あなたのとなりにいる 中年男子の本棚 -4ページ目

その92  社会と折り合いをつければ、若さを亡くしていくのか

あなたの若さを殺す敵 丸山健二 


この本は読む人を選ぶ。挑発的な本だ。



この本のエピローグにはこんなことが書いてある。

『さて、私の煽動に対してあなたはいかなる反応を示すのでしょうか。あまりに一方的で、あまりに乱暴で、あまりに極端で、あまりに過激だと理由で一蹴するのでしょうか。(中略)あるいは、もうひとりのあなたとのあいだで激しい相克を生じさせ、双方あるいは互いに態度を軟化させ、決着の至ることのない睨み合いへと持ち込むのでしょうか。あるいはまた、あまりに非現実的なものとして一笑に付し、自立の若さという尺度をこれまでのあなたの生き方のなかへ葬り去り、安定とささやかな憂さ晴らしの日々の中へと帰って行くのでしょうか。』

エピローグを読んで腹が立つ人は読まない方がよい。私は逆にどんなことが書いてあるのか気になって手に取った。



勤め人となって、人から使われる立場になれば、人は自立の若さを失っていく。安定と思考と引き替えに人に使用されることで、誰もが本来、動物的素質としてもっているはずの自立の感覚を失い、若さを殺していく。



著者も大卒後、しばらく商社勤めをしたらしい。日々、このままでよいのか疑問を抱き、自立の若さを失う前に退職。何の興味も関心もなかった、小説家として生きること決意する。



そして、コンスタントに著書を世に送り出している。



著者曰く、殆どの人が自立をかけて本気で挑戦していない。自分は特別ではない。



辛辣な言葉が並ぶ文章でも、私は不思議と腹が立たなかった。

が、守るべきものを捨てきれない私は既に若さを失いつつあるようだ・・・。





私の若さの度合い ☆×2.8


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その91  今のご時世にはこちらの方があっているかも

この世の中を動かす暗黙のルール 岡田尊司

その39で「夢をかなえるゾウ」をご紹介しましたが、先が見えづらいこのご時世には、この本がしっくりきます。


失業中の若者が、社会や親からも見捨てられたと思い込み、公園で首つり自殺を図るところから物語が始まる。自殺を図ったものの、現場を見ていた子どもから助けられ、気がついた時は精神病院の閉鎖病棟の中。ここで1ヶ月程入院生活を過ごすが、そこで先生と呼ばれている老人の患者と知り合う。先生は長期入院患者で、若者も頭が変なおじいさんの話すこととタカをくくっていたが、先生は自分が実践することの出来なかった、この世の中を支配する暗黙のルールを若者に諭すように伝えていく。


若者は、自傷の疑いが晴れて1ヶ月で退院した後、社会に飛び込んでいくが、壁にぶつかり先生にアドバイスを聞きにお見舞いに行く。若者は先生が一つずつ伝授する「この世の中を動かす暗黙のルール」を愚直に守りながら、壁を乗り越え、社会に溶け込み少しずつ順調に回り出す。


夢をかなえるゾウのように成功を目指すのではなく、順調に少しずつ壁を乗り越えていくというスタンスが、似て非なるものとなっている。が、きっと著者は夢をかなえるゾウを意識して書いたに違いない。今なら「~ゾウ」はそれほど話題にならなかったかもしれない。


時勢によって出す本も変えないと売れないのね。


流行の最先端を行ってる度 ☆×4


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その90  みんなエコぶってるだけ?

偽善エネルギー  武田邦彦  幻冬舎新書798円


出来ることから始めよう・・・じゃなくて、その情報疑うことから始めよう。


著者は1943年東京都生まれ、東大教養学部卒。専攻は資源材料工学。名古屋大学大学院教授を経て現在中部大学総合工学研究所教授。名古屋市経営アドバイザー、内閣府原子力委員会および安全委員会専門員など。著書に「偽善エコロジー」「エコロジー幻想」など。


石油資源はあと30年しか持たない。温暖化が進んでいる。原子力発電は危険。風力発電、水力発電は環境に良い。ヨーロッパの環境対策は日本よりずっと進んでいる。資源の節約に努めるべき。太陽光発電がエネルギー問題を解決する。ハイブリッドカーは環境に優しい・・・。


これらは、全て正しくはありません。いや、ある一面だけ正しくて殆どは正しくない。

私たちは何でもイメージでとらえがちです。それはあるときは政府の流す情報であり、あるときはマスコミの流す情報です。


石油資源は今のペースで使い続けると確かに使いやすい石油は30年分くらいしかないそうです。しかし、オイルサンドや質の悪い石油ならあと200~300年分はある。節約をするのではなく、それらを精製する技術を先に確立したり、医薬品や肥料等、石油以外からは作ることの出来ない製品の代替原料を研究しなければならないのです。


それから、人間の活動にはCO2の排出は不可避。活発な経済活動にはCO2排出は避けられません。日本の最近の風潮はその全く逆ですね。いかにCO2を減らすかでこれらは経済の停滞を導いています。極端な話、CO2を減らすにはじっとしとけばいいんです。消極的にね。


環境国としてのイメージがあるドイツ。発電の半分は石炭による火力発電。後半分は原子力発電等。

太陽光発電は石油や石炭に代わるエネルギーにはなり得ない。


節約、CO2削減を国民や経済界に強いるよりも、次の産業を育てよう。明るく前向きに生きよう。

そんなメッセージを感じました。

日本だけCO2減らして経済停滞しても、30年後どこの国もほめてくれないし、助けてくれないかもよ。



ここからは、国やマスコミの偽善にだまされないためのヒントです。


人間は「何に納得するか」ということ。人間の頭は「正しいことを正しいと思う」のではなくて、「そのときの知識で、納得出来ることを正しいと思う」ということ。



民主主義というのは「民」が主人公です。私にも出来ることを最初に考えるのではなく、「国は私たちに何をするべきか、自治体は自分たちにどういうサービスをするのが適当か」を最初に考え、どうしも国や自治体レベルで出来ないものを自分が処理する制度です。



知っている人だけが危機(金融危機)を回避する。その時間的余裕を持たせるために、洞爺湖サミットの会場をエコでつつみ、地球温暖化を表面に出し、マスメディアはそれに乗りました。



どこの国に自分の子供を犠牲にしてまで地球市民を強調し、遠い国を助ける人がいるでしょうか。人間というものは、それほど余裕のあるものではありません。そうした認識、思考力を持たずに「かわいそうな人を助けよう」とか、もっとひどくなると「地球に優しく」といった、具体性の無いことを言って、意味のない行動をして、自己満足ににたり、何の備えもしてなければ、今後の困難な時代を乗り切ることはできません。


エコを巡る偽善が分かった度 ★×4

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