旧甲州街道の途中で小仏城山に立ち寄ってみる(その1) | 旅はブロンプトンをつれて

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峠という場所は、大概は稜線のなかでもっとも低く、たわんでいる場所になります。
なぜなら、越えるのに最も楽だから。
小仏峠の南にある国道20号線の大垂水峠(おおたるみとうげ 標高392m)も、山梨・長野県境にある車で登れる峠としてはもっとも標高の高い大弛峠(おおだるみとうげ 標高2,360m)も、その名前の意味は山の稜線が大きくたるんでいる場所という意味ですし、山の言葉で「ダワ」「タワ」「タル」「キレット」「コル」というのは「鞍部」つまり、鞍のようにふたつのピークの間の凹んでいるところを指します。
これに対して、尖っている場所は「ピーク」とか「ドッケ」といいます。


東海道の場合、主な峠は標高846mの箱根峠と標高357mの鈴鹿峠ですが、前者は外輪山の一角にあって最も近いピークである海ノ平(942m)は、道の駅まで戻って登らねばならないため、往復すると1時間近いロスになります。
後者の鈴鹿峠は高畑山(773m)が西にあるものの、標高差があるために峠から片道1時間40分もかかり、夏はヤマビルに襲われ、冬は積雪があるので、街道旅の途中でそんな簡単に立ち寄る雰囲気ではありませんでした。
旧街道の旅の最中、富士山は別格として、静岡の粟ヶ岳や三重の御在所岳、滋賀の竜王山など、街道からみて目立つ山について、いつかは登ってみたいと思うものの、それは山旅として、街道旅とは別枠になります。


甲州街道は東海道と違い、いくつもの峠を越えて、富士山をはじめ他の山々をみながらゆくわけで、峠からわりと近くに眺望の効く山があるのではないかと期待できます。
たわんでいる鞍部という点では、裏高尾から奥高尾にかけての小仏峠も例外に洩れず、北の景信山(727m)と南の小仏城山(670m)の間の稜線のたるみにあたります。
登山地図によれば、北の景信山へは登り40分下り35分で、往復は正味1時間15分かかります。
これに対して南の小仏城山は登り25分下り20分と、ずいぶんと近いイメージがあります。
往復で1時間以内なら、街道旅のついでに寄ってもいいかなと思える距離です。
実際、峠で休息していると、自分のように峠越えの旅人は殆どおらず、稜線を南北に行き来している人が大半なのですが、西に向かって左から、すなわち小仏城山方面から来て、景信山方面に行く人たちが大半です。
彼らをみていると、小仏城山はすぐそこなのではないかと錯覚しそうになります。


季節は4月初旬。
ここ小仏峠にも桜は咲いていますが、小仏城山山頂は桜の名所ときいています。
ということで小仏峠に自転車を駐輪して、小仏城山を目指すことにしました。
こんな山道の峠の上に駐輪?と思ったのですが、畳めば持ち去られてしまう自転車なので、目立たない場所に、半分折りたたみ、半分は残したうえで、ハンドルだけ折り曲げて、「壊れた自転車風に偽装したうえで、ワイヤー錠をかけました。
そして、軽く準備運動をしてから歩き始めます。
靴はトレッキングシューズではなくランニングシューズですが、この界隈は山岳ランナーも見かけるので、これで何とかなるでしょう。

とりつきの急な階段をのぼってゆくと、木の根がはい回る斜面の先に、西側の展望が開けた場所に到着します。
小仏峠は東側に僅かに開いた眺望があるだけですから、ここまで登れば反対側にあたる、相模湖の一端と、その南にある遊園地が見おろせます。
この日はやや曇りでしたから確かめられませんでしたが、秋から冬にかけての晴天なら、丹沢や富士山が見えるのではないでしょうか。
ここなら小仏峠から往復で10分ですから、すぐ戻れます。
これなら、小仏峠を越えるときは、ここだけでも立ち寄った方が良いでしょう。
ということで、やや傾斜のゆるくなった登り坂、杉の植林を、小仏城山に向って進みます。
(つづく)