旧甲州街道にブロンプトンをつれて 13.小仏宿から14.小原宿へ (小仏峠東坂) | 旅はブロンプトンをつれて

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ブロンプトンを活用した旅の提案

京王バスの小仏バス停から小仏峠を目指して東坂をのぼります。
バスが転回できる停留場のさきも、まだ舗装路が続きます。
すぐ先に、「車両通行止 公園・林業関係車両を除く この先1100m」の標識が道路両側にたっています。
つまり、ここから1.1㎞さきに舗装路の終点があるという意味なのですが、その先も未舗装の林道が続きます。
じつはいま登っている道は都道で、正式名称は「東京都道・神奈川県道516号浅川相模湖線」といいます。
都県境の小仏峠までが都道、その向こう側は県道です。
つまり、お隣を並走する中央自動車道のような高速自動車道や、道路法第5条で定められたい一般国道に次ぐ、同法第7条にて、都道府県知事が認定し、都道府県が管理をしている道路ということになります。
東京都道の場合、1から68番までと新たに付与された501番の主要地方道に、101番から294番までの一般都道、300~400番台、503~521番の特例都道に分けられます。
特例都道というのは、東京都のみに制度化された道路で、管理が都、政令指定都市もよらない、都知事によって指定された道路です。


因みに都民の皆さんは東京都道1号線がどこにあるかご存知でしょうか。
東京湾に近い京浜地区に住んでいる方なら、通称である一国(=第一京浜国道=国道15号線)、二国(=第二京浜国道=国道1号線)、三京(=第三京浜≠「三国」とは呼ばない)といえば、どの道路を指すのかすぐに見当がつきます。
しかし都道1号線となると…。
正解は欠番です。
東京都道1号東京大師横浜線という道路が1994年まであったのですが、同道路は6番に変更され、以降欠番となっています。(神奈川県道1号線も同じく)
つまり、都道で最も若い番号は2号線(神奈川県道2号線も同じく)になり、これは現在の中原街道・綱島街道で、東京都道・神奈川県道2号東京丸子横浜線になります。
いま小仏峠へと登っている都道516号線は、番号で行ったら後ろから2番目の都道にあたります。
この先で未舗装路になり、さらに山道に入っても、都道には変わりありません。
「3桁国道」という言葉がありますが、この道はさしずめ「3桁特例ブービー都道」といったところでしょうか。


小仏峠から270mほど登ったところ左側にあるのが、臨済宗南禅寺派の宝珠寺です。
山に入る手前にある、最後のお寺です。
このお寺は前回ご紹介した小仏宿旅籠青木家の菩提寺で、南浅川を渡った先にある馬頭観音は江戸後期の作、右手に聳えるカゴノキの推定樹齢は300~400年ということです。
また境内には三度飛脚が奉納した常夜灯があります。
宝珠寺前から100mほど登ったところにある左側と、さらに70mさきの左側が、峠に入る手前最後の飲料自動販売機になりますから、ここまで登坂するために余計な荷物を節約し、飲み物を用意してこなかった人はここで買って行きましょう。
宝珠寺入口から380mほど進むと谷を詰め、2連続のヘアピンカーブに差し掛かります。
前回も指摘した通り、ここまでがもっとも坂道の傾斜がきつく、ここまで登ってしまえば車道終点はまもなくです。


ヘアピンカーブをすぎたら右手にあるのが景信山登山口です。
景信山(標高727.3m)は小仏峠から北へ歩いて40分ほどの、奥高尾縦走路の山ですが、ここから登れば1時間と、小仏峠経由よりも30分ほど短い時間で山頂にたてます。
そこから堂所山、明王峠を経て陣馬山へと至り、そこから北東の陣馬高原下へくだってバスで八王子駅に戻るか、南西の沢井川沿いの和田集落へとくだり、中央線藤野駅にバスで出るかが定番のハイキングコースです。
景信山の名前は、八王子城をご紹介したときにでてきた北条氏照の家臣、横地将監景信が、甲斐武田軍の侵入に備えてこの山に狼煙台を設置したことからきているそうです。
登山口から280mほど進むと駐車場があります。
ここが車道終点です。
週末など車が満車になり、手前の道路肩に路上駐車の車が並びます。
そうなると、車で来た人はUターンもままならなくなりますので、混雑が予想される場合に車で来る方は、時間帯を考えた方がよさそうです。


駐車場手前には新興宗教の祈祷施設に続く階段が左奥に向かって伸びており、駐車場の奥右側にはヤゴ沢と呼ばれる谷間に小さな滝と着替えるための小屋があります。
その宗教法人が滝行に使っているようで、夏の日に白装束の人たちが行っているのが樹木越しに見えたことがあります。
右手ヤゴ沢を登れば、ここから50分で景信山に至ります。
小仏山には、正面の軽自動車がやっと走れる幅の林道を登ります。
入り口には車両通行止めの標識と、かなり古い掲示で「オートバイによるハイキングコース乗り入れを固く禁じます」とあります。
たしかに、オフロード系のオートバイなら余裕で登れる道です。
もちろん、動力付きの車両はダメですが、たとえばマウンテンバイクなどの自転車ならどうでしょう。
自転車も軽車両ですから、乗るのはもちろんアウトでしょうが、押し歩く分には歩行者と一緒です。(オートバイも同じく)
ブロンプトンは、未舗装路かつ登り坂に乗り入れたところで、小径車ゆえに乗ったまま登るのは絶望的ですから、押し歩きで登ります。


小仏峠への林道は、杉林の薄暗い下をくねくねと沢を巻きながら谷を詰めてゆきますが、傾斜がけっこうきつく、押し歩きしていても夏など汗がじっとり滲んできます。
ハイカーからは、自転車を押し歩きして登っている姿が奇妙に見えるようですが、山でのマナー通りに「こんにちは」と挨拶すると、「こんにちは」と返されます。
途中水場がありますが、生水ですしお腹をこわすとトイレがありませんから、ペットボトルの水をちびちびやります。
かなりのぼったところで路肩に軽トラックがとまっています。
ラダーブリッジ(歩み板)をおろした状態なので、おそらくはATV(四輪バギー)をおろしたのかもしれません。
しかし、ここからバギーでどこへ行ったのでしょうか。
上へ登っていったとすれば、小仏富士見茶屋や景信茶屋、城山茶屋といった売店に、商品などを運んでいるように想像します。


登り始めてから15分ほどで林道は尽きます。
道は人ひとりが歩ける幅に変わり、左の斜面を急角度で登ってゆきます。
簡易舗装がほどこされていますが、すぐに尽きて土の道に変わります。
相変わらず杉林の中で、山道の両側から草が被さるように道へ伸びてきています。
一応ヤマビル対策として忌避剤を持ってきました。
あの衛生害虫は知らないうちに足から尺取虫のように登り、靴下や服の内側に潜り込んで吸血し、丸々太ってゆきます。
ヒルジンという血液凝固を阻害する成分を注入しながら吸血するため、噛まれている際には気付かず、噛傷跡からの出血が止まらないので、服が血に染まったり、下手をすると家に帰って風呂に入っている時に気がついたりして、大騒ぎになることがあるそうです。
自らのであっても血を見るのが嫌いな方は要注意の害虫で、日当たりの悪い、じめじめした場所に生息していますが、動物の身体や爪の間にとりついて移動するそうなので、どこにその時期に大量発生しているのかなかなか予測しにくいようです。
また、ここからは本当の山道になりますが、段差が多いか少ないかで押し歩きした方が良いのか、畳んだブロンプトンを背負った方が良いのかが決まりますが、とにかく越えてみないことには分からないので、押し歩きしたまま入ってゆきます。


幸い山道はATVが毎日のように上り下りしているせいか、段差は殆どありません。
よってブロンプトンを押し歩きする分には申し分ありません。
但し、ハイカーに配慮して、向こうに追い抜きやすいよう、また違いしやすいように、時々自転車ともども避けて止まりながら登ります。
道は西方向の稜線に対し、やや右斜め、つまり北西方向に細かいつづら折りで21回もの細かいカーブを繰り返します。
ネットの情報によると、江戸時代の旧街道は駐車場から沢に対して右(北)の斜面を登り、このカーブが続くかなり上の方で合流し、その地点には石が積んであるとありますが、結局どこだかわかりませんでした。
旧道は草木が生い茂り、殆ど痕跡を残していないそうです。
旧甲州街道についてはこれから本物の山岳地帯を抜けるため、廃道探検は遭難につながりかねないので、現時点で辿れる道のうちでもっとも古い道というスタンスで行こうと思います。


北西方向に登っていた道が折返し、南西方向に向かうようになると、カーブはぐっと少なくなりますが、相変わらず杉林のなかを登るので見通しは殆どききませんが、上方を見上げるとだんだんと稜線が近づいてきているのがわかります。
消火用と書かれたドラム缶が2つ並んでいる杉の植林林を斜めに横切りながら登ってゆくと、突然広場のような場所に出ます。
ここが稜線です。
右手にゆくと徒歩40分で景信山です。
東方向には少しだけ展望が効いて、木製のテーブルとベンチがあるので座って休むことができます。
水分補給などはまめにしましょう。
自転車を脇に水を飲んでいたら登山客から、「どちらへいらっしゃるのですか」と声を掛けられたので、「旧甲州街道を辿っているのでこれから下山です。」というと、朝の7時過ぎという早い時間帯だったからなのか、「ああ、そういう楽しみ方もあるのですね」と驚かれてしまいました。
景色について、夏などは霞んでしまいますが、秋から春にかけて新宿の高層ビル群が見える日もあります。
小仏峠へは、稜線を右(南)方向にすぐです。
山道は尾根上のためか、平らで道幅も広く、石や岩も出ておらず、木の根が張っていることもすくないので自転車に乗れてしまいますが、ハイカーの多い場所ですので控えます。


富士見茶屋の跡なのか、トタン屋根に柱をさしただけの小屋をまわり込むと標高548mの小仏峠に到着です。
下の景信山登山口からハイキング地図のコースタイムで50分とされていますが、自転車を押し歩きしながらなのに40分切るくらいの時間でここまで到達することができました。
標高が低いということもあるのでしょうが、箱根東坂に比べて小仏東坂はかなり楽に登れるという印象を受けました。
何よりも、東坂は小型ながら車両が走った跡があり、そのせいか自転車の押し歩きが石畳の箱根に比べてずっとスムーズでした。
さらに、ほかに短絡する登山道があるせいか、それとも眺望的に魅力が乏しいからなのか、あるいは単に時間が早いからだけなのか、グリーンシーズン中もハイキング客は少なく、これも幸いします。
冬場に来たことはないのですが、ずっと杉林中心の山道を登ってきたため、よほどの雪が降らない限り、登山道に積もって登れないということはなさそうです。
次回は小仏峠の紹介からはじめたいと思います。