No.323 人生初の職務質問も楽しいイベントに変換する | D菩薩の仕事いろいろ趣味いろいろ

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この世に生を受け 62年、街で警察官から生まれて初めて職務質問を受けました。

それも穏やかに晴れた日曜日、しかも白昼堂々の新宿西口で。

 

この日は、人に会う約束で久々の新宿。春を思わせる麗かな陽気でした。エルタワーとハルクを結ぶ歩道橋からフト眺める見慣れたはずの風景に不思議な違和感をもって足を止めました。

 

なんでこんなにスカスカなんだろう? 空が広すぎる…。よく見ると、西口のロータリーから東口の駅ビルやビックロ、高野フルーツまで見渡せる!

あっ! そうか、西口の再開発で小田急百貨店が取り壊されて無くなったんだ! そして新しい高層ビルが着工したばかり。ということは、この見晴らしは一時的な今だけの貴重な景色なんだ。

 

 

こういう工事って思いのほか早く進むものなので、たまたま通りかかって写真にできたラッキーを噛みしめながら西口ロータリーの地下コンコースを歩いていると、背後から声を掛けられました。

 

「あの~、ちょっと失礼します…」

見ると、30代とおぼしき制服の警察官です。

 

【以下は、その後の一部始終のドキュメンタリー(記憶の限りの一字一句)】

 

警察官:あ、すいません。ちょっとこのあたりを巡回してまして。ご協力ください。

 

D菩薩:え? これってもしかして職質(職務質問)ですか?

 

警察官:はぁ、まぁ、そうです。

 

D菩薩:すっげえ! オレ、生まれて初めてです! なんでも聞いてください!

 

(警察官、ちょっと驚いた表情)

 

警察官:まず、ポケット、調べさせてください。

 

(警察官、D菩薩のコートのポケットの中身をチェック)

 

警察官:荷物も見せてもらっていいですか?

 

D菩薩:あれ、パンツのポケットはいいんですか?

 

警察官:パンツはいいです。荷物、見せてください。

 

D菩薩:はい、どうぞ、どうぞ!

 

(D菩薩、バックパックを警察官に手渡す)

(パック丸ごと渡された警察官、さらにびっくりの表情で、ぎこちなくパックを開け始める)

 

D菩薩:でもお巡りさんって2人一組で動くものと思ってたけど、一人なんですね。あれ? 本物のお巡りさんなんですかぁ?

 

警察官:(ちょっと憮然として)一人で動くこともあります!

 

(警察官、パックの本体を開けて中身をチェック。片手でパックを持ち、もう片方でチャックを開けるのが大変そう)

(D菩薩、その間、いっさい手を貸さず、見守る)

 

ちなみにその本体の中身はこんな感じ。PC、カメラ(赤いケース)、傘、新聞、歯ブラシです。

 

警察官:これはカメラですか?

 

D菩薩:そんなの人に頼らず、自分で調べましょう。

 

(警察官、相当憮然として、カメラのケースを開けて中身をチェック)

 

D菩薩:ところで聞いてもいいですか? 職質に私を選んだ理由は何ですか?

 

警察官:……

 

D菩薩:私の風貌が悪かったら直したいんで、教えてください。

 

警察官:特に理由はありません。私の主観です。

 

(警察官、パックを元に戻してD菩薩に返そうとする)

 

警察官:ご協力ありがとうございました。もう大丈夫です。

 

(D菩薩、友人との待合わせまでまだ20分以上あるのに、ここで解放されたら暇になってしまう…)

 

D菩薩:あれ? こっちの小さいポケットの方は見ないんですかぁ? そういえば、オレ、キャンプとかやるんですけど、もしナイフなんか持って歩いてたら、マズいんですよね? 確か、雑誌かなんかで読んだけど。

 

警察官:(一気に表情が変わって)え! ナイフ持ってるんですか?

 

D菩薩:そういうのは、ちゃんと自分で調べましょうよ。ほら、こっちのポケットも。

 

(警察官、めんどくさいヤツに声をかけてしまったと、明らかに後悔の表情でポケットも調べ始める。でもここでD菩薩を開放して、実はホントにナイフを持ってて人でも刺したりしたら、直前に職質してたこの警察官の責任は重大)

 

D菩薩、ポケットも調べるように警察官を促してみたものの、なんか手こずってるようなので、暇つぶしに彼の写真を撮ってみました。(肩のペンライトが私のバックパックを素敵に照らすナイスアングル ♪)

スマホだから耳元でしっかりシャッター音もしたのに気づかない。ものすごい集中力でお仕事する人です。

 

 

なので、ダメもとで動画も撮っちゃいました。笑

でもまだ気づかない! 職質中の警察官を撮影する私の姿を見て、通行人が大笑いしていました。

 

余計な心配ですが、ご職業柄もう少し周囲にも注意を払われた方がよろしいかと…。

 

 

ちなみにバックパックのポケットの中身はこんな感じです。救急セットや手帳などを入れた黒いポーチは片面メッシュで中身が見えるけど、モバイルバッテリーの赤いポーチは中身が見えません。

触った感触で電子機器とすぐわかるはずの赤いポーチの中身を開けてチェックしなかった上、液体容器とわかるはずの丸くて青いヘアグリスも開けようとしなかった警察官。

 

なんか日本の警察の職質って、ただの作法であって実際には何の効果も意味もないみたい。探してたのは、ナイフだけ? ちょっとがっかりです。

 

もし仮に本物のテロリストを職質したとしても、私のように職質そのものを元気よく楽しむ余裕の対応をすれば、危険物だっていとも簡単に見逃してしまえます。その一方で私を選んだ理由を「主観です」なんて答えるのはヤバい。これ、アメリカだったら確実に訴えられます。

 

人生、なにごとも楽しみに変換することを信条に生きる私が、うきうき明るく対応した今回の職質は、期せずして日本の安全っていうものの何とも脆弱な本質を知る経験となった気がします。「日本人はみんな、真面目で良い人たちだ」という性善説を前提に、国民が国家権力に大人しく飼い慣らされているだけで、たぶんこの国はテロリストが本気の本気で牙を剝いたら、やりたい放題な気がします。

 

 

テロリストといえば、思い出すのがNY駐在時に経験した 9.11です。

 

 

 

9.11を境に空港の保安検査は大きく様変わりしたと思います。

(成田空港)

 

 

分単位の限られた時間内に、不特定多数の集団に対して徹底した作業標準と集中力で一定のセキュリティ・レベルを実現し、航空機の離陸までそれを担保し続けることを責務とする彼らは、安全要員のプロ中のプロだと感じます。このD菩薩ごときをして突っ込みどころ満載でスキだらけ、今や日本中に蔓延る形式的やってます感の象徴だった私への職務質問とはえらい違いです。

 

 

たとえば米国の空港セキュリティの対応は、その横柄さと威圧感が今でも不評ですが、その分、フリークェント・フライヤーにはある種リスペクトに近い安心感をもたらします。

(ニューヨークJFK空港)

 

 

米国のセキュリティでは、通常のX線検査とは別に問答無用で荷物を開けさせられることがあります。いつだったか、搭乗時刻ぎりぎりで急いでいるときにこれをやられ、頭にきて「なんでオレなんだ!」と騒いだことがありました。すると検査員は顔色ひとつ変えず「ここを通る乗客は一定の人数にひとりの割合で手荷物を開けてチェックすることになっている。お前はそのサイクルに当たっただけだ」と事務的な答え。これには返す言葉がありません。

 

そしてもし検査員がここで「お前を選んだのはオレの主観だ」なんて答えようものなら、それは根拠のない人権侵害になるわけです。

 

乗客の風貌でも人種でも性別でもなく、ただその日の空港の込み具合に応じた一定のサイクルで文字どおりランダムに荷物を開けてチェックする仕組み。これではテロリストも危険物の持込みを運に任せるしかなく、それがしっかりと抑止力になっているわけで、極めて合理的です。

 

 

さて、では今回の新宿のD菩薩に「主観」でなく職質をかけるにはどうすればいいか?

 

身長180cm以上で、

横幅もあって躯体がデカくて、

ポケットの大きなコートを着てて、

サングラスで顔を隠してて、

襟足がムダに長い髪型で、

背中に何やらバックパックを担いでいる人物…

 

…そんな人を職務質問してます。って言われたら、素直に応じるしかないですね。こういう風貌 ↓ は職質の対象です。みなさん、気を付けましょう。笑

(職質直後に反省を込めた自己分析のために自撮り)

 

 

あるいは、

 

「え? あなたを職質に選んだ理由? そればっかりは国家機密なんで勘弁してくださいよ!」

 

って、笑顔で粋に返してくれたら、無意味な職質もより楽しく受けられるかもです。(おわり)