今年は大河ドラマの影響で家康に関する文章を少し読んでみた。尚、坂口安吾「家康」はYouTubeに朗読があったのでそれを聴いている。

 

書店には歴史家が書いた新書本が多く並んでいるが、それらには食指が動かなかった。司馬遼太郎の本は気になったけど、かつて「坂の上の雲」を第1巻で挫折したこともあってパスして、解説本で軽く読むのに留めた。岡潔(数学)と長沼伸一郎(数学と物理)は理系の大家。専門外だからこそ別の視点があるものだと思った。

 

前者は利己主義で勝手な男と評しており、後者は家康そのものと言うより西軍にとってどこで戦うのが相応しかったのかの考察である。司馬遼太郎は家康キャラを「三河人気質」から解き明かしたのだとか。

 

<ネットより> ※再掲

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以下、私が読んだ順に沿ってリンクを付けている。

 

・岡潔「日本民族」

 

・長沼伸一郎が「関ヶ原」に触れたHP掲載文「海軍戦略入門講義」

 

・NHKテキスト「100分de名著『覇王の家』」

 

・坂口安吾「家康」

 

それぞれに興味深かった。今年1年ドラマを見てきたことで、自分としても家康像をハッキリさせる事ができた。天下泰平と安定した武家社会を開いたのも一面だが、武士としての勇ましさを感じるシーンが少なかったのも事実。長篠の戦いはどうみても織田の騎馬柵と鉄砲隊に助けられている。関ヶ原は情報戦の要素も大きかったであろうし、武将らしく勇ましい姿を示したのは三方ヶ原の戦いと小牧長久手の戦いだけじゃないか。

 

序盤に岡崎で自害を仄めかすシーンがあった。あれは情けなかった。それでも、NHKの歴史番組でそれとても家臣団に「殿を守らねば」と結束させるテクだと評しているのを聞いてナルホドと納得した。

 

今川、信玄、信長、秀吉に耐える年月があまりに長かった。そこで正面切って歯向かえばカッコよかったけど、我を通せば北条や上杉、西国大名のように潰されてしまったかも知れない。固執して主義主張を強く押し通さなかったからこそ生き残れたのは事実だろう。それは臨機応変と評価していいし、歴史番組で「疾風に勁草を知る」と評していたが危機に瀕して処世術を学んできたとも言える。

 

ただ、武力で勝ち残れた事と平和を維持できるスキルは別物、天下泰平の世を築けたのは長くクセのある戦国大名に振り回されてきた家康だからこそ。王道と覇道の違いは分かってないが、徳川四天王が全て亡くなった後でも長寿で粘る事ができたからこそ天下を取る事ができた。そうしてみると勇ましい姿が求められる大河ドラマの主役には向かない武将なのかも。「家康では大河ドラマの視聴率を取れない」って説も案外と正しい気がしてきた。

 

ただ、三河一向一揆で歯向かってきた家臣を不問に付して許す、長年対決していた武田の家臣も迎え入れるなど寛容な態度を取った事で徳川の軍勢は規模を大きくできたし、三河家臣団が殿を思う忠臣の気持ちも大河ドラマで随所に見られた。だからこそ天下を取れたのではないか。