はーい! 科学探偵ナオでーす。
カブトガニってご存知ですか。
皆さん、きっと名前は聞いたことがあると思います。
こんな感じの生物ですね。
カブトガニ
マリンピア日本海HPよりお借りしました。
カブトガニは、カニの名がついていますが、甲殻類ではなく、クモやサソリの仲間に一番近く、尾剣を持つ仲間という意味の「剣尾類」と呼ばれています。
全長(背甲の先端から剣状の尾節の先端まで)は、オスで45~70cm、メスは55~85cmです。
カブトガニは「生きている化石」とも言われています。
恐竜の時代よりもはるか昔の2億年前から、時には恐竜にやられながらも、強い生命力で昔の形のまま生き続けてきたです。
カブトガニのなかまの世界分布図
西条市HPよりお借りしました。
国内での生息地は、瀬戸内海沿岸と九州北部沿岸の遠浅の海岸地帯です。
カブトガニの生息地
環境省HPよりお借りしました。
でも現状は、絶滅危惧I類に分類されています。
絶滅危惧I類 (CR+EN)(環境省レッドリスト)
- しかし! こんなカブトガニが
- 私たちの命を守っているんだそうです!
- 「カブトガニが絶滅すると我々の生命にも危機がくる」
現在、医学・薬学に多大な貢献をしているカブトガニは、我々にとってとても有用な動物なのです。
人の生命を奪う大腸菌や、サルモネラ菌などの「内毒素」検査に、以前は大変な時間がかかっていました。 - ところが、カブトガニの血液を使うと、約1時間で内毒素の検査が可能になって以来、人の命が助かっているのです。
- 現在、カブトガニの青い血液を利用することで、100億分の1グラム以下の内毒素を検出することが可能なのです。
カブトガニを一列に並べて採血する様子 - ナゾロジーHPよりお借りしました。
- カブトガニの青い血の秘密
- カブトガニの血中には、私たち人間が持っているヘモグロビンが存在しません。
代わりにあるのが「ヘモシアニン」という、銅を含む色素たんぱく質です。
そして、ヘモシアニンは酸素と結びつかなければ「乳白色」なのですが、酸素に触れると「青色」になります。
そのため、カブトガニの血液は、体内を流れているときは乳白色で、採血して外の酸素に触れると青色に変わるのです。 - 1956年、アメリカの医学研究者であったフレッド・バング(Fred Bang、1916〜1981)は、カブトガニの血の奇妙な特性に気づきました。
- なんとカブトガニの血は、エンドトキシン(内毒素:細菌内に含まれる毒素のこと)と反応すると、血球であるアメボサイト(変形細胞)が凝固して塊になるのです。
エンドトキシン(内毒素)は、医薬品や医療機器に付着し、人体に入ると、発熱や敗血症性ショックを引き起こす恐れがあります。
そのため、注射器やペースメーカー、人工股関節といった滅菌医療機器に対しては、内毒素による汚染がないかどうか厳重にチェックしなければなりません。
その検出能力を、太古の昔から存在するカブトガニが持っていたのです。
今のところ、内毒素を検出できる天然資源はカブトガニの血液だけだと言われています。 - その後、バングの発見を引き継いだ研究者らは、アメボサイトの溶解物を医薬品の汚染検査に応用する物質を開発し、これを「ライセート試薬(LAL、リムルス変形細胞溶解物)」と命名しました。
- 1977年、アメリカ食品医薬品局(FDA)により、ライセート試薬の正式な使用が認可されています。
- 内毒素にライセート試薬を落とすと、凝固し始める
- ナゾロジーHPよりお借りしました。
- カブトガニの血液利用は、現在、肝臓疾患、感染症など医学をはじめ、獣医関係、放射性医薬品などの薬学にも利用されています。そして、エイズウイルスに対する抑制作用も判明しています。
また、海や河川の汚染度を測定したり、私たちの日常食品の衛生管理にも利用されていて、必要不可欠なものとなっています。
凄いニャ! カブトガニ
このように、カブトガニは人類に必要不可欠なのですが、カブトガニの生息数は、世界的に減少しています。
「今世紀中に絶滅のおそれがある・・・」とされ、まさに危機に瀕しているのです。
利用の方法の見直しの必要性
「自然と人とのバランスを保つ利用」を考え、1尾の成体の血液(300cc)から3分の1にあたる100~120ccだけを採血させてもらって海に帰されています。 - この採血の過程で死亡する個体もわずか3%と目されていました。ところが、その予想値は事実とかなり違うことが分かってきたのです。
- 1990年、大西洋岸にて毎年、約124万匹のアメリカカブトガニが産卵していると推計されていました。
- 2002年以降、その数は約33万匹まで減少していたのです。
- また、2010年の研究では、採血後のカブトガニのおよそ30%が死んでいるという結果が出ました。
これは当初の予想値3%の約10倍にも上る数値です。
- カブトガニが激減している現在、私たちは、それこそ科学の力をフルに発揮して化学合成し、カブトガニ依存の状況を変えていかなければならないのではないでしょうか。
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動画時間: 1分26秒
- はい。 今回のレポートはここまでです。
- 私たちの生活が、2億年前から命を繋いできた生きた化石の血液によって守られていたなんて、びっくりでしょ。
- それじゃあ、またね。