それでも暗いうちから走る(その3) | 旅はブロンプトンをつれて

旅はブロンプトンをつれて

ブロンプトンを活用した旅の提案

○見たこともない都会の顔をみることができる
バブルのころ、「24時間戦えますか」とか「眠らない街東京」というCMのコピーがありました。
私も若い頃、徹夜も含む睡眠2,3時間という生活を続けたことがあります。
ビルで仕事をしていると、だんだん外の空が白んでくるのを見たのも、一度や二度ではありません。
あの時は「過労死」ということばが飛んでしまうほど、頭の中が真っ白でした。
今でも一部の業界の人たちは、眠らないで仕事することが当たり前のように考えているといいます。
だから、眠らなくても活動できる違法な薬を求める一定の人たちがいなくならないのでしょう。
あんなものにとりつかれたら、それこそ一生自己の嗜癖に悩まされ続けることになるにもかかわらず…。
しかし、よく考えたら、健康な人だって眠らないで活動ばかりしていたら病気になります。
いや、病気になっている自分にも気付けないということなのかもしれません。

そんなネガティブな理由からではなく、早朝自転車出勤は、自分が見たこともない都市の顔を見せてくれます。
夜電車がストップしている時にしか走らない、工事車両や検査車両。
灯りを落とした駅。
ネオンサインはもちろん、いつもは動画を流しているビルに掲げられた大型ビジョンも沈黙しています。
そして、いつもは人であふれている駅前に、カラスさえ見えず、路上にタクシーだけが溢れるように列をなしていて、まるで人が消えたSF映画の中の世界みたいです。
こんなターミナル駅の周囲が見れるのは、おそらく午前2時から始発が動き出す午前4時過ぎまでの僅かな時間でしょう。

私のように、電車で1時間もかからないところに住んでいたら、わざわざここに宿をとることもありませんし、仮にかつての仕事のように、帰宅する手間を省くために宿泊することがあったとしても、わざわざ起きて外へ出る時間ではなく、むしろ寸暇を惜しんで眠る時間だと思います。
これは都心だけでなく、旅先でも同じで、ブロンプトンだとお散歩の効率が良いものだから、京都などまだ観光客であふれる前の清水寺や四条河原町を、のんびりと走ることができます。
もちろん、その分早起きしなければなりませんが、前述したように、朝食前の運動習慣は脂肪を分解、燃焼させるのにもっとも適していますから、ぜひ最初は旅先で試し、できそうだと思ったら、日常の習慣として取り入れることをお勧めします。

○朝は空が美しい
いうまでもなく、日の出を見るには日の出前から起きていなければなりません。
夏は太陽があがる角度の関係なのか、晴天の日であっても日の出の1時間~40分前くらいから、最初は北東の空がぼんやりと明るくなったかなと思いきや、どんどん空全体が明るくなってゆきます。
これが冬場だと、いつまでも夜の空が西の空には残っているというじょうたいなので、対照的です。
だから夏至前後の2ないし3カ月くらいは、完全な夜空である日の出の1時間前以上から外に出て走った方が、その急激な変化を目の当たりにできると、こうして家から北方向にあたる都心方面に走るように走るようになって気が付きました。
もちろん、自転車で走っているわけですから、空ばかり見ているわけにもゆきませんし、あまり上を向いて走っていたら却って危ないのです。

それに、冬場のように、毎日朝から晴天が続くということは少なく、夏期は曇天の日も多いですからから、毎日というわけではありませんし、日によって見え方も一瞬だったり、ある程度の時間だったり、まちまちですから不確定要素が多いのですが、それだけに、それがたとえ一瞬で、ビルの谷間からであったとしても、なにかすごく神々しいものを感じます。
また一日のはじめの方に見る珍しい風景ですから、見ることができると「今日は良いことがあるかも」と幸先の良さをうけます。
都会は相対的に人工物が多く、その時間に起きている人も美しい空に見入る人は少ないと思います。
自分も子どものころは沈む夕日の美しさに見とれていたのですが、いつの間にか空を見上げることも少なくなっていた自己に、この頃になって気が付きました。
だからこそ、今のように早起きして身体を動かせること自体に感謝をしている自分が居ます。
こうして、運動できる自分を人間を超えた存在に対して祈り、感謝できるというのは、超早朝自転車通勤のモチベーションにもなるのです。

○おしまいに
このように、身近なところにある珍しい光景を見聞きすることができ、かつ健康にもよい日の出前の自転車通勤ならびにお散歩ですが、私だって最初からできたわけではありません。
もう何度も書いてきたように、夜寝る時間と、夕食を食べる時間、さらには昼食の時間に朝食の時間を前倒しにすることで、30分、ときには15分ずつ起きる時間を早めていった結果です。
私も小学生の時は家から歩いて10分もかからない場所に学校があったのが、中学に入るやいなや片道の通学時間が1時間15分~1時間半になり、起きる時間が7時半から6時前と一気に1時間半以上はやまって辛い思いをしたこと、ここで書いたように、仕事のために睡眠時間を極端に削った時期があり、それが終わっても夜更かしの習慣がなかなかとれなかったこと、そうこうしているうちにどんどん肥満体質になってしまったことがあって、「このままではいけない」という思いから今の習慣を身につけています。

最初は誰でもできるかどうかわからないし、半信半疑のままはじめるのですが、そこから自分に合った方法を何年もかけて工夫するうちに、早起きの習慣が身につきました。
これは夜にしっかり眠ることが前提で、歳をとったから眠りが浅くなり、自動的に早起きするようになったというのは違います。
今もできるだけ良い睡眠をとれるよう、早起きとともに、ちゃんとお風呂に入って体を温めるなど、寝入りをよくする努力も並行しています。
これを読んでいる皆さんも、夏は早起きしてラジオ体操をした子ども時代を思い出し、早朝に自転車に乗ること、とくにブロンプトンを持っている方は、始発電車の動く前に近所を走ってみるということをなさってみてください。
もし時間がゆるすなら、そういう習慣をつけようと、ご自身でいろいろと工夫さなってみてください。
おそらく、日常では気が付かなかったご近所の街の様子を垣間見ることができると思いますし、歳をとってもなお、少なくとも健康のためにはつけることがより良い習慣であることは間違いないと思います。

(おわり)