語りかける佐助からは余裕の笑みが漏れていた。


 「炎舞 一式 焔雪・・・。」陽炎がそうつぶやくと赤色の雪が降る。それは佐助に触れた瞬間にたちまち炎上する。佐助は自分の周りに竜巻を起こし、炎を振り払う。しかし陽炎は間髪入れずに「炎舞 二式 炎刃・・。」次の瞬間、無数の刃が佐助に襲いかかるが、佐助の動きはそれを上回り、すべての刃を避け切る。しかし、その動きを読んでいた陽炎は、佐助の懐に、自分の持っている炎の刃を直接突き刺す。


 「ぐぅ・・。」佐助は小さく唸り声をあげる。「炎舞 三式 炎牢・・・。」陽炎は容赦なくたたみ掛ける。炎の牢獄が佐助を捉える。しかし次の瞬間、巨大な竜巻により炎牢は内側から破壊された。陽炎は動揺せずに「炎舞 終式 焔美人!」と止めの一撃を放つ、しかし佐助は陽炎の形をする炎を右手に風の力をめいっぱいに集めた手刀でなぎ払う。「陽炎!」俺、犬千代、花は声を合わせてそう叫ぶ。


 「すきありぃ!」二人の入道が叫び、拳を振るう。花は寸でのところで避けることに成功したが、犬千代の腹に伊佐入道の拳がめり込んだ。しかし次の瞬間、あたり一面は俺の出した濃い霧に包まれた。「あらら・・・。」佐助はそう呟くと一瞬にして霧を払う。しかしその場にはもう俺達の姿はなかった。


 俺達の隊は大打撃を負った。犬千代と陽炎に対して俺は応急処置を行う。少したつと花が「近づいてきてるわ・・・。」そういうと陽炎はこう返す。「ここは私が・・・。奴らとまともに戦えるのは私だけだ・・・。」そういう陽炎に対して俺は「わかった・・・。犬千代、花、逃げるぞ・・・・。」花と犬千代は猛反対したものの、なんとか俺は二人を説得し、その場を後にした。


 「なーんだ、お前だけか。伊佐、青海、他を追え。」陽炎のもとにやってきた佐助はそう呟く。「御意」そういて二人は奥の茂みへ消えていった。「佐助・・・。こんなクズはやく消しちまおう・・・。」そう才蔵が呟くと三人は臨戦態勢となる。すると次の瞬間、茂みより俺は飛び出し才蔵の懐へ潜り込み氷雨を上方へ薙ぐ。すると左目を捉え、才蔵は叫び声をあげる。そして俺は後ろを向き、陽炎にこう言い放つ。「俺が・・・俺が守るから・・・。」


 そういうと陽炎は初めて俺に泣きそうな表情を一瞬見せた。そして俺は怯んでいる才蔵に次の斬撃を入れようとする、しかし俺は一瞬の内に間合いを詰めてきた佐助に足を払われ転げる。すると佐助は手に風の力を集中し、横に一閃する。


 しかし、俺は無傷であった。ただ、頬あたりに暖かいシミがあたったような感触がした。そのシミは増え、広がっていくように感じた。俺は目を開く。そして俺が見たのは『陽炎の体』であった。しかしあくまで『体』しか見えなかった。『コトン・・。』そのような音が後方にて聞こえる。俺は恐る恐る振り返る。


 落ちていたのは『陽炎の首』であった。俺は這ってその首を拾い、急いで自分の治癒術にて彼女の首と体をつなげる。そして彼女を腕の中に寝かせ、俺は『ソレ』に語りかける。「なぁ・・・なぁ・・・・守るって・・・・守るって言ったのに・・・俺・・・俺・・・・。」とめどなく涙があふれる。


 「茶番は終わったのか?」佐助が俺をそう罵る。俺はそれを無視し、陽炎死体の唇に自分の唇を重ねる。そして、立ち上がって佐助を睨みつける。その時佐助に戦慄が走る。何故なら目の前に立っている青年は、先ほどと違い髪の色は白く、眼は蒼く輝いているのだから。そして、その青年はこう呟く。「殺ス・・・・お前を・・・殺ス。」

 俺達四人は城内にて小早川秀秋であろう青年を見つけた。彼の周りにはおびただしい量の血が飛び散り、一つの骸が転がっていた。その骸の顔は、今眼前に立っている青年と瓜二つ、いや、『まったく同じであった。』


 「樹ぃぃ!奴は敵さんだ!」そういう泥壁の声に反応して俺は一瞬のうちに氷雨を抜刀し、居合切りを放つ。秀秋の体をもつ男は横一文字に切断され、転げ落ちた。泥壁はその男の骸に駆け寄り、泥を顔に当てた後に自分の顔にその泥を押し付ける。すると泥壁は転げる二つの骸を、判別不能になるように潰し、こう声を張りあげる。「曲者じゃあ!人狼のあやかしじゃあ!」


 すると、小早川の武士軍団が俺達のもとに現れる。「曲者、出会えい!」と抜刀しながら俺達三人を囲み始める。武士たちが俺達を完全に囲み切る前に集団から抜け出し、人間以上の運動能力を持つ俺達は無傷で城から脱出したのであった。


 

「我々、小早川軍は、この時より東軍にくみしようぞ!!!」



 そのような掛け声を松尾山から離れた俺たち一行の耳にも入った。『任務終了』その安堵感は一瞬にしてかき消された。「誰か来る!かなりの強者よ!」花が声を張り上げ俺達はその一声で戦闘隊形に入る。


 すると、一対の『仁王』が木陰より飛び出し、一瞬にして瀬川とおしげの頭部をその掌で破壊した。「真田十勇士が一、三好伊佐入道!」と仁王のうちの一人が声を張り上げる。もう一人も「同じく真田十勇士が一人、三好青海入道!」と大声で名のる。「ふざっけんじゃねぇ!」そう倉内は両手に巨大な力の塊を作り上げながら叫ぶ。


 倉内は仁王に向って力の塊を発射したが、彼らはそれを『突き』にて相殺する。無防備になった倉内の前に現れたのは巨大な水の龍であった。その龍は倉内の上半身を食いちぎった。その後ろより長いきれいな髪を後ろでくくった童顔の一人の男が現れる。「十勇士が一人、霧隠才蔵・・・成。」


 「陽炎、樹、ってった・・・・。」蛙屋がそういった瞬間、『かまいたち』が彼の体と縦一文字に切り裂く。二枚におろされた蛙屋は血を噴きながら二つに分かれて倒れた。その血飛沫を浴びながらこちらに歩み寄る男の顔に俺は見覚えがあった。先程の茶屋であった男『サル』と名乗った男。「『サル』・・・まさか・・・?」


 驚愕する俺に向って『サル』はニヤリと微笑みかける。「真田十勇が一、猿飛佐助だ。久しぶりだな、樹殿。」口調とは裏腹に尋常ではない殺気を俺に向けてきた。次の瞬間、姿が消えたかと思うと俺の前に現れ、拳を打ち込む、しかし、割って入った陽炎がさばき、俺は陽炎の蹴りにて後ろへ飛ばされる。


 俺は一息つく暇もなく、次の攻撃を避けなければならない状況へ追い込まれる。才蔵の水龍が襲いかかる。すんでのところで俺はそれを避ける。陽炎とは逆のほうへ視線をやると、二人の入道に対して犬千代と花が応戦していた。


 俺は目の前の敵に集中した。『最強の仲間』を信じる故に。