課題本から受けたインスピレーションを基に800文字のエッセイを執筆して、月一でセミナーと課題作品の合評会をします。
9月の課題図書
中野信子 著 『新版 科学がつきとめた「運のいい人」 』
「運のいい人」は、生まれつき決まっているわけではありません。
生活していく上での考え方と行動パターンによって決まります。
では、どのようにしたら「運のいい人」になれるのでしょうか?
(Amazonより)
リライト前はこちら
9月定例会で城村先生チームの特別賞でした。
フィードバックは
・仕事をやめる理由がわからない。
・「会社からの信用なんて気にする必要はない」はよくない。
何か特別な日にやってしまったほうがよい。
リライトしたエッセイはこちら↓↓↓
『神様が伝えたかったのは…』
それは、9月の最初の月曜日の出来事だった。
私は、いつも通りに早めに家を出て、仕事の訪問先へ向かっていた。
地下鉄からJRへ乗り換えのとき、
「アッ⁉ やかんの火を消し忘れたかも」
家を出る前に、ルイボスティーを沸かしていて、弱火にして蒸らしていたことまでは覚えている。
火を消したかどうか…?
だんだん不安になってきた。
「今日は、午前の1件だけだから2時間後には帰宅できる。やかんが空炊きになる前に帰れる」
「いや、ダメダメ。今から会社に電話して事情を話して帰るべき」
「今日は、最後の仕事の日なんだよ。有終の美を飾りたいでしょう」
そうなんだよね。
今日は、2011年から始めた健康カウセリングの最後の仕事の日。
高3の次男が帰宅したときに「おかえりなさい」と言いたくてやめることにしたんだ。
最後の最後でミスをしてペナルティを受けたくない私と、ペナルティなんか気にしない私が葛藤している。
どうしよう。
「引き返そう」
電車を降りて、反対のホームへ移動した。
今度は、家が火事になってないか不安が込み上げてくる。
「カンカンカーンって、消防車が来ていたら…」
「家族が家に住めなくなったらどうしよう…」
「神様、ごめんなさい。息子たちが風邪を引いたときも、仕事の優先にしてました。これからは、家族を大切にします」
今までの反省が、走馬灯のように思い出される。
やっとの思いで、自宅最寄り駅の改札を出た途端、
「アッ⁉ 広大が居たわ」
大学生の長男が自宅に居ることを思い出した。
すぐに電話したら、やかんの火は消えていた。
急いで訪問先へ折り返し、10分の遅刻で済んだ。
事前に会社が訪問先へ連絡してくれたおかげもあり、訪問先の人たちは怒ることなく、親切に接してくれた。
会社からのペナルティや注意もなかった。
結局のところ、会社からのペナルティを受ける心配は、私の思い込みに過ぎなかった。
正直言って、外出前に入念に確認する私がこんなミスをするなんて信じられない。
神様から、「仕事に未練がないのか?」って試された気分である。
そして、神様はこう伝えたかったのだろう。
「大切なことの優先順位を間違えるな!」
作品の意図
中野信子さんが好きで、新版になる前の本を持っていました。
9月初旬に失敗をやらかしたときに、「これは、エッセイにするしかないなあ」と思って書きました。
意図はなく、右脳で書いて、左脳で推敲、なぜ失敗したのかと検証しているような感覚でした。
書いてみたら、摩訶不思議な世界で、村上春樹さん風かなと思っていたら、翌朝、星新一さんのショートショートの世界だと降りてきました。
おそらく、私の潜在意識の中で星新一さんが生きていて、私自身がショートショートの世界の主人公になって、摩訶不思議な世界へ行って、メッセージを受け取ることだったと考えると腑に落ちました。
このエッセイでは、錯覚、幻想、異次元の世界へ行く装置が「乗り換え」と「アッ⁉」、現実世界へ戻って来る装置が「改札」と「アッ⁉」になってます。
異次元の世界で窮地に追い込まれて、最後は懺悔をしてしまうところに、焦りとおもしろさを感じ取ってもらえたらいいなあと思います。
さすがに、50歳にもなって「お母さん」という言葉は出てこなくて、日頃お世話になっている先輩の名前が出てきました。そこは書きませんでした。
最初は、タイトルを「潜在意識が伝えたかったのは…」にしていました。潜在意識の中に神様が存在することを思い出して、神様に変更しました。
あとがき
昨年、樺沢紫苑先生が、ジブリの『君たちはどう生きるか』の解説にユングの集合的無意識を例えに使っていました。異次元の世界へ行くときに装置や仕掛けがあって、村上春樹さんの小説は井戸、夢、『千と千尋の神隠し』ではトンネル、『不思議の国のアリス』ではウサギの穴と説明していました。
そのことも無意識にヒントにしていたと思います。
自分で書いて読んで、おもしろいエッセイになったなと密かに喜んでます。