ブロンプトンで走った直後にハンターカブで走る(その1) | 旅はブロンプトンをつれて

旅はブロンプトンをつれて

ブロンプトンを活用した旅の提案

ある北風の吹き荒れる寒い日の午後、仕事が早めに終わったので、ふと思い立って髪を切りに床屋さんに行こうと思いました。
わたしの行きつけの床屋さんは、東急田園都市線の川崎市内の駅近くなので、自分の住んでいる路線(東横線)とは違う場所にあります。
お寺を手伝っている時は、毎日早く仕事をあがれたし、藤沢から小田急江ノ島線で中央林間に出て、そこから田園都市線に乗り継いでゆくことができたので、帰り道に寄りやすかったのです。
もちろん、カットした後はそこから家まで40分くらいかけて自転車で走るわけですが、山あり谷あり、それはそれで楽しいのでした。
しかし、仕事が都内の代々木近くに変ってからは、以前のように毎日早出早退というわけにもゆかず、髪の毛を切るタイミングが難しくなっておりました。


なお、ありがたいことに、白髪は増えたものの、髪の毛のボリュームは以前とさほど変わりません。
お寺では「剃髪してみたら」なんて言われておりましたが、髪の毛を刈りあげようか、超短髪にしようか、染めようかやめようかなど、この年齢の男子としては贅沢な悩みを抱えさせていただいております。
もっとも、容姿には若い時分からあまりこだわらない方なので、さほどに贅沢とは自分では感じていないのですが。
いつもカットしてもらっている店員さんに電話すると、1時間45分後からなら大丈夫ですとのこと。
さて、都内の代々木近くにブロンプトンで来ている私には、これからどうやって床屋さんにゆくかで、複数の選択肢があります。


まずは、渋谷に出てそこから田園都市線に乗車してゆく方法。
これも、お金はかかるけれども、表参道や青山一丁目駅から半蔵門線に乗って、渋谷で降りそうな客の前に立って、あとは座ってゆくという、電車の中で居眠りしたい自分には誘惑があります。
地下鉄分だけ運賃は余計にかかるけれども、座ってゆけるのなら安いものです。
ブロンプトンなら、代々木から渋谷まで走るのと青山一丁目まで走るのは大差ないので、どこからでも乗れるという利点を活かせます。
それに、1時間くらいで着いてしまうので、時間までの間珈琲を飲んだり、早目の夕食を軽く食べたりしながら、読書も出来てしまいます。


次に、ここから床屋さんまでオール走ってゆく方法。
代々木から鷺沼まで、北風が追い風になっているその日なら、1時間半もあれば充分でしょう。
上を高速道路が蓋をして、交通量の激しい国道246号線を車に混じって走ってゆくなんて、野暮なことはいたしません。
旧大山街道は何度かたどっているので、そちらを使ってゆっくり走っても十分間に合います。
ただ、この両パターンの場合、床屋さんから自宅までは、暗くて寒い道を自転車で走って帰らねばなりません。
バスもあることにはあるのですが、平日の夕方は混雑しますし、それに、川崎市営バスって本数が少なく、しかも不規則なので、結局走った方がはやかったということが多いのです。


ここからそのまま床屋さんに向かうのとは別に、一旦自宅に帰って出直すという方法もあります。
代々木から渋谷まで走って、東横線に乗り、日吉で降りて自宅に戻るのに1時間ほど。
家から車で出ても30分あれば床屋さんまでゆけるので、十分間に合います。
いや、1時間45分あれば、やはり追い風に乗れば家まで1時間ちょっとで着けるはずなので、電車に乗って家へ帰らずとも間に合います。
それにこの日は朝から北風が強くて、往路は渋谷まで電車に乗ってきているので、殆ど運動していません。
だから、帰りはまとまった距離をブロンプトンで走りたいと思っていたのです。
それに、こちらはいったん家に帰ることで着替えたり、ちょっとした用事を済ませたりすることも可能です。
また、床屋さんからの帰りは、車に乗って楽に帰れます。


まだ陽の落ちるのが早い季節なので、暗くなってから自転車に乗るのは、早朝と違って危険度が高くなります。
(だから運動は早朝に済ませておいた方が良いと、以前このブログで書きました)
けっきょく、時間を有効に使って運動しようと思い、家に向って走り始めました。
しかし、風速が20メートル近くという強風の吹き荒れたこの日は、単なる追い風というよりは、風がところどころつむじのように巻いており、時には向かい風になるような状態でした。
また、多摩川に差し掛かると空が砂ぼこりで黄色くなっており、丸子橋からみてお隣の鉄橋を渡る東横線はあきらかに徐行運転をしておりました。
わたしは時おり吹き付ける横なぐりの風に、思わず車道の方にもってかれそうになりながら、「今日みたいな日に多摩川サイクリングロードを走る猛者はいるのだろうかと思いましたが、もちろん河原の土手には誰もいないのでした。


安全を確認しながら家まで帰ったら、床屋さんとの約束の時間の15分前でした。
途中、お金をおろしたり、振り込んだりと銀行に立ち寄り、さらに実家によって様子伺いなどをしていたら、そんな時間になってしまいました。
これは約束の時間に間に合わないと、もう一枚古いダウンジャケットを羽織り、自転車用の手袋からスキー用のグローブに変え、ヘルメットをかぶってハンターカブにまたがって床屋さんに向かいます。
ハンターカブは晩秋以来まったく乗っていない状態で、エンジンがかかるのかとさえ思いましたが、さすがホンダ製カブベースのオートバイです。
セルスイッチを押すと一発でかかりました。
昔乗っていたオフロードバイクには、セルなどはついておらず、山の中で何度も転んでかかりにくくなってしまったエンジンを、必死にキックでかけようとしていた頃に比べれば、ずっと楽になったものです。


まだ陽が高かったこともあって、わりとご機嫌にオートバイを走らせました。
間に合うかなと思ったのですが、床屋さんに着いたのは約束の2分前です。
途中、渋滞している箇所も、オートバイなら脇をすり抜けられます。
しかも、エンジンがついているから向かい風は関係ありません。
自然と、16歳の最後に、それまで自転車しか乗れなかった自分が、原付免許を取得して、50㏄ながら、オフロードバイクに乗った時の喜びを思い出しました。
今日のように強風が吹き荒れる冬の日は、自転車は過酷でした。
漕いでも漕いでも進まないのではなく、向かい風でペダルが漕げずに、気を抜くと後方へ流されそうになってしまうのです。
帰りは追い風になると期待していたのに、風向きが変わって帰りも向かい風なんてことはしょっちゅうでした。


それに、自転車は汗をかくから、放っておくと風邪をひきやすいのです。
けっこうまとまった距離を走って家に帰り、こたつなど暖房器具に入ったまま寝入ってしまい、気が付いたら熱を出していたなんてことはよくありました。
たいがい自転車で遠乗りするのは週末ですから、風邪をひいたら週明けの月曜日から学校を休まなければなりません。
「週末に遊びほうけているからだ」なんていうのはまだ良い方で、「月曜の朝からたるんでいる、普通は日曜日から翌週の準備をしておかねばならない」なんて言われると、長距離通学の私は、学校の近くに住んでいる友だちが羨ましくて仕方ありませんでした。
あのころ、勉強やクラブ活動をさぼってまで、自転車で遠くへ行っていたのはなぜでしょう。
たんに私が「旅」が好きだったからというだけではないように思います。
それが高校生になって免許をとって、ある日突然に自転車からオートバイに乗るようになったのですから、わたしの「旅」は日帰りとはいえ、距離は格段に伸び、行き先のバリエーションも格段に増えました。
次回はあの頃を回想しつつ、この冬の日に、自転車で走って汗をかいたあとにオートバイに跨った際の率直な感想を書きたいと思います。
(つづく)