旧甲州街道犬目峠越えをトレーニングにする | 旅はブロンプトンをつれて

旅はブロンプトンをつれて

ブロンプトンを活用した旅の提案

旧甲州街道の旅も関東平野を東から西へ横切り、小仏峠を越えて相模川を遡り、途中犬目峠を越えて大月を過ぎ、今度は郡内地方と呼ばれる相模川流域と富士川流域の甲府盆地を分ける笹子峠にかかっています。
旅は当然に尺取虫方式で、第一日目は日本橋から八王子まで行きました。
本当は高尾まで詰めたかったけれど、あちこち寄り道しながら写真も撮りながらでしたので、八王子が限界でした。
その日は横浜線で菊名まで出て家に帰りましたが、国道20号線という幹線道路を走るシーンが多かったので、
翌週末の第二日目は八王子から小仏峠を越えたのですが、旧東海道の箱根峠は基本石畳道は自転車を置くか背負って歩き、鈴鹿峠は意外なほどあっさりとしていたので、はじめての押し歩きによる本格的な山道の峠越えになりました。


高尾にファストフード店はないことがわかっていたので、いつもの武蔵中原始発4時43分発南武線で立川乗り換えにて八王子までゆき、そこからブロンプトンで走り出して高尾まで向かう途中の西八王子駅前のファストフード店で朝ご飯を済ませます。
八王子駅から走り始めたのが5時40分で、途中あちこちよりながら、西八王子駅前を出たのは6時45分。
これなら何とか涼しいうちに小仏峠への車道終点まで詰めることができそうです。
そこから小仏峠をめざすわけですが、やはり朝食後はどこかでトイレにゆきたくなります。
だから本編でもご紹介したように、きれいですいているトイレ(高尾梅の郷まちの広場)を知っておくことが重要なのです。
結局小仏峠の入り口に着いたのは8時05分。
小仏峠の標高は僅かに548m。
峠までは押し歩きで30分でした。
林間の朝はそれなりに涼しかったものの、季節はすでに夏にはいりかけていた(6月第2週)ので、ことのほか汗をかいてしまいました。

峠の上り下りも、上りより下りの方が物理的に楽だと思っていたらさにあらず。
自転車を担ぐ階段あり、不用意に乗っかると転がる石ありで、峠の上から自転車に乗れる場所まで下るのに、登りよりも長い35分がかかりました。
そこから途中小原宿本陣も見学したので、相模湖へくだったときには10時10分になっていました。
水分補給が必要だったので、湖畔にあるファミレスで朝食を取りながら、ゆっくり休みそこを出たのが11時30分。
八王子駅を出発して小仏峠を越えるだけで6時間近くかかってしまった計算になります。
その日は旧甲州街道のその区間ははじめてでしたし、道を知ることと写真を撮ることを目的としていたので、時間はそれほどきにしてはいなかったものの、それでもペースが遅すぎます。
午後は犬目峠を越えてとにかく最低でも大月までは行きたいと考えていました。


朝も早かったし、少し眠かったので居眠りも含めて1時間以上休んだから気を取り直して続きを走り出したら、難所の貝沢橋はあまりの草深さに道が分からず、吉野宿の旅籠もしっかりと見学し、その先の藤野あたりでカメラのSDカードがいっぱいになってしまい、電気屋さんや中央道相模湖PAに併設されたコンビニに行ったものの取り扱っておらず、結局吉野宿のコンビニに戻って購入しました。
それから気を取り直して境川橋から諏訪関所への坂道をのぼり、上野原の中華料理屋さんでお昼を食べたのは15時30分。
私にとってはもう夕食です。
15時をまわってこれから山に入るのは、これが登山なら危険です。
なぜなら、山の天気は変わりやすいし、山影にいると、陽はあっという間に落ちるからです。
それでも夏でまだ陽が高いことをよしとして、鶴川宿までくだってから犬目峠を目指したものの、登り切った野田尻付近でお腹が痛くなり、仕方なく談合坂サービスエリアのトイレに駆け込みました。
この時点で17時25分。

そこから矢坪坂にはじまる、「熊に注意」の看板がある、犬目峠特有の横移動の山道に入ったのですが、夏の午後の空はどんどん雲が厚くなり、杉林のなかなど、もう夜のとばりがおりかけたような暗さです。
こんな時にかぎって、道端の供養塔だの、座頭転がしだのというおどろおどろしい名前のものが目に付きだします。
お寺の人たちの「(死んでいる人より」生きている人の方がよほど怖いよ)ということばをたよりに、空元気をだして前に進みます。
そして道標も殆どない中、途中間違えて扇山への登山道に入ってしまったり、旧道部分を見過ごしてもとに戻ったりと時間がどんどん過ぎてしまい、下の鳥沢に降りたときは18時30分をまわっていました。
夏至が近く、まだ残光はあるものの、とてもここから猿橋を渡って大月まで行く自信がありません。
だいいち、この時間ここから帰っても、帰宅するのは20時30分を過ぎてしまうことでしょう。
ということで、はじめての道、しかも2つの峠越えがあるのを知りながら、中央本線の特急停車駅としては隣駅もある八王子から大月まで、自転車なら1日で行けるだろうと考えた私の計画が甘く、結局鳥沢駅から帰ることになりました。
この日、疲れ切って武蔵小杉駅に着いたのは20時40分でした。


その次の旧甲州街道尺取虫方式は鳥沢からはじめることになり、結局ちょうどお昼時をはさんで笹子峠を越えた私は、その日は甲府盆地の石和温泉までたどり着いたものの、昼食は食べられませんでした。
改めて、旧甲州街道尺取虫の旅は、同様の旧東海道の旅のようにはゆかないことを思い知らされました。
しかし、峠越えが大変な分、これをブロンプトンによる山越えの練習に使えないかとも考えました。
いうまでもなく、残っている旧五街道のうち、旧中山道は、旧甲州街道以上の山越えが、それも家からは遠く離れた場所に複数あります。
そうちょくちょく行けない峠を越える練習台として、より身近な場所で登坂や山道押し歩きの練習が、季節を違えてできれば、それは体力づくりにもなります。
しかし、柳沢峠を越えたときに思ったのですが、峠越えというのは、何度も尺取虫方式の旅を重ねてようやく征服するという形式にすると、超える日は日帰りでも完全に旅の一部になってしまいます。
もっと日帰りで手軽にエクササイズとしての峠越えができる場所はないものか、そう考えていたら、犬目峠は東京からの近さ、石畳も含めてあらゆるステージがそろい、しかも冬季でも積雪は少なく、場所によっては景色が良いと、条件が揃っていると思いました。

そこで、一度旧甲州街道をブロンプトンで完走した後に、初回で端折ってしまった、或いは時間や天候などの関係で写真を撮り忘れた、そういう場所にゆくために、あらためて犬目峠越えに挑戦してみたのです。
1回目は6月で八王子から出発して失敗した経験から、今度は天気の良い4月上旬に、犬目峠を初っ端に越えるべく、一番電車で上野原に行って、そこから走り出すことにしました。
ということで、毎回同じの武蔵中原4:43発の南武線一番列車で立川乗り換えにて上野原を目指します。
その前に、上野原では朝食を食べられないことがわかっていたので、武蔵中原に行く前に、東横線元住吉駅前の吉野家で午前4時ちょうどに朝食をたべはじめ、終わったらすぐに二ヶ領用水沿いに武蔵中原まで移動して電車に乗りました。
始発前にこんな芸当ができるのもブロンプトンのおかげです。
朝食を済ませていたこともあって、南武線、中央本線の電車の中で二度寝をして、6時ちょうどには上野原駅に着きました。
いったんエレベータで段丘下にある南口に降り、そこでトイレを済ませてから、段丘中間にある北口迄戻り、走り始めました。
段丘上にある旧甲州街道に出るためには、距離にして1.3㎞、標高差にして60mの登り坂を走らねばなりませんが、これから犬目峠を越えることを考えれば、準備運動のようなものです。
電車を降りてから20分ほどで旧甲州街道に出ました。


ところどころ立ち寄りながら、そこで写真を撮りながらですが、いちばん底にあたる鶴川橋には7時ちょうど、そこから桜や山桃の花や、ところどころに顔を出す富士山を望みながら、野田尻宿には8時10分、舗装路の登り坂が尽きる矢坪坂入口には8時36分、さらに山道を押し歩きしたり、舗装路の部分だけ自転車で走ったりすること、犬目宿の宝勝寺に着いたのは9時06分でした。
ここまで上野原を出てから2時間弱の間、ほとんど坂道を登って汗だくになりました。
お寺から富士山を眺めたあと、鳥沢宿におりたのは9時50分です。
やはり、ところどころ上り下りと山道の押し歩きがあるために、スーッと下るわけには参りません。
猿橋には10時15分、大月には10時45分、下花咲宿の国道沿いにあるファミレスで11時から12時50分まで昼食をゆっくりとって読書もして、初狩駅に着いたのは13時23分でした。
この日は旧甲州街道を少しでも前に進むのではなく、犬目峠を越えることで自転車登坂トレーニングをするのが目的だったので、この先にある笹子峠まで越えてしまったら、完全にオーバーワークになってしまいます。
笹子峠はまた後日、そこだけを自転車で越えてみようと思うのでした。
それに、この13時27分発の上り大月行きに乗れば、大月駅で高尾以東中央特快になる東京行きに乗り継ぎ、立川で南武線快速に乗り継げば、15時28分に武蔵小杉に帰れます。


初狩駅のホームに立ってみると、この駅がかつてスイッチバック形式で勾配をのぼっていたことがよくわかります。
蒸気機関車の時代には、この駅のひとつ西隣の笹子駅にも同様の施設があり、笹子トンネルを抜けて甲府盆地へおりる途中の勝沼駅にもあったといいます。
さらに上諏訪まで、韮崎、新府、穴山、長坂と、合計7カ所もスイッチバックがあったといいますから、当時の単線区間は行き違いの待ち時間も含め、中央本線を通しで乗るということは、ものすごく時間がかかったと思います。
天気の良かったこの日は、初狩駅ホームの甲府寄りの端から、山の上に頭だけを出している富士山が見え、この日の富士山の見納めになったはずなのに、うっかりして写真を撮り忘れてしまいました。
それにしても、この日晴天のもとで犬目峠を越えて、汗もかいていい運動にはなったのですが、これを週末にやるのなら、平日の普段も、通勤その他で毎日少しずつの運動をすることが必要じゃないかと思いました。
週末だけ運動して、平日には身体を動かさないというのであれば、それは山型飲酒と同じで、その時だけがんばって、それをエクスユース(言い訳)にして、あとはサボるということになりかねないと感じたのです。
ということで、毎日少しずつ運動するには、やはり楽しくなければ続かない、苦しいだけだと結局諦めてしまう自分が居るのは分かっているので、そこをどう突破するかが問題だと思うのでした。
(おわり)