上士幌町
いよいよ今回の旅のメイン訪問先である「タウシュベツ川橋梁」が近づいてきました。
タウシュベツ川橋梁は1937年完成の長さ130mのコンクリートアーチ橋です。
ダムの水が少ない1月頃から凍結した湖面にその姿を現わし、水位が上昇する5月頃から沈み始め、夏頃には湖底に沈みます。このように、季節によってその姿が見え隠れするアーチ橋は日本でここだけで、それが幻の橋といわれる所以です。
まず本体の前に展望台から訪問します。
本体に近づくにはゲートの鍵が必要で時間も限られますが、展望台は24時間誰でも無料で訪問できます。
林の中にありますが、車から降りて展望台までは徒歩3分程度の平地なので、登らなくても良い展望台です。
人気観光地のため人は常にいる感じなので、熊の心配はさほどありません。
他に2組の人がいました。
展望台から遠くに橋梁が見えます。
展望台を出ていよいよ橋梁本体に行きます。
国道からの林道入口は若干わかりにくいですが、道の駅で鍵を借りた際に現地までの行き方を詳しくカラープリントした紙をもらえたので迷いませんでした。
林道のダート道に入ってしばらく行くとゲートが現れました。
南京錠を外そうとするのですが、なかなか開きません。
丁度向こうから外に出ようとする職員の車が来て「開けますよ」と言ってくれたのでお願いしたのですが、そちらの鍵でも開きません。
途中から向こうの車に同乗のベテランスタッフが「開けるコツがあるんだよ」と開けてくれて入ることができました。
今はいいけど出る時に自分で大丈夫かと不安になりました。
キーホルダーはでっかい通行証を兼ねており、駐車中はこれをフロントガラスに掲示します。
やっと広い場所に出ました。
駐車して長靴に履き替え、ここから約200m弱歩きます。
昔は線路が通っていた1本道です。
日当たりが良くなく、地面はぬかるみです。
湿気が多いので倒木だけでなく看板も朽ちていますが、ぬかるみは無くなって来ました。
もう少しです。
糠平湖に出ました!
今来た道は廃線跡なので、その延長線上に橋梁があります。
橋の上はもちろん立ち入り禁止です。
付近を散策しましょう。
離れるにしたがって全貌が見えてきました。
いつ崩れてもおかしくないと言われていますが、今年の6月頃に大きく崩れたそうです。
対岸にも人影があったので、渡ってみることに。
浅瀬を探して上流へ遡るのですが、川の水深はなかなか浅くなりません。
意を決して長靴で突入しましたが、見事に水が靴中に侵入しました。
水深は長靴より低いのですが、勢いよく流れてくる水が長靴に当たって上部から侵入するということを計算に入れてなかったです。
何はともあれ対岸に着きました。
崩落のひどさが良くわかります。
橋の反対側に着きました。
1937年竣工という事は、昭和初期の戦前。
外側こそ鉄筋コンクリートですが、中身はこの付近で採集されたと思われる石です。
物資のない時代の土木建築という感じがします。
近くでよく見るとセメント使用量を抑えるために、中味よりは小さめの石を混ぜ込んでかさ増ししています。
苦労の後が感じられます。
元の岸の方に戻って来ました。
やはりこちらからのほうが見栄えはします。
いちばん見たかった風景であるタウシュベツ川橋梁が無事に見れました。
展望台観覧組と違い、ここまで来ている人は予約のゲート鍵争奪戦を通過して有料で来ている人で、意気込みが違います。
そのため時間をかけてゆっくり写真を撮ったり、くつろいで雰囲気を堪能している人が多い気がしました。
橋梁を後にし、濡れた靴下を履き替え、再び車で林道を引き返します。
ここに来る人は基本全員が車ですが、徒歩で一人歩く白人男性がいました。
この男性とは橋脚近くですれ違っており、腕にタトゥーがあったのですが悪い人ではない、秘境バックパッカーの感じでした。
4kmを歩くのは気の毒かと思い、窓を開けて身振り手振りで「乗りなよ」と言ったのですが、「ズボンが汚れてるからいいよ」という感じで返され、「好きで歩いてるのかな?」と思い、それ以上深追いはしませんでした。
それにしてもどうやってここに来たんだろう?
4kmのダート道を抜けて国道に出てもそこから公共交通機関はないのに?
心配していた南京錠は無事に開けられました。
再び国道に戻り、峠方面に北上します。
国鉄士幌線はかつては糠平湖の北まで険しい山中を走っていました。
最大勾配25パーミルという急こう配のため、暴走した列車による死亡事故も起きています。
1966年の地図です。
緑部分がタウシュベツ川橋梁で、橋の北側に「とかちみつまた」、「ほろか」の2つの駅があります。
この当時の道路はまだ道道で線路の東側を通っていますが、これ以降に国道が整備され現在の国道273号線は線路跡より西側を通っています。
道道時代は道路が三国山(三国峠)で終わっていますが、国道になってからは以北の上川町と繋がりました。
国道を北上すると、国鉄幌加駅跡がありました。
この廃線跡を進むと廃線橋脚に出るはず。
途中から白樺並木になります。
橋脚に着きました。線路は撤去されています。
側方に回り、国道の道路橋から撮影しました。
「士幌線第五音更川橋梁」です。
「北海道開発局 幌加除雪ステーション」がありました。
トイレと飲料自販機があり、一般開放されています。
さらに北上すると音更取水ダムがありました。
マップ上のダムという言葉に惹かれ停車しましたが、ただの水門という感じ。
さらに北上し、天狗の滝に着きました。
足元が悪い中を降りてみました。
うーん、いまいち・・・。
三国峠の頂上が近づくと、緑深橋を渡ってすぐの右手に知らないとスルーしてしまう駐車スペースがあります。
駐車して徒歩で緑深橋へ引き返します。
写真撮影のための(道路)駐車禁止の看板がありますが、あの駐車スペースがないとみんな路上駐車してしまうその理由は・・・。
緑深橋からのこの風景です!
この橋は「松見大橋」という道路橋で、ここに来る前に先ほど渡ってきた橋です。
上を小さな車がゆっくり(実際はそこそこのスピード)走っている様子はしばらく見ていられます。
実際、三脚を構えて動画撮影をしている人がいました。
三国峠展望台に着きました。
ここが上士幌町の最北地点で、ここから先は上川郡上川町になり、おそらく下り道になります。
カフェと公衆トイレ、水飲み場はありますが、自販機はありません。
北海道の国道の中で一番標高の高い峠(標高1,139m)ですが、木々のせいであまり見晴らしは良くありません。
三国峠を見た後は、今来た峠道を下って戻ります。
マップで先ほど訪問した幌加駅跡の東側に「音更トンネル」という文字を発見。
入口は塞がれており中には入れないようですが、トンネル遺構も見たいので行ってみることにします。
幌加駅近くに車を停めて廃線跡を東に歩きます。
駅ホームを過ぎるとすぐに線路は無くなりました。
進むにつれて道の両脇の木が伸びてせり出し、道の草も茂って来ました。
まっすぐな道ですが向こうが見えません。
5分ほど歩きましたが、熊の危険性を考え断念しました。
再び車で国道を引き返し、五の沢橋梁の駐車場に停めました。
この道を進みます。
同じ廃線跡でも先ほどと違って遊歩道の感じがします。
看板がなければ見過ごす感じの短い橋です。
両脇に草が生えている部分から数メートルが橋です。
沢に降ります。
この橋梁は綺麗に残っていました。
再び車で国道を引き返し、三の沢橋梁の駐車場に停めました。
ここの駐車場は広かったです。
観光客も行きやすい遊歩道。
ここは橋梁に歩行者用手すりもつけられています。
タウシュベツ川橋梁の完成は1937年なのにここは1955年完成となっていますが、1953年の糠平ダム着工に伴い国鉄士幌線が部分的にダム湖に沈むことになったことによりこの周辺の線路ルート変更があったためです。
沢まで降りる階段もありました。
ここは高さもあり立派な橋脚でした。
近くに「エコレール」という廃線跡の線路を利用した自走式のトロッコがあったので体験してみました。
この付近はタウシュベツ川橋梁付近と違って他に観光客もおらず閑散としています。
1300円を現金払い。
自転車を改造したトロッコの前に跨いで乗るベンチシートが付いています。
5分程度の講習を受けて出発!
途中に第二・四の沢橋梁がありましたが、沢に降りられる感じが無かったので上を通過しただけでした。
この赤コーンが折り返し点のマークです。
転車台に乗せて人力で180度回転。
引き返します。
第一・四の沢橋梁とゴールが見えました。
往復15分程度のアトラクションでした。
トロッコは3台ありますが行き違いができないため、異グループ3組が時間差で出発は難しいかも。
橋梁に行く廃線跡への入口がこのすぐ近くにあるとのことで、親切に表まで出て途中まで案内していただきました。
建物裏にある廃線跡道です。
この先に橋脚があるとのこと。
2,3分歩くと見つかりました。
この橋脚も上は歩行者用手すりが付いた遊歩道になっていました。
高さがあるので沢に降りる階段も長い。
全貌が見えました。
ここは橋脚郡のうち唯一、橋脚に接近することができ、下をくぐれます。
反対側から撮影。
これで鉄道遺構の橋脚郡は全て見終わりました。
次の訪問地へ急ぎます。