9月15日、投資インフルエンサーのたーちゃんが9月10日に亡くなったというポスト(本人のアカウントから遺族が発信)を見ました。
最近この方の著書を読み終えたばかりで、9月15日はブログ用の書評を書き終えた日という偶然が重なったので驚きました。
ブログに上げるための書評は何本かストックがありますが、今春読了のものもまだ公開できていない状況です。
今後順次公開予定でしたが、今回の逝去を受け「50万円を50億円に増やした投資家の父から娘への教え」の分を先に公開します。
この本を読みたいと思ったきっかけは覚えていませんが、おそらく週刊誌の書評欄を見たか、偶然amazonの投資本レビューを読んで話題になっていたのが気になったかだと思います。
その時に図書館の蔵書検索でヒットしたので予約をしましたが、大変人気があるようで予約数が何十件もありました。
1年ほど経って忘れた頃に貸出可能のメールが届いたので借りにいきました。
他人の投資法にはさほど興味がなく、著者の投資人生を知りたいと思ったのがきっかけです。

読んでみたところ、著者の人生は結構重い話でした。
著者は1975年生まれの医師で、末期がん患者です。
文章は残される2人の愛娘に語る形で綴られています。

パート0からパート6の計7章から成りますが、パート1から始まる投資法の解説の前のパート0として自身の生い立ちや経歴が最初に語られます。
自分にとってはこの本の読みたい部分はほとんどこのパート0に集約されていました。
著者の経歴
上の画像の経歴とは別に「パート0」に記載があった著者の経歴を、自分でまとめてみました。
1975年、三重県熊野市に生まれ、父は公務員、母は専業主婦という普通の家庭で1歳から神戸で育つ。
子供の頃から勉強ができたが、過信により勉強をしなくなり、公立高校進学を断念。
私立高校から「お金持ちになりたい」という理由で医者を目指したが、英語の成績が悪く地元の神戸大学進学を断念し、偏差値的に見劣りしない広島大学医学部に入学。
大学生活は平日は麻雀、土日は体育会ヨット部の日々。
20歳の時、ロバート・キヨサキのベストセラー「金持ち父さん貧乏父さん」を読み、家庭教師のアルバイト代を元手に投資を始める。
最初はうまくいかなかったが、本を読んで勉強し買ったセガ株が3倍以上となる。
もともと社会的使命で目指した職業ではなかったので、医学部の6年間で「自分には向いていない」と気付くが、医師国家試験を目前に控えて引き返すことができない。
そこで「医師としてほどほどに働きながら株式投資で金持ちになる」というライフプランにシフトし、呼び出しが当たり前の外科や産婦人科ではなく、麻酔科を専攻した。
合格率(2025年で92.3%、新卒に限ると95.0%) の高い医師国家試験に周囲はみんな合格する中で、自分だけがまさかの不合格。
株式投資もうまくいかず元の資産額50万円に戻り、「試験も投資も勉強しなくてはいけない」と本気で思うようになり両方とも猛勉強に打ち込むようになる。
浪人中は試験よりも株の勉強に力を入れ、年間100冊ほどの株書籍を読んだ結果、「割安な株の長期保有が株の王道」と気付く。
なお、もしストレートに医師試験に合格していたら、その後2年は研修医としての激務に追われ株の勉強ができなかったので違う人生になっていた。
翌年無事に医師国家試験に合格したので、激務である研修医期間の2年は売買しなくて済むオーストラリアの金鉱株を購入。2年後に10倍の9000万円で売却。
ここから20〜30銘柄に分散投資し、2005年、29歳で億り人になるが、2006年から株式市場が振るわなくなる時期が続き、1億円前後の横ばいが続き、2008年のリーマンショックで7000万円まで目減りする。
当時結婚目前だったが、結婚資金も含めた全財産を全てフロイント産業株にぶち込んだ事を相手に強く責められ結婚できなくなるかもしれない事態になるが、「年収10億、資産50億の会社が20億で売られているのはどう考えても割安」と信念を貫き、短期間で2倍になり結婚式を挙げることができた。
その後2009年に買ったアークランドサービス、神戸物産の売却で資産2億円、アイフルの売却で2013年に30代で6億円に到達。
子供が生まれてからは株の勉強をしなくなり、パフォーマンスが低下するが、一生食べるに困らない財産ができたことで、38歳で勤務医を辞め専業投資家になる。
在宅時間が長くなることで家事や育児で妻と喧嘩になることが増える。
麻雀ゲームをしても首が痛くなり、雀荘に通い始めるが老人ばかりで、FIRE生活は半年で飽き、何をしている人か不審がられたこともあり、知人からオファーを受けた新病院の副院長として復職する。
しかし株式投資で養われた経営者視点により技術者目線の院長と対立し退職。
不動産投資としてボルダリングジムを経営を始め、フリーの麻酔科医として週1回程度働くようになり、ジムの経営を社員に任せられるようになったので、週4〜5日働くようになる。
2022年にステージ4の直腸ガンを宣告され、「自分が生きてきた証を投資の業績として残したい」という思いが高まる。
ガンの発見が遅れたのは、麻酔科医として40代で大腸・直腸ガンを発症することはないという思い込みがあり、血便を痔と判断して放置していたため。
ガン発覚後も株分析を重ね、10億以上の元手の多くを名村造船所に投じ想像以上に高騰したところで他の造船銘柄とともにも売却し、HD韓国造船海洋に集中投資し、資産50億円に達する。
4回の手術をするが翌年2023年にガンが再発、2024年49歳でに肺と肝臓への転移が見つかり「50歳が迎えられても51歳はわからない」と告げられ、現在も闘病中。

投資法
投資法は「資産バリュー株」「収益バリュー株」とその応用「シクリルバリュー株」の3種類の投資法が具体的な銘柄を挙げて解説されています。
銘柄スクリーニングから絞り込みまで具体的な説明があり、本の最後には実際の絞り込みに使える「企業分析レポート」の用紙が付録に付いています。
しかし、サイトで条件を入力して検索するスクリーニングまでは容易にできそうですが、そこから先の絞り込みはある程度の知識と根気が必要で再現性は低いと感じました。
特に「シクリルバリュー株」は景気の循環で長い赤字期間から黒字に転換する株を狙うため、四季報の全銘柄を調べても全くヒットしない時代の方が多いそうです。
さらに相当の自信がないと、こんな株を赤字時代に買うのは素人には困難です。
例えて言うなら「50kmを移動するのは誰でも歩けるが、根気が必要なので再現性が低く、やる人はいない」という感じでしょうか。
医師になれるほど頭が良く、長期に勉強を続けられる粘り強さは天性のもので、誰もが真似できるものではありません。
ちなみに著者は本の執筆時(2025年6月)に「HD韓国造船海洋」という韓国株に相当な額の投資をしており、証券会社から何の目的で買っているのかを怪しまれて問い合わせが来たそうです。
この株は「楽観的に見て2026年で黒字化、2033年あたりまで最高益を更新し続ける」という予想です。
本の最後は「エピローグ」で締められており、ここで「50億円を稼いだ先に見えていたこと」が娘さんへのメッセージとして語られます。
「どれだけ資産が増えてもお金の使い方が変わらない。自分は散財する才能が皆無。」
「お金を増やすことよりも自分のシナリオ通りに株価が動くことが楽しく、結果としてお金がついてきた。」
「一度FIREして専業投資家になったが半年で飽きた。多くの人が憧れるFIRE生活は暇で退屈なものだった。」
「無職になるのにも適性があり、ほとんどの人にはそれが備わっていない。」
「仕事と別の手段でお金を稼いでいることが、ずいぶん気持ちを楽にしてくれた。」
実際に巨大な資産を築いた人の感想がこれらの言葉で纏められています。
自分としては「パート0」と「エピローグ」を読むだけでも、この本を読んだ意味がありました。
この方はX(@yhdgj675)もされていますが、現在の主な内容は病状報告です。
病状は悪化していき、現在では自力でトイレにも行けないとのこと。
「せっかく投資で大金を稼いでも自分で使えずに死ぬ」というのは、自分のようにそれが納得できていれば心の準備もできますが、この方の場合は予期していなかった病気によってそれが早期に訪れたため、あらためて見ると残酷です。
しかしその手法を愛娘や世間に向けて伝えようとした姿勢には感銘を受けます。
一日でも長く生きられることをお祈りします。
(追伸:ご存命であった読了時の感想として記載済みだったため、最後の一行ほか感想文は生前の前提でそのまま残しました。)
【読了日:2026.9.13(日)】